体のすぐ横を銃弾が駆けぬける

あと一瞬身を翻すのが遅ければ 自分が紅い華を咲かせて散っていただろう

今 世界で一番 血と硝煙の匂いが漂うこの場所で

――――――――生き抜く。


「Distortion」
 act.A-1


確か頭の横で手榴弾が炸裂したんだ。

死んだはずだった。

「ハハ・・生きてる。」

世界一の大泥棒な育ての親ともいえる「おじさん」と、その仲間達と一緒に仕事をし始めてもうどれだけたっただろうか。

今回は「おじさん」譲りの変装で敵側に潜入するのが自分の役目だった。からかい半分におじの二人の相棒達を真似た容姿になって潜入していた。

案の定本人達はいい顔をしなかったが、作戦は成功して後は 脱出するだけだった。

なのに。

手際が悪く自分一人が「おじさん」達と逸れた。狭い石造りの通路を走っている最中に敵が投げた手榴弾でやられたはずだった。


「いきてるけど・・捕まったかな?」


人気がなく明らかに回りの様子が違う。石造りだがどうやらずいぶんの古い朽ち果てた遺跡にいるようだ。目の前には鬱蒼と茂る森が見えた。


「ゴビ砂漠の地下にいたはずなんだけどなぁ・・。」


壁にもたれた体制だった体を起こそうと力を入れると左のわき腹に痛みが走った。ダークカラーのスーツを鮮血が染めていた。とりあえず

あちこち破けてえぐいことになった厳格な仲間を真似て作った変装用マスクを顔から引っぺがす。


「いつもの服なら鉄板入ってるから大丈夫なのに・・。」


次元ちゃんのスーツ借りるんじゃなかった・・一人ごちてから助けを呼ぼうとご自慢の「おじさん」特製の携帯を取り出す。「地球上で

空が見えてればどこだって通話可能なGPS携帯だ〜どこからだっておじさんを呼んでね」その言葉を信じてディスプレイを見ると


「圏外・・ですか。おじさん張り切ってテストしてたし、五右エ門ちゃんが無人島からかけてきたりもしてたから・・ここって地球じゃない

 とでもいいたいのですかねぇ・・」


なんてSFチックな頭をしているんだろう、と思いながら空を見上げると、成る程見覚えのない、真昼なのにその存在を

白く主張する大きな衛星が空に浮かんでいる・・


「何でもあり過ぎだって・・。」


そう考えながら傷の深さを探って常時携帯の治療キットでとりあえず止血をしていると、足音と共に気配がこちらへと近付いてくる。


「ち・・こんなときに。」


考えるより早く裏の仕事の時は常備している白い特殊セラミックの仮面を付けて懐から取り出した愛用のコルトパイソンとS&W M19を

かまえる。相手はこちらに気づいていないようで全く警戒心らしき空気をまとわずにやってきた。


「この星で人類を見かけるとはの。それもえらく古い型の武器を携帯しておるの。」


そう声を発した相手を見てプロとしてあるまじきなのだがグリップを握る手から力が抜けた。目の前にいる緑の背の低い宇宙人。

スクリーンの中だけの存在だと思っていた。


「ジェダイマスター・ヨーダァ?・・てかこれは夢?ああ、んな別けないや、腹痛いし。」

「人の気配を感じてやってきてみれば・・お前さん何者じゃ?儂を知っている、ということはどこかのコロニーから来たのかの?」

「まぁ、なんていうのか・・していて言うなら死んだと思ったらここにいたわけで。ちなみにここ、なんて星?」


信じたくないけど、例の映画の舞台になった銀河系なんだろうなぁ・・そう思いながら男にも女にも取れる口調をあえて取りながら

ヨーダ?と思しき人物に問いかけた。


「キャッシークじゃ。」

「キャッシーク・・あぁ、ウーキー族がいる星か・・ヨーダさんはどうしてここに?」

「得体の知れん奴じゃな・・死んだはずのお前さんがなぜ見ず知らずの星にいる?」

「判んない。爆発に巻き込まれて気がついたらココだもん。ヨーダさん『地球』って知ってる?『アース』とか『ガイア』とも言うけど。

 知らないでしょ、そこの出身なんだ。てかココに来るまではその星から一歩の出たことがないんだ。ココから言うならマジで遠い遠い

 銀河のはての星だもの。ココのことは書物でしか知らない、なんせうちの星で宇宙に出たことがある人間なんて100人いるかいないかだぜ?」


そんなわけで怪我もしてるし、路頭に迷ってます。そう言って白磁の仮面を付けて少年?少女?はヨーダに手を振った。その様子を見て

ヨーダはため息をついて尋ねた。


「その地球とか言う星は初対面の相手に名のらずに仮面を付けたまま喋るのが礼儀の国なのかの?」

「あ、これは失礼・・職業柄初対面の相手に警戒する必要があるもので・・。名前は、性別は・・ご想像にお任せします。

 んでもって職業は・・・・・・・・世界の歴史と秩序を守ることってことで・・」


最後の乾いた笑みがいささか引っかかるところがあったものの、そう言って がその素顔をさらした。標準的な人類の顔に少し珍しいものの

いないこともない銀髪がよく似合う中性的な顔立ちだった。


「儂のことは知っておる様じゃが・・ヨーダじゃ。」

「よろしくねー、ヨーダさん。

 で、初対面で悪いんだけれど・・・助けて?」


それが新しい世界での始まりだった。














拙話

異世界トリップ?始めちゃいました。しかもSTAR WARSで。
ヒロインの設定とか、ルパン夢からそのまま持ってきちゃってます。
ルパン夢でまだ成人したヒロインは出て来てませんがそれはそのうち・・
ルパン夢呼んでいなくても判るように書いていきたいと思います。