ちゃんのためなら・・




「砂時計の記憶」
06 調べちゃいました



「ねぇ、ルパンなんでわざわざ私なの?」

ルパンの運転するオープンカーの助手席で不二子は髪を靡かせながらルパンに尋ねた。
次元と五右衛門にを任せて、ルパンは不二子を連れ出して若狭湾の近くまで出向いていた。

「ん?不二子ちゃんでないとダメだからさ。」
「私じゃないとダメってことは仕事の関係?」

ずいぶん前に高速を降りた車をルパンが人気のない森の中へと進めながら後ろを見てみ?と言った。

「何?この書類。」
、つまりの親父の研究資料の一部だ。のことを頼まれたときに渡された。今日はそいつを調べにが脅されてた
 組織の研究所に忍び込む。」
「なるほど、私のハッキングして欲しいってことね?」

頼むよぉ、不ー二子ちゃぁん、とルパンが車を車道の終わりに止めて不二子に頼み込んだ。不二子を拝むような動作をするルパンをちら、と見て、不二子は口を開いた。

「潜り混むのはちゃんのため?」
「もちろん!今はのことが 一番最優先だからな。」
「判ったわ、でも 私たちだけで大丈夫なの?」

なに、心配ないって、とルパンが笑ってオープンカーから降りると森の奥の方を指差した。

「この先にな、奴らの破棄した施設があるんだ。そこにお邪魔して から渡された資料の残りを探す。」

そう言ってるパンは、行くぞ、不二子。と軽い足取りで歩き出した。


















「その今から探す資料ってちゃんに関することなの?」
「ああ、奴の研究のことが大部分なんだが・・ちょっとちゃん見てると・・気になってな。」
「何が?」

森の中を二人して少しずつ木々の間から見え始めた灰色の壁の施設に向って歩いていると、不二子の疑問に対してるパンは真剣な目つきになり、あごをさすった。

「こないだ銭湯に連れて行ったときな、ちゃんの体に傷があったんだ。」
「その傷がどうしたの?」
「その傷な・・帝国にいたとき 生まれたばかりの伊禮ちゃんが流れ弾に当たって出来た傷と同じなんだよ。」

まっすぐ前だけを見据えてそう言ったルパンはまったく笑っておらず、不二子はまさか、単なる偶然でしょう?と答えた。

「いや 間違いない、そのとき一緒にいた次元と二人で確認したんだ間違いない、ずいぶんときな臭いぜ?の奴は俺に何かを隠していやがる。」
「ここで調べればそれがはっきりするの?」
「多分な。」

ルパンはただそれだけを言うとようやくたどり着いた人気のまったくない風雨に晒されたコンクリート製の建物の戸を開いて中へと足を進め、
不二子はその後に従った。























「・・・どうだ不二子、データ、残ってそうか?」
「ええ、あなたが渡してくれたIDで厳重に隠されていたけれど見つけたわ。」

モニターから視線を外さずに不二子は研究員のデータを集めておく報告ベースと研究員の個人データバンクを引き出した。

「どっちから見る?ルパン」
「そうだな・・報告ベースの方から見ようか、」

ルパンが不二子の肩越しにモニターを覗きこみ、不二子が報告ベースを開き「」と記されたファイル開いた。

「『遺伝子改良実験 最終報告書』
 概要:被験体指定された少女に改造薬を投与、
   段階を分けての投薬の結果 細胞が活性化 老化現象の停止を確認
   その後、身体能力の著しい上昇と精神状態の安定を確認。
   そのまま何事もなく半年間は緩やかな身体能力の上昇値を示す。
   
   半年後、細胞構成組織に退行が見られた。原因は不明。
   被験体 3歳児レベルまで退行、同時に記憶を喪失 研究員の一人がコールサイン「」と命名。
   すべてのテストを中止。



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   博士逃亡後 被験体コールサイン「プリンセス」に改良型の薬剤投与
   記憶の喪失を防ぐ一定の効果を確認。
   以後の報告は「第一次 戦乙女計画」に引き継ぐものとする。                    」


「何これ・・とんでもないことをしてたのね、この組織。」
「ああ、被験体「」かどうやら俺の予想はずれじゃないらしいな・・。」
「次は・・博士のデータバンク、開いて見る?」
「頼む」

報告データを淡々と二人で眺めながら不二子はルパンの嫌な予感が当たらないことを祈るばかりだった。

「研究日記のデータが優先的に開くようにしてあるわ、開く?」
「頼む」

不二子の指がIDを確認する方式で最優先で開くファイルを指定してくるシステムで優先された日記のデータにカーソルをあわせて
マウスを押した。

「   ○月×日
  伊禮が私の研究を知ってしまったらしい・・
  なんてことだ・・・。

    ○月△日
  伊禮の姿がここしばらく見えない。
  同じ研究所内で毎日のように顔をあわせていたのに、おかしい。

    ○月●日
  試薬品を被験体に投薬
  嫌な胸騒ぎがする

    ○月□日
  私は未だ被験体にあったことがない
  いや、他の研究員があわせない様にしている、何かあるのか・・まさか・・・

    ○月◇日
  何てことだ・・組織の奴め、
  伊禮が被験体だなんて・・・だから私に黙っていたのか、
  こうなったら、伊禮の体があの薬に適合して主だった副作用がおきないことを祈る。





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    △月○日
  伊禮に退化が見られる、なんとしても止めなくては

    △月×日
  伊禮は段々記憶をなくしている、記憶をすべてなくしてしまうのを恐れて
  「伊禮ファイル」を製作し、私に預けてきた。
  なんとしても記憶だけでも残してやりたい。

    △月▽日
  とうとう伊禮は記憶をすべてなくしてしまった。
  事情を知り協力してくれる同僚が伊禮に新しい名前を付けてくれた。「」と言う名だ。
  「」は私と妻のことを両親だと理解してくれたらしい。しきりにお父さん、お母さん、と呼んでくれる。
  今日、テストをすべて打ち切った。

    △月●日
  組織を逃げ出そう。
  妻とをつれて逃げるのだ。
  きっと彼と帝国は助けてくれるはずだ・・きっと・・。                             」

「・・・・なんてこった・・。まさか本当に伊禮ちゃんが・・」
「・・・・ひどい。」

暗くじめじめとした一室の中モニターの不健康な光の下で誰一人として、言葉を発するものはなかった。








拙話

うーわー久しぶり・・