子連れ侍を地で行くことになろうとは・・・
「砂時計の記憶」
01.預かっちゃいました
日本の名神高速道路、その末端は首都高にまで繋がり、ほぼ日本中どこにでもつながっている高速道路のそこそこに逸っているSA。
その駐車場に止まった黄色いフィアットの助手席で次元大介はここに止まってから3本目のペルメルに火を付けた。ガンガンに
きかしてあるクーラーの風が紫煙を揺らめかせる。
「遅ぇ。」
独り言を呟いて大分前に「ちょっくらトイレ行ってくるわ〜」と車を降りた相棒が戻ってこないかとトイレの方を見る。
夏休みが始まって最初の休みと言う事でSAは家族連れで溢れかえりトイレの前には長蛇の列ができていた。
「あの野郎、なんでこんな込んでるSAにしたんだか。」
そうやってぼやいている内にコツコツと助手席側の窓ガラスを小突いてから待ち人 ルパン3世が降りる時に持っていった紙袋の代わりに
何やらの荷物を持って戻ってきた。そのうちの1つ、毛布の塊を次元に渡す。
「遅いぞ、ルパン。」
「悪ぃ、ちょっと相手方にトラブルがあってよ。」
「相手方?」
そんな次元の質問を聞きながらルパンがフィアットをSAから本線へと戻す。ルパンの持ってきた毛布の塊をひざの上において次元は
何の取引してたんだ?とルパンに尋ねた。
「取引じゃねぇよ。ちょっとした野暮用さ。
そう言えばお前、を覚えているか?」
「もちろん、帝国来のダチを忘れるわけねぇだろ?そのがどうした?」
ルパンにそう答えながら次元は幼い頃、帝国でルパンと共によく遊んでいた友達を思いだしていた。
御曹司のルパン、ガンマンとして修行中だった次元、研究者の卵だった。三者三様名立場だったが同じ年齢の少なかった帝国内での
かけがいのない友だった。それは大人になり、次元たちが帝国に寄り付かなくなってからも同じだった。
「そう言えば、あいつが帝国を抜けてからどれくらいだ?」
「18年ぐらいだ。の奴が女と子供と一緒に帝国を抜けてからろくに連絡をとってないけどな。」
ルパンの問いかけに次元が指を折って答えた。普通なら認められない帝国からの脱退をルパンが力尽くで幹部に認めさせては今
表の世界で只のよき父親として住んでいるはずだ。
「そのな、他の裏世界の奴に今、追われているんだとよ。研究のデータがどっかで漏れたみたいでな。」
「あいつの研究ってなんだ?」
フィアットが滑るように車線変更をして右端の追い越し車線まで出してからルパンが口を開いた。
「人体強化、遺伝子的な研究だな。後天的に人体を強化したりする薬品の研究だ。帝国で死んだ親父さんの研究を引き継いだのさ。
あいつ自身は止めたがっていたから、抜ける前に封印したんだがな。」
「それで?お前が双付きのことを出してきたってことは、奴さん、どっかの組織に捕まったのか?」
「ああ、去年捕まって、さっき逃げてきたらしい。」
「なんか、今さっき会って来ましたって言い方だな。」
そこまで言ってから次元はまさか、といった顔つきでハンドルを握るルパンの顔を見た。
「まさかお前、さっき遅かったのはに会ってたからじゃないだろうな?」
「さ〜すが次元ちゃん。大当たり!ちょっと痩せてたけど元気そうだったぜ?」
「さっきの紙袋は逃走資金ってとこか?」
「そーよ。一息ついたら折れらんとこに顔出してくれるってさ。」
「で、この俺の膝の上のモンは?」
そういって次元が自分の膝の上に無造作に置かれた毛布の塊に視線を向けた。
「ああ、それ?おーし、、もう動いていいから次元に顔を見せてやれ。次元。紹介するぜ?ンとこの娘の伊禮ちゃんの妹、
つまりンとこの二人目、ちゃんだ。伊禮ちゃんの方はもう逃げてるらしくて、逃亡生活させるのは酷だからってことで
俺が預かった。」
そうルパンが言う内に毛布の塊から妻譲りな銀髪の小さな女の子が顔を出した。次元のボルサリーノの下の目を見てにっこりと
微笑んで口を開いた。
「初めまして、 です。これからお世話になります、次元ちゃん。」
「・・・ルパン?」
「しっかりしてるだろ〜?まだ五歳なのにちゃんと挨拶も出来るし、が俺らのことを教えておいたみたいでな、
ちゃんと判ってるんだぜ?なぁ、チャン。」
「はい〜、パパとママが迎えに来るまではおじさんと次元ちゃんと待ってるの〜」
「じゃあ、危ないからよぉ、ちゃんと次元のお膝の上に座ってろよ?」
「はぁ〜い。」
次元が事態を理解しかねているうちにが毛布をどかして次元の膝の上に座ってOKだよ〜とルパンに言った。
「なぁ、ルパン、達は、どのくらいで迎えに来るんだ?」
「わかんね、なんか詳しいことは全部手紙を読んでくれって渡されてっからそのうち迎えに来るだろ?
だからよぉ、次元。無二の親友の娘だ、しっかり世話してくれよな。」
お前が世話しろ、そういってやろうか、と次元が口を開く前に膝の上のが良い子にしてます。よろしくお願いします。といって
笑ったのを見て。次元は、まぁ、いいか。と思い口を閉ざして窓の外の流れ行く山々に目をやった。
「それでルパン、これからどこへ行くんだ?がいるんだ長距離の移動は出来ないだろ?」
「しばらくは大阪にでも潜伏する、もう五右エ門がアジトにいるはずさ。」
「大阪〜、次元ちゃ〜ん たこ焼き食べたい〜。」
「たこ焼な、じゃあ今日の晩飯はたこ焼だな。」
そういって次元が助手席で暴れるを抱きなおしてニヤリとして、決定だな?とルパンを見た。その次元の視線を避けてルパンは
わざと外を見た。
「次ー元ちゃん?俺は別メニューだかんね?」
わざと返事をしない次元と 幼さゆえの無邪気さで次元の髭に手を伸ばすと、冷汗まみれのルパンの乗った車が阪神高速道路を
降りて行動を大阪市内に向けて走り出した。
奇妙な生活が始まる。
拙話
ついつい愛ゆえにコンテンツ増やしてまで書いちゃいました。ルパン夢。
ほのぼのギャグ調で家族な夢展開で行きたいと思います。
舞台を大阪にしたのは・・・なんとなくです。別に東京でもよかったけど、たこ焼ネタを引きずりたかったので。