She is...






俺は、あいつを見ていた。
気が付いたら、あいつを見ていた。





かちゃ…かちゃ…。


操舵室に機械をいじる音が響いている。
どうやら、新入りの
ジュークボックスに新曲を入れようとしているらしい。


かちゃ…かちゃ…。


なかなかに慣れているのだろう、
ジュークボックスの横にある曲数を示すメーターが上がっていく。



俺は、それを横目で見ながら雑誌を読んでいた。
すると、

、何してるの〜?」

と、ドアが開いてスリッピーが入って来た。

「あ、スリッピー、ちょうどよかったよー!
 …ジュークボックスに曲を入れようと思ったんだけどね、わかんなくて〜」

…おい!

「とりあえず蓋を開ければどうにかなるかなーって思ってみたんだけど…。
 やっぱりダメだったよ〜」

ダメだったよ…って待て!
さっきバカバカ曲入れてただろうが!

「おいらに言えば、すぐに入れてあげたのに…」

「ごめんね、スリッピーには迷惑かけたくなくって…
 逆に迷惑かけちゃったね」

そう言って苦笑いする
…俺は雑誌に目を落とし、ページをめくった。

「いいよ、気にしてないから」

「ありがとう、スリッピー!」

……………。

かちゃかちゃ…

再び、機械をいじる音。今度はスリッピーがいじっている。
しばらくして、奴がそれ(異変)に気付いた。

「あれ?曲数増えてるよ?」

一瞬、の肩がぴくり、となったのを俺は見逃さなかった。

「あ…それはね、
 ……そう!フォックスが入れてたんだよ!」

そう!…ってなんだよ。そう、って。

「ふーん…ま、いっか」

だぁっ!スリッピー!お前も納得すんなって!
フォックスは俺より機械音痴なんだって知ってるだろうが!
…もう、こんな調子では雑誌の内容なんか全く頭に入ってこない。
俺はただただ、2人の様子を横目で見続けていた。

「よし、これでオッケー…だよっ!」

と言うスリッピーの声と共に、愛だの恋だのを歌っている、
俺とは趣味の合わない曲が流れて来た。

の趣味とも思えないが。


「ありがと、スリッピー!本当に、ありがとうね!
 …そうだ!お礼に今からふわふわのシフォンケーキでも焼くよ!」

「ありがとう、!」

「どういたしまして!
 …ふふっ、じゃあ、食堂に行こう!」

と2人は歩き出した。


…目を上げると、出て行こうとすると目が合った。
は、ふふっと俺に笑いかけると、
スリッピーと手を繋ぎ、共に操舵室を出て行った。


…なんだあいつ!
俺はなんだか無性に苛々した。





が、俺に笑いかけたあいつの顔がいやに心に残った。



俺は、あいつを見ていた。
あいつの全てが知りたいと、


いつの間にか、そう願っていた。








あとがき。(言い訳)
ごめんなさい!リクエストは「小悪魔」だったのに、
最初はスリッピーとファルコ、ふたりを手玉に取るようなヒロインにしていたのに、
ただのぶりっ子になってしまいました…(苦笑)。
こんなんでよければお受け取りくださいませ。