なんとまぁ、元気な事で。




「奇妙なカンケイ」
act.ウラ4-a




食堂の一角で一服を取っていたウルフの眉間が余りにも唐突な言葉に顰められた。

「情報屋だと?」
「なんや、偉い小規模なグループらしいんやけれど、皇帝のコンピュータのセキュリティを相手に偉い大暴れしたらしくてな、
 皇帝が気に入って雇いはったらしいわ。」

それがわてらの情報面のサポート任されたらしくて、メールが来とりますわ。とピグマが己のうどんを啜る。

「皇帝が細かい事は向こうの代表とウルフはんとでまとめとけっていっとりはったから、頼んますわ。わてはウルフェンの整備で忙しいよって。」
「俺が知るかよ、タダでさえしたくもねぇ書類仕事までやらされてんだ。他を当たれ、他を。」

ウルフがコーヒーを飲み干してアンドリューあたりなら喜んで仕事につくだろ?といいながら新聞を持って席をたった。









ホープバードを出て2年、アンドルフはウルフとレオンを優遇し、ガウディで起きた出来事はどうしようもない無能な部下の独断だったことを
後々共にチームを組むように、と配属されたピグマに聞いた。
元同僚だったピグマはウルフたちの過去の悪名からここに来る事を予想していたらしく、自分のことを棚にあげて裏切り者同士仲良くしようや。
と笑っていた。
殴りたかったウルフを抑えたのは、共にこの埋伏作線を決めたレオンの肩に置かれた手であり、ジェームズの真剣な顔であり、の叫びだった。
後々このチームにアンドルフの甥らしいアンドリューが加わってからはウルフもレオンも自分たちの目的を悟られないように自ら進んで
汚れ仕事や掃討線などの前線にたつように勤め、アンドルフ軍にスターウルフ有り、と言われるようになった。

スターウルフ。このふざけた名前を付けたのもピグマで最早ウルフには、ピグマの考えていることなど理解できるわけがなく、理解しようとも思わなかった。
ただ、アンドルフに言われるままに動き、事を成し遂げる機を待っていた。

「ウルフ!」
「あん?レオン、アンドリュー、何だ?」

食堂を出ていくあてもなく廊下を歩いていたウルフに、アンドリューが声をかけた。

「ウルフ、貴様私に情報屋と会う仕事を回してきただろう?そんな野暮に仕事を私に押しつけるな!」

ピグマの奴、手が早い。と内心毒づきながら形式上は自分の配下の若者の不平に口を開く。

「俺が出るより、お前の方がいいと思っただけだ。」

俺よりお前の方が、よりアンドルフに近いからな。と心にも思っていないことを言えば、アンドリューは世辞であることに気づかずに
顔をほころばせる。

「私を見込んで回してくれたのだな、ウルフ。なら何も言わん。今から通信室で交信してくる。」

そういってアンドリューは嬉しそうな足取りで通信室へと歩いていき、廊下にはため息をつくウルフと、忍び笑いをするレオンが残った。

「お坊ちゃまの扱いが随分と上手くなったな、ウルフ。」
「アイツを考えれば屁でもないだろ。」
「ククク・・・お互い何年たとうが考えていることは同じか。」
「けっ、俺たちの回りでガキなんて限られてるだろ?」

ズボンのポケットを漁って少しよれたタバコをとりだしてライターで火を連れるウルフにレオンは懐かしそうな目つきで口を開いた。

「アレも今頃はアンドリューと同じ年なのだよな。」

年頃の娘らしく綺麗になっているだろうか?とレオンが言うのにウルフは怪訝な顔をして答えた。

「昔っから可愛かっただろ、アイツは。」
「おやおや、本人がいないと素直だな、ウルフ。」
「うるせぇ。」
「それにしても、似ていると思わないか?」

レオンが楽しそうに 壁に持たれているウルフに言う、

「誰と誰がだよ?」
「それを私に言わせるか?」

暗にレオンがアンドリューとが似ている事を仄めかす。クク・・と笑い口の形で「」と言うレオンにウルフは何が言いたい、
と睨みを利かせる。レオンの笑みは確かにあのアンドリューの直向さは自分に向って初めて銃を構えて見せた彼女に似ている、
と普段から無意識に彼と彼女を重ねている事実をウルフに叩き付ける。

「あいつの所には胸糞悪いサングラス狐がいるだろ。滅多なことはない。」
「・・・あの二人、妙に波長が合っていたからな、今頃彼に感化されてないといいがな、ウルフ?」
「冗談じゃねえ。」

げんなりとウルフが答えたのを見てレオンはまた笑う。

「やはりどうしているのか気になるな。」
「・・・・腐っても俺たちの妹だ、大丈夫だろ?」
「そうだな。」

いつの間にかしんみりとしたまるで郷愁のような感情が自分たちの間に流れている事に気づいたウルフがフ・・と自嘲気味に笑って凭れていた壁から
身を離すのと同じくして袖口の通信機が着信を知らせる。

「誰からだ?」
「『通信室で待つ』アンドリューからだ。」

何かやらかしたのか?と面倒そうな顔をして歩きだすウルフにレオンは私も行こう、と後について歩きだした。

「いつもなら、着信があっても無視するのに、珍しいな。」
「うるせぇ、気紛れだ。」






























「呼んだか?アンドリュー」

空気の抜ける音共にスターウルフ専用の通信室に入ってきた相手をみてアンドリューが心なし上機嫌で振り向いた。

「ウルフ、来てくれたか、レオンも一緒ならちょうどいい。レッディ、紹介しよう。話していた仲間だ。」

言葉の途中でまた画面に向き直ったアンドリューが言い終えると椅子ごと通信機の画面から離れた。

「叔父さんが言ってた情報屋、PRIDEのレッドへリングちゃん。チームの事が知りたいって。」

だからと言って普通情報屋に態々自分たちの情報を与えるか?と突っ込んでやりたかったウルフだが面倒くさげに覗きこんだ画面の向こうの相手に絶句した。

『初めまして、スターウルフの皆さん。レッドへリングっています。』
「お・・・お前は・・・。」

画面の向こうでにっこりと笑うその姿にウルフと共にレオンが動きを止める。映っているのは3年ぶりにみる義妹・・

「レッディ・・・レッドへリングちゃんの事だが、今はもう既にタイタニアまで来ていて、明日にでもこちらに顔を出してくれるらしい。」

嬉しそうに、そして少し自慢げにアンドリューが言うのも、耳に入らない様子でウルフとレオンは画面を見つめる。

『どうかしました?私がそんなに誰かに似ていますか?・・・・過去に捨ててしまった妹なんかに。』
「てめっ・・・」
「いえ、ただ女性だとは思っていなかった上にとてもお綺麗だったので。」

先に今の状況を思い出したレオンが微笑んでウルフを押しのけて明日ベノムでお待ちしていますよ?といってアンドリューに通信を譲り、
私とウルフは用があるから、と頭に血が昇ったままのウルフを連れて通信質を後にする。











「今の状況が判っているだろう、ウルフ?」
「・・・・悪ィ、レオン。」

格納庫のベンチに座って項垂れるウルフにレオンはまさかこんなことになろうとは、とつぶやいた。

「預ける相手を間違ったな。」
「悪乗り、どころではすまない状況になりそうだ。」
「明日、俺は会わねぇからな。」

そう言って立ち去るウルフにレオンは己の身の振りように頭をめぐらせた。





















拙話
筋書き書いたメモがどっか行ったので、記憶に残るウラ4を集中攻撃。