気に入らねぇし 喰えねぇやつだし





「奇妙なカンケイ」
act.4-b



コーネリアの大気圏を抜けたグレートフォックスが着々と次の目的地であるメテオ帯へと歩を薦める その艦の中で、
ファルコは苛立たしげな荒い歩調で居住スペースを歩いていた。
片手で足りる程しか人の乗っていない艦内で唯一使われている一角に差し掛かりファルコが視線を自動ドアの表札へと向けると
つい先ほどまでは使われていなかった一室に真新しいプラスチック版に艦内最年長者の達筆な字で新しい住人の名が記されていた。


・レッドへリング・

ファルコはそう名乗った彼女が気に食わなかった。この3年でやっとまとまり始め 安定し始めたメンバー間に、一瞬にして外の空気と
唯一「ジェームズ」を知らないファルコに対する疎外感を持って来た彼女が今この部屋にいるはずだった。
「ジェームズ」を知る者達、フォックスと旧知であるスリッピーは手紙を受け取った二人の意見に反対せずに三人が口を揃えて彼女が
敵ではないと断言して歓迎し、早速部屋まで与えていた。

ライラットでインコ族と言えば目立ちたがりでお喋りでしかも鳥類の中でも特に後先考えずに動く短絡さと社交性で
芸能人として生きている者以外ファルコはあまり思い浮かばなかった、況してや自分のような猛禽類ならともかく、
戦闘機に乗るインコなど見たことも聞いた事もなかった。

そんな事を考えつつ、只なんとなく立っていると空気が抜けるような音と共に目の前のドアが開き、ここに来た時の私服を自分達が
着用しているパイロットスーツへと着替えたが時代遅れな回転式(リボルバー式)な銃に弾を装填しつつ姿を現した。

「アラ鳥君。どうかしたかな?」

どこか心の内を探られているかのような空色の瞳が上目遣いにファルコを眺め銃の整備をする手を休めずに尋ねた。

「別に手前に用はねぇよ。只俺は"ジェームズ"をしらねぇ。だから手前がどんなに信頼置ける人物なのか理解できてねぇだけだ。」
「ジェームズは狐君の父親さ、そしてここの創設者。」
「それぐらい知ってる。」
「私はその"ジェームズ"の弟子。だから師匠の命令で一足先に増援に来たってワケ。おわかりカナ?」

そう言って装備の終わった銃を腰の これまた銃と一緒で一世代前のホルスターへと収めてが口元を挙げて笑った。

「君はきっと、どう言ってもしばらくは私を疑うんだろうネ。なんか言うだけ無駄だって顔に描いてる気がするし。」
「当たり前だ。人のことを名前で呼ばないような奴を信用できるか。しかもこの戦時中に単身母艦に乗り込んでくるような奴をな。」

そういって腕を組んだファルコがもともと鋭い目対をさらに鋭くしてどこかふざけた感のあるを睨み付けた。どこかこいつは
自分を馬鹿にしている、そんな感じがして余計に目の前の女が不愉快に思えて来た。

「私はね、自分が認めた人しか名前で呼ばないのさ。そうすれば相手の態度で相手がどんな人か判る。
 例えば・・狐君や蛙君のように理由を話すとある程度納得してその時は一度引き下がるタイプ。
 そして、君みたいに理由を話した後も突っかかってくるタイプ。
 ・・・当たってるでショ?君は私が話している間にも私の胸倉を掴みたくってうずうずしている。」

こいつ・・・判っているなら・・・、そう思ってファルコが手を伸ばしてその自分より背の低い女の胸倉を掴もうとするとそれより先に彼女の手が
ファルコの目の前まで挙げられて止まった。

「暴力は遠慮していただきたいね。君だって同じタイプでショ?認めた奴にしか愛想がない。あぁ、ちょっと違う、君は私と違って
 上に立てるだけの人望があるタイプだ。でも、その割の喧嘩っ早さ、宇宙暴走族の元ヘッドって感じカナ?」

ふざけた感があった瞳はいつの間にか宇宙の荒波に長いこと揉まれた熟練のパイロットの光が宿り、大きな目は外見的には全く厳しくないのに
どこかは虫類的な冷たさを秘めてファルコを射すくめた。

「手前ェ・・・本当に何物だ。」
「大丈夫よ、私はただの・レッドへリング・。強いて言うならアンドルフ軍を宇宙一憎んでる情報屋よ。」
「情報屋だと?」
「師匠と一緒にやってる副業よ。チームリーダーさん達はそれも了解の上で私を受け入れてくれたわ。」

そう言って もういいでしょ、貴方の場合私が戦闘に出たりして実力を見せない限り納得しそうにないし。と居住区を後にしようとする。

「待て、どこへ行く。」
「格納庫。もうすぐデブリ帯・・じゃないここはメテオって言うんだよね、あそこにはアンドルフ軍がいるからね、アーウィンで待機するの。」

もう五分もしないうちにスクランブルが掛かるでしょ、と言いながら手を振って飄々と彼女は立ち去った。
それを見届けて、ファルコはイライラと用は無いが自分の部屋のロックを解いて部屋に入ろうとパネルに指を伸ばすと


『航行線上ニあんどるふ軍ノ反応アリ、格納庫ニ集合シテクダサイ。』


頭上のスピーカーから、出撃前お決まりのナウスの声が降ってきて 彼女の読みが当たった事を注げる。

繰り返されるナウスの声を背にファルコはノロノロと気乗りがしないまま、格納庫へ向かった。






















『おじ様、11時の方角に敵です 装甲硬いですよ。』
『了解、ボムで一掃する。』
『蛙君、後ろに敵だよ、追い払うからじっとしててね。』
『あわわっ、頼んだよ〜。』
『狐君。もうちょっと右よりに進路とらないと航行軸からずれちゃうヨ?』
『OK、修正するよ。』

先程からがよく喋り、的確な情報で自分以外のメンバーの手助けをする。数分前などさすがジェームズの弟子だな、
と言うペッピーの褒め言葉までが通信機から聞こえてきたりと、自分以外のメンバーがもう既ににだいぶ親しくしているのが
感じられた。

それがなんだか気に喰わずファルコは少し乱暴に操縦桿を切って機体を傾けた。その拍子に小さな隕石を翼で弾きその隕石が慣性で
そのまま飛び

『きゃああっ!』

勢いがついた隕石がちょうど装甲がもうギリギリのスリッピーを庇ったの機体に直撃してそのまま錐揉み状に隊列から外れた所で
何とか体勢を立て直した。

「オイ、大丈夫か!?」

思わず通信機に向かってファルコが叫ぶと返答より先に敵機が隊列からはぐれた機を見つけて大群でレーザーを浴びせ始めた。

!』

間髪おかずにフォックスがにレーザーが当たらないように回りの隕石を撃ち その破片で弾幕を作ってから敵機を
あっという間に撃墜する。そこに隊列に復帰した機からもレーザーをお見舞いされ敵の大群はほぼ全滅状態にまで追い込まれた。

『助かったわ、フォックス。さすがリーダーだね。』
『・・・ありがとう、でも俺は当然のことをしたまでさ。』
『でも本当に大丈夫?。オイラを庇ってあんなことに・・』

大丈夫だよ、蛙君。これでもジェームズに合格点貰ってるからね。と通信機から元気にの声が聞こえている間にファルコは
さっとのすぐ横に機体を付けて音声の全メンバーに通じるのではない個人に宛てることのできるテキストメッセージを
に向けて発信した。そのメッセージの受信にすぐに気づいてがニヤリ、とファルコの方にむいて笑った。

そしてさっと機体を離す間際にからの返信がファルコ機に届く。

《 ちゃんと謝ってくれる君をちょこっと認めてあげる。
  でも 仲間だから、なんて言訳使ってるようじゃ まだまだダネ 》

「ケッ・・・素直じゃねぇ奴。」

そう思いながらファルコは進軍を続けるフォックスたちと共に隕石の間を縫うように飛んだ。






















拙話

さんの姓に4章に入ってから挟んである「レッドへリング」
これが彼女とジェームズの情報屋としての名前です。
これから同時進行予定の「4・ウラヨン」の方で出てきます。

何かファルコ夢っぽいなぁ・・今回。まぁ、誰とデキルとか決めてないし・・いっか(ヲィ)