決めたんだ 誰が敵だろうと 迷わないって




「奇妙なカンケイ」
act.3-b


血まみれのジェームズがホープバードに運ばれてからひと月・・・

「ピグマが、アンドルフ側についた。」
「そうか、また戦争が、始まるのか。」
ひと月前、ベットの上のジェームズとその傍らに座るウルフはそんな会話をかわした。そしてウルフはジェームズに養生を言い渡した。
それからと言うもの、ジェームズの看病をしている以外の時間をホープバードの住人達はただひたすら自分の愛機と共に空を駆ける事
に時間をかけた。
ジェームズが降ってきた翌日にアーウィンを受け取っただけはウルフとレオンの指導の傍らジェームズのアーウィンの修理を
ジオと共に受け持っていたが。






一週間前からベットを出て館内を歩き回ったりリハビリに勤しんだり出来るようになり今はシューティングレンジで銃を撃つジェームズの
姿を見てはそっと後ろから近付いた。

、気配を消すときは部屋に入る前から消しておきなさい。」
「あ、やっぱりばれてた。」

そう言ってこのホープバードの主、はなおも標的紙に向かってオートマティックの実弾銃を撃ち続けるジェームズの横で
机に腰掛けて手に持っていたリボルバー コルトパイソン2.5インチに弾を詰めた。

「こんなところで何をしているんだい?。ウルフとの体術訓練はもういいのか?」
「お兄ちゃん、私に開始1分で投げられて腰を打ったから今日はお休みだって。レオンお兄様もいないし、お兄ちゃんがおじさんに憑いて
 じゃなかった付いていって勉強しとけってさ。」

そう言ってはジェームズの標的紙の隣にセットされた標的紙に向かって薬室内の6発全弾を速射した。

「・・・ますます腕に磨きが掛かっているじゃないか、それにしてもココの銃、いったい誰がこんなに集めたんだい?
 昔はオートマしかなかったじゃないか。」
「お兄ちゃんがどこからともなく貰って来たの。今の主流武器はレーザーガンだけどこういう実弾銃の使い方も覚えておいたほうが
 いいからって。」

空になった薬莢を捨てて新しい薬莢を装てんするをジェームズがウルフらしい、といった顔で見た。

「そうだ おじさん、お兄ちゃんに内緒で練習してる撃ち方があるんだけれど見てくれる?」
「ああ、いいよ。」

ニヒッとまだあどけない笑みを浮かべてが左の腰に付けたホルスターへと、13歳の少女が扱うには少し、いや かなり強力すぎる
であろう銃を収めて、ポケットから出したコインをはじいた。

  チャリン

コインの音と同時にの目つきと雰囲気変わり右手が動き腰に付けたホルスターから銃を引き抜く、そのまま見事な動きで
その腕と体が移動し標的紙に向かって銃弾が放たれた。

   ダン!

「あーあ、またちょっと外れたや。」

いつもの無邪気な空気に戻って言ってが標的紙のホローポイントから少し外れた銃痕を悔しそうに見た。
その見事な抜き打ちを見てジェームズは改めてに流れる血の因果を感じさせられた。きっとこの子は母星に残っていれば
国崩しですら容易にやってのける才を発揮しただろう・・。奇才だ、そう言い表す以外ジェームズは言葉が見つからなかった。

「ねぇ、どうしたらホローポイントにピッたしあうと思う?」

そういってこちらを見るにジェームズは自分の考えていた事が悟られないようにと軽い空気を纏って顎に手をあて、
うーんそうだな、ともうとっくに出ている答えを探る振りをした。

「あと0.1秒ほど 撃つのを遅らせればいい。」

部屋の入り口で第三者 レオンの声が聞こえた。

「レオンお兄様!帰ったの?」
「ああ、さっきな。それより二人とも ウルフが呼んでいる。話があるそうだ。」

そう言ってレオンが長い髪を靡かせてレンジを後にする、その後ろをジェームズは思うところがあるのか重い表情で、
は何を思うでもなく軽い足取りで後に続いた。
























「で、お兄ちゃん、話って何なの?」

リビングに集まった面々が以外皆揃って暗い顔でテーブルの回りに腰掛けているのには気まずさを覚えて明るい声色で
ウルフに尋ねた。

、俺はレオンと一緒にアンドルフの所へ行く。」
「え?」
「俺とレオンとで奴の懐深くに潜り込む。この間ガウディの外に出た時にコンタクトがあった。」
「私達があそこに潜り込めばきっとアンドルフは油断する。」
「そこを点いて復讐を果たす、そう言う事だな、ウルフ。」

サングラスの下から鋭い眼光でウルフを見てジェームズが言った。

「そうだ。俺にとってもの親父さんと奥さんは父母同然だ。渡りに船として利用させてもらう。」
「じゃあ、私も行く!」

そう言ってが立ち上がり、父さんと母さんの仇は私が討つ、と机を叩いた。

「ダメだ。ガキは大人しく家で待ってろ。」
「嫌!私も行く!!ねぇ、お兄様、いいでしょ?」
、今回ばかりは駄目だ。私も許さない。」
「なんで、どうして?」

ジェームズの隣でが声を荒げる。

「私、その辺にいる子達よりも、十分強いよ?体術だったらお兄様にはかなわないけれどお兄ちゃんだってなげれるし、銃だって扱える、
 アーウィンにだって乗れるし、バイクだって・・・・」
ッッ!」

   バシッ

乾いた音がリビングに響き、ウルフに張り倒されたが床に倒れこんだ。その騒ぎをレオンは目だけで追い、ジェームズは
慌ててのそばへ寄った。

「ウルフ!」
「ガキの癖にナマいいやがって・・・もうお前とは兄妹でも何でもねぇ、俺達の事は忘れろ。いいな?」
「ウルフ!」
「行くぞレオン。」
「ウルフ!」

ジェームズの制止を無視してウルフがレオンと共に部屋を出て行く。ドアが閉まるときに抜ける空気の音が静まってから、ジェームズが
に声をかけようとすると声が届くより前にが立ち上がった。俯いた横顔でも十分にその頬が腫れていることが見て取れた。
黙って歩きだそうとするに、ジェームズが声をかける。

、大丈夫かい?」
「悪いけれどおじさん、ちょっと一人にして・・」











そう言ったきり、黙って出て行くの背を見かねて、ジェームズは格納庫へと歩きだした。そこには案の定必要最低限の荷物を
積み込んだ戦闘機が二台とそのうちの一台の主、レオンとがいた。

「やはり、今すぐに出ていくんだな。」
「そのほうがにも、我々にもいい。これで今ことを起こさねば、ウルフはきっとここに残ってしまうだろうからな。」
「君はウルフを良くわかっているね、もう長いのか?」
「一年かそこらだ。ここで私もウルフもに拾われたからここにいたんだ。」

彼 レオン自身が集めたのであろう鋭く細長いナイフを集めて体の至る所へとしまうレオンがその手を休めることなく言った。

のために?」
「・・・そうだ。私は他の星系から流れてきた。誰にも何にも執着しない自信があったのだがな、とウルフだけは、
 何故か放って置けない。只それだけだ。」

何か問題でもあるのか?とレオンがコクピットに登って尋ねた。

「いや、私には十分な答えだ。ウルフを任せるよ、レオン。彼はああ見えて義理堅いし 熱くなる、手綱を取ってやってくれ。」
「・・・判った。」

元同僚のアドバイスだ、とジェームズが笑った。レオンもそれを見て口元を緩めて笑った。
そこへ、最後の荷物を持ってウルフが現れてケッと悪態づいた。

「何 人のことで盛り上がってんだ。糞狐。」
「いや、ウルフはああ見えてドジだと話していたんだ。」
「・・言うじゃねぇか。」
「そりゃ、私だって伊達にお前の相棒やってたわけじゃない。」

他がいにニヤリ と口だけで笑い、サングラス越しの目と隻眼とが互いを値踏みするように油断のない光を宿していた。

「・・・を頼むぞ。」
「判っている。」

戦闘機へと向かう途中すれ違うウルフがジェームズの耳元で呟いた。コーネリア軍に在籍していたときと同じ大事なものを託すときの
ウルフの癖。
そのまますれ違ってウルフがコクピットにたどり着いてシートに腰掛けようとすると、そこに44口径の鉛球が飛来して防弾性の
キャノピーに突き刺さった。

「・・・てめぇ・・・」

3人の視線が一斉に格納庫の入り口にそそがれて、そこに立っているに突き刺さった。

「何のつもりだ、。殺すぞ?」
「・・・させてやるから。いつかきっと、あの時連れて行っとけば良かったって後悔させてやるからっ!」

そう言ってがその手に持ったこの艦で一番威力を持つハンドガン デザートイーグルでもう一発ウルフ機のキャノピーに
お見舞いした。

その弾が正確にキャノピー越しに自分の急所を狙っていることを確かめてからウルフはシートに身を埋めて愛機のエンジンを起こした。
ビリビリと響くエンジンの振動が心地よい。
ウルフがエンジンを起こしたのを合図に傍らのレオンがに別れの挨拶をして一足先にホープバードを飛び発つ。
それに続くようにウルフかエンジンの回転をあげながら空いたままのコクピットからに向かって怒鳴った。

「いい女になれよ !そうしたらきっとまたどこかで会えるさ!!」

怒鳴り終えるとキャノピーを閉じてウルフはしばらくの間の「家」から飛び発った。
上空で旋回して自分を待っているレオン機を見つけるとそこへ向かって飛び、共にガウディを離脱する。
目指すは    ベノムで待つ最強最悪の皇帝の元
ウルフはの良き兄であった自分が消えていくのと共に宇宙を駆け回っていた凄腕のならず者のウルフがよみがえってくるのを感じた。








「さて、行ってしまったね。これからどうするんだい?。」
「決まってる、もっと訓練をつんでいつかはお兄ちゃん達のもとに、いいえアンドルフを倒しに行く。おじさんのアーウィンは
 もう完全に直ってるから、おじさんもコーネリアなりパペトゥーンに帰れば?」

そう言って格納庫を後にするの背を見てジェームズは微笑んで言った。

「さっきのイーグルの掃射、あれは見るに耐えなかったね、それにウルフ達は君にちゃんとしたアーウィンの操り方を教えなかった。
 幸いなことに私はあと一年ほど休暇をとるつもりでね。教えてあげよう、私が知っていることは全て。」
「・・・!本当!?おじさん!」
「おじさん?」
「あ・・・よろしくお願いします!師匠!!」
「うむ、よろしい。じゃあ行こうか、。」
「はい、師匠!」

ジェームズが吹き抜ける砂漠の風に髪を遊ばせて格納庫を後にする後に続いてもイーグルを握ったまま格納庫を後にした。





新しい風が砂漠から宇宙に向けて吹き出した











拙話

さてさてなんとか書き終えました・・完全にオリジナルな設定ですな・・
もう突っ込まないで・・・ごめんなさいごめんなさいごめんなさい