始まりは、幾億個目かの流れ星



「奇妙なカンケイ」
act.3-a


ガウディの時はあの刻から刻々ととどまること無く流れ続けた。

ホープバードの横っ腹に大きく開いた穴も一年のうちにすっかりと修理されデブリ降下帯近辺は元の閑散とした平穏に包まれていた。
達の市民派への参戦もあってか、すっかりと反乱は鎮圧されちょくちょくと市民派の指導格だった人達がホープバードを
訪れる以外1人を除いてホープバードを訪れるものは無くなり、本当に砂漠は音というものを忘れてしまったかのような様子だった。

そんな砂漠を一台のずんぐりとした旧型のエア・スクーターが走り抜けてホープバードの離着口の辺りに止まり、乗り手が
インターフォンのボタンを押した。

「ウルフさーん、レオンさーん、首都のジオ・アーガストッス!戦闘機の修理に来ましたー!」

『おぅ、来たか。今入り口開けるから入ってこい。』

いつもどおりにウルフの声がスピーカーから聞こえてきてホープバードの下腹部にリオンが中へ入るための入り口が姿を現した。

ジオ・アーガストは首都の修理屋の一人息子で反乱の前から親しかった頼みでウルフやレオン、といった
ホープバードの住人たちでは手に負えなかった彼らの戦闘機の修理にずいぶんと長い間通っていたのだった。
それと言うのも、双方の戦闘機共に激しく大破していたからであり、本を読むだけで粗方の知識を吸収してしまうがその機体の
設計図を推測と合理性を備えた形で一から作り、そこに必要な戦闘機関をジオや、持ち主であるウルフ(又はレオン)の記憶や知識通りに
組み込む、といった作業を延々と続けていたからだ。
お尋ね者、とはいかないもののそこそこ悪名の方で知られているウルフや明らかに他星系からの不法流入民であるレオンが堂々と真っ当な
技術者に機体を見せるわけに行かずにの丸覚えの才に賭けるしかなかったのが一番の時間が掛かった原因だが。

もともとこのガウディ自体はライラット星系外ということもあってかコーネリアの連合政府はこちらの自治に任せていたし、市民たちの
間ではホープバードに住む一家と言えば反乱軍鎮圧の英雄で通っていたし、何より星系の軍を統べているペパー将軍こそが他でも無い
の庇護者であること(将軍からの一方的な好意)でウルフやレオンのお尋ね者としての名前は裏の世界で薄れつつあった。(二人が
揃いも揃って2年近くもガウディの外に出なかったのが要因の一つとして挙げられるが。)しかし、たちがあの悲劇とアンドルフ軍の
存在を忘れたわけではなく着々と警戒と敵討ちの準備が行われ、二台の戦闘機の修理もその敵討ちの一環として行われていた。
もっともその事を他人には尾首にも出さない3人をリオンはただの戦闘機好きだと思っていたが。
ジオの手には達に頼まれた首都の新聞と工具箱が握られ、と同級生だったジュニアスクール時代からの密かな想いからくる
鼻歌と足音だけが廊下に響いていた。

「チワッス!ウルフさん、レオンさん。やっとGディフューザーシステムが手に入ったッスよ?それと、が注文していた最新型
 の超高性能全領域戦闘機えーっと・・・」

アーウィン
「ARWING」

「そう、それ。明日うちに届くってさ。」

キッチンで昼食の準備をしていたの助け舟で機体の名前を思い出したジオがさも当然のようにウルフとレオンがいるリビングの
6人がけのテーブルについた。

「わざわざ有難うね、ジオ。工場の仕事だってあるはずなのに毎日来てもらっちゃって。」

「全然かまわねぇよ。工場の仕事はガキの頃からやり飽きていたし、戦闘機の修理なんてめったに出来ないし、しかもそれがライラットで
 一二を争う戦闘機乗りのウルフ兄貴と冷酷なキラーマシーンとして恐れられたレオン兄貴の戦闘機なんだぜ?来るなって言われても俺は
 毎日通うね。」

誉めても何もでねぇぞ。とウルフがジオから受け取った新聞に目を通しながらいった。その隻眼は話しながらも淀みなく動き記事に
書かれた事を脳内に分析し、蓄積していく。

「とにかく、これでとりあえず修理は完了ということだな。」

「そうっすね、後は一度飛ばしてみてからの調整だけっすから。」

まだ飛ぶかどうかが問題でしょうが、と山盛りのサンドイッチを乗せた大皿を持ったがリオンの隣に座って言った。それにちらりとも
目をやらずにウルフが当たり前のように手探りでサンドイッチを掴もうとした。その手を容赦なくがひっぱたく。
ひっぱたかれてやっとウルフがを見て、ボソリと いただきます。と言った。その言葉に満足したが大皿を兄たちの方へと
押しやり自分とレオンとジオとで声を合わせていただきます、と言ってからサンドイッチに手を伸ばした。

「お昼からはじゃあ、Gディフューザーシステムの取り付けだね。」

「そうっスね、取り付け位置はあらかじめ確保していおいた大きさで十分だと思うッスからすぐ済むっスよ。」

「そうか、ならば夕方にはを私の機体に乗せて飛んでやろう。」

レオンがそう言ってを見ると本当?!お兄様!とが嬉しそうに目を輝かせた。

「よかったっすね、。」

「お前もどうだジオ?」

レオンが直してもらった恩だ、一回ぐらいは飛んでやるぞ?とジオを見るとジオは済まなさそうに笑って自分は高所恐怖症で
閉所恐怖症だから、と断った。

「で?お兄ちゃんは何でさっきから一言も何も言わないのよ。いつもなら『は俺が乗せるっ!』とかってお兄様に食って掛るのに。」

そう言ってが新聞を睨み付けたままのウルフを見た。

「見ろ、将軍がスターフォックスをベノムに送った、3日前の話だ。やっぱパソコン関係を修理すべきだよな。」

そう言ってウルフが一堂の前にジオの持ってきたガウディで一番外界の事が書かれている最新の新聞を広げた。パソコン、と聞いて少々
レオンが反応したがその後を取り繕ってその視線は机の上の新聞に注がれた。
つい先日、いつも通りウルフをからかっていたのがエスカレートしてレオンが投げた小さなナイフがホープバードで唯一のパソコンに
突き刺さりそれっきり放置されていたのだった。戦闘機が直ったら次はこいつだ、とウルフは小さくため息をついた。

「3日前にコーネリアを発ったんなら、今頃はもうベノム・・・・かな?」

「いや、奴等の母艦のワープなら半日もかからねぇだろ。」

「・・・アンドルフの罠だよね、多分。」

「おそらく、この不審な電波自体が罠だろうな。将軍もわかっているから精鋭であるスターフォックスの連中を送り込んだ。
 そんなところだろう?」

そう言ってレオンが粗方記事を読み終えてまた1つサンドイッチに手をつけた。

「ジェームズおじさん達、大丈夫かしら。」

は、スターフォックスまで知ってるんスか?」

ジオがを尊敬するかの眼差しで見いてるのにちょっと、ね。とが手を振った。

「ガウディに来た当初に不審船として怪しまれたのよ。その時に会ったの。」

「ヘぇーやっぱりかっこ良かったッスか?」

「格好良い訳あるか、あの糞狐が。」

「あれ?お兄ちゃん、ジェームズおじさんを知ってるの?」

悪態をついたウルフにが意外そうにウルフに尋ねた。今は自分の兄であるとはいえ悪名高い悪党とライラットの英雄とに何かしらの
関係があるとは思えなかったのだ。

「もしかして昔ジェームズおじさんに捕まったとか?」

「捕まるか、バカ。昔の同僚だ。」

俺は昔、コーネリア軍にいたんだよ。とウルフがヤケクソ宜しく言い捨てた。

「え・・・・そんな・・・・じゃあ、お兄ちゃんて・・・」

正義の味方だったの?そんな言葉が帰ってくると思ったウルフがを見ると

「年増の若作り!?」

一発殴って俺じゃなくってジェームズが老けてんだ。と言った。


















「よし、Gディフューザーシステム 取り付け完了ッス!」

「こっちも取り付け終わったよ〜」

昼食後3時間ほどで無事 両機体にGディフューザーシステムが取り付けられウルフとレオンは久々に開け放たれた格納庫でビリビリと
震えるエンジンとGを感じた、すべての機器がしっくりと来る位置に取り付けられている辺りとジオの若いながらの腕の良さに
感心した。ひとっ飛びして機体に違和感がない事を確認するとジオは自分のエア・スクーターに乗ってまた来ると言って帰っていった。

そこに急ごしらえのレーダーが毎度毎度のビープ音で隕石の落下を知らせた。ガウディのこの辺りに日暮れが来た証拠だ。
そのレーダーを見ていたがいつもとの違いに気づいてウルフとレオンを呼んだ。

「お兄ちゃん、デブリに混じって凄い大きな質量の物が落ちてくるよ!しかもまだ舵が生きてるみたいで、大体胴回りが・・・20Smぐらい!
 こんなに小さいのに磁場が発生してるから・・・」

「「戦闘機!!」」

「それも、Gディフューザー付き、それなりに高性能って事だな。」

レオンが納得するように言うと後ろでウルフが戦闘機に飛び乗ってコンソールをはじき始めた。

「出るぞ、レオン。アンドルフ軍の斥候かもしれない。」

「判った、はどうする?」

判りきってはいたもののレオンがに尋ねると既に彼女は愛車に跨ってポンチョとゴーグルとをしっかりと体に巻き付けて銃に手を
伸ばしているところだった。

「上等だ。下は任せたぞ?、手前ぇの見は手前ぇで守りな。」

「勿論!」

そう言ってがすぐウルフ達より一足早く大型バイクを操って砂上に飛び出した。

















『こちらレオン、上空に敵影無し。』

「了解。じゃあ俺とでさっき落ちた奴を確認する。どうも奴さんの話だと不時着の形を取ったきり云とも寸とも
 言わないらしい。」

『わかった、私もすぐ降りる。』

「オーケー、気を付けろよ?」

『誰に物を言っている?』

「は、言えてら。」

短い会話を機体の無線機で行ったあとウルフは墜落した(見ていたが言うには滑るように不時着した)機体のそばで長銃で
狙いを付けていたに声をかけた。

「よし、生きてるかどうか、確かめるぞ?にしても、アーウィンとは・・・どこの金持ちだ?」

「外観には所属コードのロゴもないのよね、まぁ、摩擦熱で焦げちゃって当然なんだけど。」

そう言いつつ砂漠と砂漠との間に鎮座する機体のそばに寄って二人は少し不審に思った。戦闘の後のようにレーザーの焼け焦げが付きまくり、
明らかに取れてしまっているウィングの破片には長距離航行による熱疲労が起きていた。
・・・・まるでライラットを縦断してきたような、そんな機体状況。乗り手がどんな化け物であれ、この状況でいきなり銃を撃ってくるような
奴はまずいないだろう。(過去に一人、今着陸しようとしている奴が一人いたが今はその事を置いておいて。)

ウルフは外回りをぐるりと回ってからコクピットを覗きこんだが外と中の温度差でついた霜によって中を見る事は出来なかった。仕方なく
銃口の先でまだ熱を持っている外部からコクピットを開けるスイッチを押した。

「あーあ、外部スイッチが壊れてやがる。」

そう言ってすぐに銃をしっかりとかまえてスイッチに向かって発砲し、ロック機能自体を殺してしまう。それを見てすぐに
断熱手袋をした手でキャノピーを引き剥がした。以前にウルフは自分の機体にそれをされてそこの部分をすっかり修理するのにかなりの
時間を費やした事を思い出して機体のまだ見ぬ主に少し同情した。
引き剥がしたキャノピーの下から水蒸気が発ちこめ、が機体の鼻先から翼の横に移動した。もう一方の翼にはもう既にレオンが
立っており水蒸気の先にいるまだ見ぬ命知らずを覗き込もうとしていた。

仕方なく、一番危険とも取れる機体の鼻先に上がってウルフは水蒸気の中の命知らずを覗きこんで・・・・・絶句した。

黄金色の毛並みに大きなレンズのトップガンサングラス、ぐったりと血まみれでシートの背にもたれかかる彼は、

「ジェームズ!」









拙話
はい、3章スタートです。
ジオは完全にオリジナルなんで、おそらくこの章限りの登場では無いでしょうか。
そして、ジム再登場。うちのウルフとジェームズの因縁は元同僚・元相棒って事で
そこらへんはいつか語る時が来るでしょう。
だからライバルでありも良き友で、別に敵対はしてません。
この章はホントすぐに終わらすつもり、あまり深くは語らずに深い所はジム夢で。