光のように月日が過ぎて・・・



「奇妙なカンケイ」
act.2-d


夫妻のためにが鬼になった後幾日かが矢のように流れた。
反乱軍の後を追うように、首都を奪還した市民派がホープバードの惨劇を援けようと色々と手を尽くしてくれた。
その日を境には艦長室・・自分の個室に篭りウルフたちの前に姿を現さなくなった。
レオンは、新たにあてがわれた部屋で市民派の医師の治療を受けて絶対安静を言い渡されていた。
(あの状態でそうじゃないのはおかしいだろう。)

そしてウルフは氏の遺志通りにの兄を名乗り恙無く夫妻の没後の手続きを行った。
その手続きと平行して市民派の人々とウルフとで夫妻をホープバードのすぐそばに埋葬する事になった。
デブリ降下地帯の見える、見晴らしのいいオアシスにする予定で昨日から市民派の人々が棺を埋める穴を掘りに行っている。
問題は正式に喪主であるが部屋から出てこようとしないことである。

両親との今生の別れとなるのだから、ウルフとしてはをなんとしても引きずり出したかった。
ささやかながらもそのウルフの考えにレオンが賛同して内線電話を使って何かとに話しかけていた。

そんな感じで、たった数日で戦闘の名残は無くなったものの閑散とした館内でウルフは冷蔵庫から飲み物を取り出すとそれを飲み干して
奥に見える艦長室へと続く通路を見た。溜息をついてその通路を行き、ドアをノックした。

、居るんだろ?今日、親っさんと奥さんを埋めるぜ?これで二人の顔は二度と見れなくなる。お前にだってわかって居るだろ?
 最後の別れにぐらい、顔を出してやれ。俺やレオンじゃ親っさん達みたいなことはしてやれないけど、一緒には、居てやれる。
 だから、下で待ってるぞ?今日はレオンもまだ歩けないから車椅子で別れをいいに行くから、お前も・・・」

早く出てこい。その言葉を言えないままウルフはの部屋の前を後にした。着ている家、母星に伝わっている
伝統的な黒くてゆったりとした喪服が翻って足音だけが響く白い通路で唯一のシミのようだった。

喪服はレオンとウルフの分とが氏の部屋に手紙付きで置かれていた。手紙は簡素に且つ、とウルフ達に
対した愛情にあふれた内容で、自分たちの先が決して長くはないであろうと言う予測と共にたちのその後の幸せが願われていた。
ウルフは、レオンと共にそれを読み、ここにとどまる事を決めた。少なくともをこのままに残してはいけなかった。

















「・・・父さん、母さん。」

ベットの白いシーツの上ではこの数日で幾度と無く呟いたその言葉を呟いて立ち去って行くウルフの足音がすっかりと
消えてしまった室内を歩き出した。
ペタペタと素足がタイルの上を歩いて音を立ててクロゼットの前へと行き、本星でも来た事があるか無いかのような
黒い喪服を取り出した。首の部分を顎まで包み込むようにゆったりと取った襟元で家紋の銀エンブレムが鈍く光り膝の上まである
長い裾と中指の第二関節までが隠れるような長い袖の着いたそれをゆっくりとハンガーから外した。
その目は何も移しておらず虚ろでただウルフの言われた通りに両親を見送る事を儀式的に行おうとしていた。その上着しかないそれを
自前の白いズボンとあわせて着込んで一息着くと、床に落ちた見慣れない白い封筒が目に入った。

徐に拾い上げて目を通す。
美しい本星の言葉で書かれた短い、最後の手紙だった。



 『  私たちの愛する 

    迷わず進みなさい、私たちの先は短い。

    これからはお前の時代、私達は導き手にすぎない。

    只一つ拳に誓って欲しい

    悪に染まらず、屈せず、嘆きに飲まれるな。

    お前は独りではない、兄と呼べる者達がいる

    只前のみ見て である事を忘れるな

    誇高く、気高くあれ、吾等が愛しき風の児よ。

                     父 ジョージ・
                     母 アリス・    』


「・・・・・・父さんっ」

涸れたはずの涙があふれ出て手紙にぽつぽつと零れ落ちた、父さんたちはあのときが来るのを知っていてあそこにいた。
それを教えてはもらえなかったことがはたまらなくこの手紙を読んでえもいわれぬ様な事に感じた。

只自分は 生きなければならない
それは二人の願いだから。














「じゃあ、さん、我々はこれで。また何かあったら遠慮なく呼んでくださいね。」

「はい、色々有難うございました。」

オアシスに立つ二つの十字架を背にウルフとレオンが去っていく参列者に頭を下げた。
その人たちが立ち去った後も二人とも何も言わず動こうともしなかった。そこに軽い小さな足音がやってきた。

「お兄ちゃん、レオンさん。」

「・・・か、悪い。もう親っさんたちは土の下だ。」

の方を見ずに俯いたままウルフが言うその前を、が大丈夫父さんたちの顔が見たいわけじゃないから、と言って通り過ぎ
右の拳を氏の上に立つ十字架にあてがった。

「・・・約束するよ、父さん、母さん。
 もう泣かない。前だけ見て進むよ、私にはお兄ちゃんたちがいるもの。 
 ・・・・・っだからっ・・・見てて!・・・・・もう増やさないっ・・・・私みたいな子供っ・・・増やさないっ!
 ・・・・・アンドルフもっ・・・・・倒すからっ・・・・平和にして見せるからっ・・・・・っだからっ・・・・だからっ!
 ・・・・・・・ずっと見てて!ここから見てて!私、諦めないから!ちゃんと前見て進むから!!!」

泣いて・・・ないよ・・・そう言いつつただただ涙を流すの頭をウルフは優しく撫でてやることしか出来なかった。




物語はまだ、始まりに過ぎない。





拙話
やっと終わりです!2章。長かった。
最後がなんだか完全にオリジナルテイストですみません、ウルフもレオンももっと淡白だと思うんですけど、
うちの二人はこう捨て猫なんかを拾ったような心境でこのままお兄ちゃんポジションで行きます。・・・このシリーズは。