そのうち収集癖がつくぞと父親に言われたけれど、役に立ちそうな物と生き物しか拾わない・・主義のつもり。





「奇妙なカンケイ」
act.2-a






ふと、1年前に父親に譲り受けた移民船だった家の最上階にある、自室となった元船長室の天窓から顔を出して空を眺めた。
もう夕方であるこの時間帯、この、の住む星の中でも地磁気が狂った地帯に当たる部分の空は夕刻のこの時間帯になると、
光の関係化なんなのか、宇宙がそっくりそのまま地上から拝めるようになるのだった。そしてその時間帯はその場所に宇宙の物を
運んできていた。大半が宇宙に浮かぶ宇宙ゴミ デブリだったり、宇宙に散った船の残骸だったりだったが。にとってソレは
外の世界を教えてくれる大切な情報源であるとともに大切な宝物だった。

を含めた、一家の住む中型移民船を改造した建造物はこの移民惑星ガウディの中心都市から
少し離れた郊外とまあまあ人の集まりそうな立地だったが、大概の人々は夕刻に起る、この不思議現象を恐れて好き好んで
立ち寄ったりあまつさえ住もうと思うものはいなかった。

もっとも、訳有りでそこに住む家にとって、人気がない事は長所以外の何者でもなかった。
その船の最上部から顔を出し、最新の望遠鏡を使って宇宙が見えだした空を眺めていたは今日も空から降ってくる物体を確かめた。
その中でも一際眩しい光を放つ物体にピントを合わせた。そうしたのは長年デブリ漁りをしている経験で光が強い物ほど収穫が
よかったからだ。
ピントがあったところで今度は倍率を挙げてソレがどういった物なのか粗方確認をする、その大きくなった姿を見て
はギョッとした。

ソレ はいつもの機能停止したデブリではなく羽がもげてはいたもののまだ動いている戦闘機だった。

「・・・っこうしちゃいられない!」

は今まで立っていたロフトを飛び降りて部屋の入り口で防砂ゴーグルと防砂ポンチョ、壁にもたれかけさせた長銃を
少しだけ顔を顰め肩に背負って部屋を飛び出した。途中、リビングから母親が何かを言っていたが気にせずに通り抜けて
エレベータに乗った。

エレベータが外に出られるハッチのある階に着き、はドアが開ききるのも待ちきれずにエレベータの戸の隙間から飛び出して
格納庫へと向かう。

、またデブリ漁りか?夕方はダメだと言ったじゃないか、明日にしなさい。」

格納庫でエアカーを弄っていた父親が急いで12の女の子が乗りこなすには大き過ぎなエアバイクに近寄る娘を咎めるように言った。

「今日だけは許して、父さん。人命救助しなきゃ、母さんと医療器具用意して待っててよ。」

「人命救助?・・・それならまぁ、とにかくちゃんと戻って来いよ?拳に誓って。」

「・・・もちろんだよ、父さん。拳に誓って人命救助だけする。」

そう言っては暖気もせずにバイクを吹かせて普通の家だと二階に値する格納庫からバイクに跨って飛び足した。
バイクは小さな操縦者であるにもかかわらず安定した走りで砂丘の向こうに消えていった、戦闘民族であるからこその技だろう。

「全く。途中で強硬派に会わなければいいがな。」

父親は今のこの星の情勢を思って、忌々しげな顔になった。

家がここに移り住んだのは5年も昔の事で、そのころは平和な移民惑星だったものが今ではどこからか流れてきたのか
なにやら怪しげな一派がこのガウディを軍事惑星としてベノムに追放されたかつての大罪人 アンドルフの配下に就くべきだと主張する、
強硬派が出現し、つい1年ほど前から穏健派というか星の住民の大多数を締める反対派との内乱が起きていた。
首都は強硬派が占領して反対派の人々はそこを取り戻そうと鎮圧まで後一歩のところまで持ってきていた、たった一年で強硬派の
圧倒的だった軍事力がここまで衰退していたのは現議会が穏健派だったという事と移民者の多くがコーネリアの出でアンドルフを
恨んでいたから、と言う事からだろう。こういった情勢は家はどっちつかずと言うか、存在を認知されないように
努めて見守ってきた。今どちらに見つかっても戦闘民族、という事を知られれば戦いを強制されそうだったからだ。
そうなればきっと戦えない夫妻を庇いは一人、その手を血に染める事となるから・・


今、家には些細なミスも許されなかった、娘のために。





















そんな気持ちを知ってかしらずか、はいつもどおりに砂煙を立てない速度で砂丘の上を疾走してデブリの降下地帯にたどり着いた。
砂の下に随時沈んでいくデブリがちらちらと地表に顔を覗かせている中では唯一チカチカと飛行灯を点滅させる戦闘に近づいた。
機体のバランスを崩さないように細心の注意を払って羽のもげた戦闘機をよじ登ってキャノピーについた砂を拭い中を覗きこんだ。
中には確かに人がいた、まだ若いようだが左目の眼帯ばかりが見えるだけで向き的にに表情はよみとれなかった、
だが胸のあたりがゆっくりと上下しているので生きてはいるようだった、試しにキャノピーをコツコツと手袋をした手でノックしてみたが
反応はなかった。気を失っているらしい。
仕方なくは機体の上に立ち上がり踏ん張りを利かせると手袋をはずした手で無理やりキャノピーを引き剥がしにかかった。
簡単に開いてはいけない部位がまだ少女とはいえ戦闘民族の力の前にゆっくりと動き始め、ついにはぱっくりと開いてしまった。
色のついたキャノピーが最後には上にかかった砂ごと勢いよく開いたのでは戦闘機から転げ落ちそうになった体制を咄嗟に
戻してから、中を覗きこんだ。

「うわぁ・・・血だらけ。」

中に乗っていたのは美しかったであろう銀の毛色に計器から飛び散ったであろう破片によってできた傷で血だらけとなったパイロット、
おそらくは狼、だった。
左の眼帯が訳ありの悪党っぽさを醸し出していたが若いその青年はから見ればただの気を失った遭難者だった。

「さてと、人命救助でもしますか。」

そう独り言を言ってからその怪力を持って青年をコクピットから引っ張り出し、ついでに強硬派に悟られないように、と戦闘機の電源を
適当にスイッチを押してオフにして、バイクへと歩き出した。













拙話

2章はやが者を拾います。拾いまくります。
これでもかというくらい拾います。
「者」を。この拾い癖はその後も続く予定というか、
拾ってこその彼女といった感じになってきます。
そういえば第1章の初代スターフォックスもある意味では拾った感じで・・