手を伝わって 私自身に響く 命を奪う オト






「銃持つ ココロ」




宇宙は寒い。その冷え切って冷たい死すら温かく感じる無の存在の中を行くグレートフォックスの中 空気の抜ける音と共にファルコは
シューティングレンジへと足を踏み入れ、先客に気づく。

元々薄暗い照明しかつかないシューティングレンジの一番奥の隅で時代遅れな旧式の銃の手入れをする自分達、男に属するものより
丸味を帯びた柔らかいラインを持つ女の 


元々銃は男の「力」の象徴で、初めて彼女がここで「ソレ」を構えたとき、ファルコは変わった女だ、と思った。光線銃が主流の今 
手間も管理もコスト的にも劣っている旧式の銃を頑なに使うを物好きな女だとも思った。

「訓練中 邪魔か?」
「あら、ファルコ。いいよ、別に。気にしないで訓練してて。」

銃から視界を自分に移してファルコを確認したらすぐにまた視界を銃に向ける。

「いや、お前の銃をみに来ただけだ。邪魔ならまたの機会に頼む。」
「私の?まぁ、珍しいしね、いいよ 見てても。あんまり手入れ見てても面白くないだろうけれど。」

隅のテーブルの上 柔らかい綿の布の上でばらばらになったお気に入りの銀のリボルバー式銃が光を放っている。
はもう半分くらい終わったところ、と言いながら銃身をオイルで丁寧に磨いていく。
が磨くたびに銃身はよりいっそうリアルに世界を移しこむ。

「この、オートマ 触っていいか?」
「どーぞ。撃ちたかったら撃ってもいいよ?」

その銃身に映る海色の瞳を見ていたくなくてとっさに曰く予備の銃を借りて手に取る。
光線銃と違ってずっしりと手に来る重みは重み以上に重々しく感じる。重厚な黒い色は美しさ以上に怪しい艶やかさを称えていた。

隣でが手入れの終わったリボルバーを手馴れた手つきで組み立てていく。毎日同じことをやっていると言うの手付きは
どこか優しく、どこか残酷さを感じる。命を奪うモノの手入れをはどんな気持ちでしているのだろう。

「ファルコ、じっと持ってるのならさ、私の代わりに動作確認してよ。」
「あ、ああ・・試し撃ちをすればいいんだよな?」
「シングルアクションと、ダブルアクションの両方でね。」

オートマの動作確認はそんなに難しく無いからね、といいつつは銀色のニシキヘビに鉛色の弾をこめる。
その動作を横目で見ながらレンジの向こうの標的紙に狙いを定めて引き金を引いた。

光線中にはない、大きな反動と音。腕を通じてファルコの全身に駆け巡る。
到底、女のが軽々と扱えるような物では無い、と驚きの支配する目で手元の銃を見つめる。この銃だけでなく、素人でも知っている
さらに反動が大きく扱いの難しいリボルバーですら軽々と扱うに驚嘆を覚える。

「光線銃と違って、重いし、煩いし、反動が強いでしょ?」
「お前・・こんなモノで良く戦えるな。」
「こんなモノ、だからこそ判ることも多いよ?」

つい先日あった銃撃戦の任務で一番の命中率を誇ったのがの旧式銃たち。確かにこんな暴れ馬のような銃たちを軽々と扱えるように
なれば確固とした照準能力を身に付けることが出来るだろう。

「光線中は・・人を撃つには軽すぎるじゃない。」

人を 命を奪う。その覚悟が出来ないの。そういっては手の中の銀の銃を標的紙に向けて体制が整うのとほぼ同時に引き金を引く。

「小さなころから旧式を使ってのからっていうのもあるけれどね、自分がこの引き金を引く、ということの意味を履き違えないように、
 軽んじないように、っていう私の戒めなの。」

私達は屍の上に平和を作っている。それが敵の屍であれ、命に代わりは無い。銃身にリアルに映る世界は己がこれから奪うものの代償。
自分より若い 女がこれだけの覚悟を持って銃を撃っていた。

いつも軽い性格で 笑ってばかりで 隙あらば人をからかっている 普段の彼女はこの部屋のどこにもいなかった。

「お前がここまで真剣に戦ってるとは思わなかった。」
「なにそれ、ちょっと酷くない?」

目の前の彼女は笑っている、でもそれはどこか自嘲気味で、











「俺に 余ってる 旧式銃 貸してくれ。」













自分の歪んでしまった覚悟を叩きなおしたいと思った。




















拙話

なんか凄いシリアスでマニアックですみません。
杜襾蓮沌さま こんな相互記念でよろしければ、どうぞ!