「GO BETWEEN」
『こちらファルコ、今ABCビルの屋上からターゲットを確認、どーぞ?』
『こちらエリー、コーネリア商事のビルからも確認したわ。やっぱりここに張ってて正解ね。』
「やっぱりオイラ達の読み、外れなかったね。」
『お前達、くれぐれもターゲットに勘付かれるなよ?』
無線機を通して仲間達の声が聞こえ、スリッピーは眼下の交差点を渡って行くターゲットの姿を見た。
「大丈夫 大丈夫〜。」
『そうよ 何も問題ないわ、ペッピー。ってことで、私とファルコでターゲットに近付くから、後は宜しくね、スリッピー。』
『トチんじゃねぇぞ?』
「わかってるよ、もう。」
そう無線機に返すともう反応はなく、見れば向かいに見えるABCビルとコーネリア商事の建物からファルコとエリーが私服姿で現れて
繁華街の方へと、落ち合ってから歩き出した。
「はぁ、オイラも下、行きたいなぁ〜。」
『ばかもん、カップルの邪魔はするもんじゃない。』
唯一残った無線機を通しての会話の相手ペッピーが嗜めるような返事をした、もちろんスリッピーとてあの二人の邪魔などする気は
なかった、ただちょっとそう思っただけだ。
「わかってるよ、ちょっとそう思っただけ。でも大丈夫かなぁ。」
「ほらファルコ、早く早く〜。」
「待てよ、オイ。お前仕事だってわかってるのか?」
一方、その潜入担当の二人は会話内容以外は繁華街を歩く他のカップルと同じような感じでターゲットの後を追っていた。
特にはしゃいでいる自分の正真正銘の彼女、エリーにファルコは半ば引きずられるように腕をつかまれていた。わざわざ潜入を
自分とエリーに任せてきた二人の台詞を思い出しながら。
「ここのパフェ、いけるんだよね。ほらターゲットだって食べてるし。」
目の前で甘党のエリーが一応一般的な味覚だと思っている自分だと吐気がしそうなほど甘そうなパフェを頬張りながらその長いスプーンで
二人のターゲットの内の男の方を指した。
「ったく、そんな甘いもんをよく食えるな、あいつ。しかも女の前で。」
そう思いつつファルコがターゲットたちと同じように入ったカフェの少し離れた席からターゲットたちの机の上を見た、
甘い物だらけだった。
「うん、さすが天然って感じ。たま〜に変なんだよね、フォックスって。」
「オイ、気づかれるなよ?何の為に自分の趣味に合わないような服着て潜入してるんだ?」
そういってファルコは自分の着ている、自分が好まないようなデザインの大人し目な服を摘みつつターゲット フォックスとその向かいに
座るクリスタルを見た。今回は誰の依頼でもなく仲間内でフォックスの優柔不断さにやきもきしていたメンバー達によるささやかな
援護作戦だった。もちろん本人達は何も知らない。
そしてこの日チーム内唯一のカップルだったファルコとエリーが潜入を担当する事になり、エリーが最近はファルコの好みに合わせた服を
着ていたがこの日のために、と自分の好みに合った服をファルコの分まで買って着ていたのだった、ただ唯一その経費をエリーの分まで
自腹を切ったのがファルコである事に不満が合ったが。口には出さないもののこれはこれでいいとファルコは思っていた。
「でもなんか、潜入兼デートよね、これ。」
「そうだな・・・ってデートなのか?これは?」
上の空だったファルコに突然エリーに適当に相槌を打ちかけてその言葉の内容に驚いた。
「そうでしょ?私 ファルコ・ランバルディの彼女エリー・ラインハルトの目の前にはその私の彼氏がいて、二人は今おしゃれな
屋外カフェに座って楽しそうにお喋りをしている。これをデートと言わず何とおっしゃるのかしら?」
ただ、潜入中、というのは除いてだけどね、と言って笑ったエリーにファルコがため息をつくと途端にエリーの顔が曇った。
「だって、ファルコと出かけるの4年ぶりなのよ?ずっとこうやってデートしたかったのにタイタニアでグレートフォックスを
出て行ったきり連絡もしてくれなかったじゃない、ファルコ。だから私は今こうやって一緒にいられるだけでも嬉しいんだもん・・・。」
そう言ってうつむくエリーの後ろでフォックスたちが動き出したのをチャンスにファルコは少し強引にエリーの手を掴んで、席を立った。
「ほら行くぞ・・・・デートするんだろ?」
それからアーケード街を歩く二人の後をエリートファルコのそれなりに楽しみながら後を追いつつ二人がアクセサリー店に
入ったのを確認した。
「あーあ、フォックスってばクリスタルにリードされてちゃ世話ないよね、情けない。」
「全くだ、男として情けないな。」
隣のCD屋のワゴンに並ぶCDを見ている振りをしながらフォックスたちを見守っていたエリーとファルコが同時にため息をついた。
「だったら二人でフォックスに手本を見せてあげなきゃ、それが今回のファルコ達の仕事だろ?」
「うわっ、スリッピーいつの間に・・」
いつの間に来たのか、後ろにいたすリッピーに驚きながらエリーとファルコが顔を見合わせた。
「わかったよ、見てろ、女の扱い方ってやつを見せてやる。行くぞ、エリー。」
そう言って歩き出すファルコに手を引かれてエリーはフォックスたちと同じアクセサリー店へと向かった。
フォックスが店内でアクセサリーを見るクリスタルにかける言葉がなくて少し困っていると新しくカップルが入ってきた。
「うわぁ〜、これかわいいなぁ!」
店に入った途端に仕事を忘れて今の服に合いそうにネックレスを見つけてエリーが展示代へと近付いて行く、その後ろを今度は
ゆっくりとファルコが近付いた。その二人がいつもと違う服のせいで誰かわからずフォックスはクリスタルを見つつその二人の会話を
耳だけで聞いていた。
「どれだ?」
「これ、ほら・・・似合ってない?」
「んー、こっちの方がよくね?そっちはお前には安っぽすぎるしな。」
そう言ってファルコが躊躇いもなく近くのエリーが手に取ったものより高価でより服とエリーに合ったネックレスを取った。
「わー、ホントだ素敵!」
そう言って笑うエリーを見てからファルコはその自分の選んだネックレスを持ってカウンターへと歩き出した。
「買って来てやるから、ちょっと待ってな。」
「え?買ってくれるの?有難う!」
そう言って笑うエリーが心のそこからファルコに感謝した。
そんな経緯を声だけで聞いていたフォックスはすぐにその二人に倣うことにした。
「クリスタル、何か欲しいの見つかった?」
「ええ、これなんだけど・・」
「こっちの方がきれいじゃない?」
ちらり、とクリスタルが今持っている物よりも高いチョーカーに目をやったのを見逃さずフォックスがそれを取ってクリスタルに渡した。
「うーん、そうね、でも高いから。」
「俺から プレゼント、させてくれないかな・・その、今日の記念に。」
そう言ってはにかむように笑ったフォックスにクリスタルが微笑んだ。
「・・有難う、フォックス。」
「じゃあ、俺会計してくるね。」
そう言ってフォックスがカウンターへと歩いて行きその後をクリスタルが付いて行った、そしてカウンターの少し手前で
エリーとファルコにすれ違った。
「あら、ファルコとエリーじゃない、あなた達もでーと?あら、スリッピーもいるじゃない。」
「え?何で?仕事じゃなかったのか!?」
そう言ってフォックスが振り返り、店の端にいたスリッピーと二人は固まった。
「ヤベ、逃げるぞエリー。スリッピー後は任せたぜ?」
「キャッちょっとファルコ、降ろしてよぅ〜。」
ファルコがを抱え挙げて一気に店内を出て行き、スリッピーはフォックスとクリスタルに腕を捕まえられてしまいその二人を
見送った。そしてフォックスが一人事情がつかめないままで呆然とクリスタルに言われたままスリッピーの腕を捕まえていた。
「フォックスのヘタレ〜〜〜、クリスタルをちゃんとエスコートしなよ〜。」
そんなエリーの捨台詞が時間差で聞こえてきたフォックスはすべてを悟った。
「あーぁ、楽しかったけど、デートも終わりだね。グレートフォックスに帰らないと。」
また二人で遊びに行こうね、と逃げ出してた後二人で歩いていたエリーが振り返ってファルコに言った。その胸元でファルコが
買ってやったネックレスのトップが光った。
「オウ、俺もまぁ楽しかったよ、それに・・こういう服もたまには悪くねぇよ。」
そういったファルコにじゃあ、またこんな服でもデート行こうね。とエリーが笑った。
どうやら4年のブランクは簡単に埋めれそうだ。
拙話
お待たせしました、
相互記念小説です色々となんか突っ込みどころがあるかもですが、
アンソロ計画共々どうぞ宜しくです。
敬具
山茶花