会話しなきゃって思った。


「父さん=師匠?」



アステロイド帯を順調に抜けるグレートフォックスの館内では暇をもてあました。
何もする事がない上にぶっちゃけて言うとここの人たちと話でもしないといけないと思ったけれど、
あいにくと館内を徘徊するほどの時間はなかった。(今の状態で慣れないこの広大な母艦を徘徊していて
スクランブルがかかった時にグリーフィングルーム又は格納庫にたどり着く自信などなかった。)

仕方なく、ココに来てから全くいじっていなかった自分アーウィンの整備をすることにした、
そういえばさっきのアステロイド帯であちこちとこっぴどくぶつけた事を思い出して。

とりあえずフラフラと操舵室につながっているリビング的な部屋を出てからと言うもの
惰性で自室として与えられた部屋へと向かっていた自身を格納庫へ向かわせた。
あそこなら何があってもすぐにスクランブルに対応できるであろうし。




















ふとフォックスは格納庫の見える窓を除いて5台あるはずのアーウィンのうちの1台が無くなっている事に気づいた。
それもあれば自然と目を引くであろう白と青のコントラストの機体に混じった
水色と青のコントラストの機体が無くなっていることに。
さらに窓を覗きこめば整備室へと続く鉄のドアも少し開いていてそこからバチバチと飛ぶ火花の光が漏れていた。

「スリッピーじゃないみたいだな・・」

ひとりごちておもむろに目についたエレベータを呼んでフォックスは格納庫へと降りた。















格納庫に降りると肉眼で確かにのアーウィンが機体を固定するハンガーごとなくなっており、
彼女の機体が整備室のほうへ運ばれた事を物語っていた。
そのまま整備室へと歩みを進めると水色の機体が部屋の中央に安置され、その下から同じく
水色のズボンに包まれた足が生えていた、エンジン部をいじっているらしい。機体のしたからは
ラジオから流れてくる音楽に合わせてきれいな鼻歌が聞こえてくる。

?何をしているんだい?」

鼻歌が不自然なところで止まってがフォックス?と言いつつ機体のしたから顔を出した。

「どうしたの?なんか用?」

「いや、のアーウィンが格納庫に無かったからさ、こっちにいるのかな、と。」

「ここにいるわね、今は。さっきメテオで蛙君をかばったりであちこちぶつけたからさ、修理してたの。
 後色々微調整したかったからさ。」

「で?そのスリッピーは?」

暑いのか、脱いだ上着を担いで、フォックスがさも当たり前のように尋ねた。

「え?ここにはいないよ、なんで?」

「何でって、スリッピーと一緒に修理してたんじゃないのかい?
 えっとほら、彼はうちのエンジニアなわけで・・ってもしかして一人で修理を?」

「当たり前でしょ?パイロットたるもの、自分の機体は自ら責任持って整備すべしって師匠に習ったもの。
 長年やってきたからアーウィンの修理ぐらい朝飯前よ。」

もう後ココのボルト締めたら終わりだけれどね、とがレンチでボルトを慣れた手つきで締め上げて
機体の天板を元通りにはめなおした。

「そういえば、の師匠って俺の父さんだっけ?」

「そう、英雄、ジェームズ マクラウド。あの人は本当に色々な意味ですごいよね。」

ある意味不死身に近いというかすごく悪運のいい自分の父親への含みある評価にフォックスはくすっと小さく笑った。

も、相当父さんに一杯食わされたんだな。」

「ええ、自分は行方をくらましておいて弟子にアンドルフと戦争して来いって言うんだもの。」

「でも、俺もまさか本当に生きているとは思わなかったさ。」

そういってフォックスがそばのベンチに座った、

「師匠はホント、殺しても死なないって。今もきっとどこかで飄々と生きてるさ。」

「でも、父さんは、なんでと一緒に来なかったんだろう。」

はハンガーのボタンを押して自分のアーウィンを格納庫の元の位置に戻してから、
ベンチに座るフォックスの顔を見て含み笑いをした。

「・・もしかして、理由知ってる?」

「フフフ・・師匠と君の名誉のために私は黙秘させてもらおうかな?」

「なんだよそれ。」

そういって整備室を後にしようとするを追いかけてフォックスは教えてくれたっていいだろ?と後を追った。

「さーて、そろそろリビングに鳥君と蛙君が戻ってきているだろうし、シャワー浴びでリビングにいこうかな?」

「なぁ、ー?」

どこかジェームズを思い出す飄々とした動作でがエレベータに乗り込んだ、それにフォックスも続いた。
エレベータの中でもフォックスはなぁ、教えてくれよ。とに頼み込んだものの、はついには内緒の内緒〜、
と即興で歌いだしてしまった。そんな事をしているうちにエレベータはリビングや居住区のある階に到着する。

「なぁ、そんなに大事な理由かなんかなのか?」

とうとう、の個室の前まで付いてきたフォックスが部屋のロックを開けようとするに訪ねた。

「まぁ、私としてはそんなに大層な理由じゃないとは思うけど、君はきっと師匠に会ったら一発殴りたくなるよ、」

「は?」

「だから、内緒。知っていたって知らなくったってどうせ殴りたくなると思うけど。」

そういっては固まったフォックスを振り向いてバイバーイと手を振って部屋へと入っていってしまった。

「何なんだよ、全く。気になるじゃないか・・」

フォックスはすっかり凹んで、とぼとぼとリビングルームへと歩き始めた。













ただジェームズが息子のピンチに颯爽と登場するためだけにとともに来なかったという理由はその時が来るまで
の口から語られる事は無かった。





拙話


スタフォドリーム第一弾。
どうしても書きたくなってので、ぼちぼちと他の人のもアップ予定。