テクノロジーに幸あれ!




「白と黒」




突如神託の盾騎士団の本部に白髪の女が落ちて半月。

 と名乗ったその闖入者はヴァンの指揮下特務師団長なんていう新しく作られた籍に形式上だけすえられて
他のヴァンの指揮下の者たちとともに一日を過ごしていた。

とはいうものの・・・
リグレットに教わり始めた譜術は3日で放り出し もっぱらラルゴとともに体を動かしているか 導師の元をふらふら訪ねているか
若しくは教会内をフラフラと徘徊するのが大部分だったが。
そんな彼女の生活リズムをよく思わぬリグレットはこの短い間に何度進言してもヴァンは何もいわず
ただラルゴに一言二言訪ねた後、「捨ておけ。」と微笑むのだった。

そんなが今日は珍しく彼女が今まで近寄ったことがない場所に姿を現した。
神託の盾騎士団の施設の中でも特に奥まった部分に設けられた ディストの研究室のある一角  白衣をまとった研究員が行き来し、譜業の
駆動音が唸り声のように低く響く区域 そこをはいつものごとくのらりくらりとすすみ、責任者であるディストの研究室の扉をノックも無く開いた。


「ヤッホー ディスト いる?」
「ノックぐらいするものですよ、。良くここまでこれましたねぇ。」
「呼んだのはディストじゃん。何か用?」
「ええ、あなたに見て欲しいものがあって。」

見て下さい とディストは自らが座っていた椅子を操作して宙に浮かばせて見せる。

「おー、出来たんだ。浮遊機関。」
「ええ、長年の研究の成果です!」
「いいなぁ、私も空飛んでみたい。」

その言葉にディストは上機嫌になってそのまま椅子で広い室内を飛んで見せる。




































「貴女ぐらいですよ、ここの研究員以外で私の偉大さを理解できるのは。」

一通り気が済んだのか 椅子を床に戻してディストはため息をついた。

「総長とかは わかってるんじゃないの?」
「あの人が興味を持っているのはフォミクリー関係だけですよ。」

私のほかの研究には見向きもしないですからね。その上あの陰険ジェイドの本を自室に集めているし・・・と延々と続きそうなディストの愚痴を軽く流して
は部屋の隅にほったらかしになっているディストの失敗作たちをあさる。

「ねぇ、ディスト。ここにある機構は?」
「それですか?この完成体を作るまでにいくつか作った試作品とその失敗作ですよ、いくつかちゃんと動く機構もありますが・・・
 何かほしいものでもあるのですか?。」
「うん、乗って浮いて走れる譜業が欲しいなって。前から考えてるんだけれど創世暦時代の書物とかに載っててさ、自分ひとりで
 外装まではできたんだけれども・・・肝心の動力機構は全然できなくってさ。」

フォミクリーとかで再現できないかぁ、とかって考えたんだけれど、所詮フォミクリーできるのは外見だけだからさ、とは頭をかいて
呟いた。

「フォミクリーは外見だけ・・・ですか。、貴女フォミクリーに詳しいのですか?」

ディストが興味深げに話しにのってくる、ゲームで彼はネビリム先生復活のためだけに動いていた。だからこそ、のって来ると思って呟いたの台詞は見事に彼を引き込んだ。

「まぁ、創世暦時代の本も含めて一通りは読んだよ。導師がさ 導師しか読むことを許されていない禁書を貸してくれてさぁ、そこに
記憶の複製が不可能な理屈を事細かに書いてあったからさ・・・・ってディスト どうした?なんか憑き物が落ちたみたいな顔してるぞ?」
「・・・いえ、何でもありませんよ。何でも、ね。ただ貴女の一言で諦めがついただけです。」
「あきらめ?」

どこか遠くを見るディストには訪ねて手近な椅子に腰掛けた。

「私がマルクトの出身なのは知っていますよね?」
「うん、ディストが自分で話したろ?マルクトでフォミクリーの研究ができなくなったからダアトまで亡命してきたって。」

椅子の背もたれを前にして座った椅子をくるくる回しながらは以前ディスト自身がした身の上話をなぞる。

「その時にも研究仲間に言われたのですよ、『記憶のフォミクリーは無理だ』と。その彼と喧嘩になってマルクトを飛び出してきたんです。」

彼が正しかったのですね、とデイストが俯いた。俯いたディストには少し迷ってから口を開いた。

「そのディストのいう人ってジェイド・バルフォア博士?」
「!どうして貴女がそれを?!」
「だって フォミクリーといえば 理論はバルフォア博士 装置はネイス博士じゃない。サフィール=ワイヨン=ネイスってディストのことだろう?」
「・・・・貴女という人は 本当に聡いですね。」

そこまで頭が回る人物はこのダアトでも導師と総長位だと思っていたのですが、とディストは呆れたようにいう。

「このことは内緒な。あんたの口は堅いと思ってさ ディストの秘密を知っちゃったし、私の秘密も ディストに話すよ。」
「それは 罪悪感からのことですか?」

一瞬ディストの顔が曇る

「ちがうよ。ディストなら私を助けてくれると思って・・・」

だめ・・・か?とは内心共々不安に駆られる。

「いいでしょう、他でもない貴女の頼みです。どこまででもつきあってあげますよ。」
「ありがとうディスト。」

本心からの礼の後 は 「預言を歪める者」として 口を開いた。






























ありえないはずの 未来の話にディストが押し黙る。
はディストが質問をはさまない限り 大筋でしか態と話をしない。それはこの話が外部に漏れることを望んでいないからなのだろう。
大筋を話し終えたは 少し不安そうにディストをみた。

「・・・・空から降ってきたりで 変な人だと思っていましたが・・ここまで突拍子もない話を聞かされるとは。」
「信じてくれるわけないよな・・・ディスト」
「まさか、あなたのような変な存在 これぐらいの常識外があっても普通でしょう?私は貴女に協力しますよ、どこまででもね。」

それが先生のいた世界を守るためなら、ね。と口にはださずにディストは思った。

「ありがとう、ディスト。でも 誰にも言うなよ?」
「わかっていますよ。 ・・・そうだ 私の協力の証に貴女の作りたがっていた譜業をつくってあげますよ。後で外装を運んできなさい。」
「うっわーー! マジで? ありがとう ディスト!」

私 今からとってくるわ、とは軽やかに部屋を後にする。部屋を出る直前では振り返る。

「ディスト」
「何です?」
「バルフォア博士と仲直りしたいなら 手紙でも書きなよ、必死で書けばきっとうまくいくと思うぜ?」
「っ!大きなお世話ですよ!!」

いつもどおりの軽口でディストの声が届く前には部屋を後にする。そんな彼女に仕方がないと呆れながらディスとは気まぐれに
手紙もいいな、と思った。



































拙話
ディストの話
ディストに関しては思いっきり捏造かもしれません・・・