フィードバックする 落ちる感覚
「白と黒」
予想していなかったといえば嘘になる。そう思いながらはまたもや異世界 オールドランドの青い空に放り出された。
すぐに星の重力がを捉えて地表へと引き寄せる。
「またしょっぱなから怪我するの・・かな・・」
勘弁して欲しい。と思いながらも背ではためくマントを手繰り寄せてパラシュートのように空気を含ませて減速を試みる。
段々と近づいてくる大陸はどうやらザレッホ大陸らしい。上空からザレッホ火山の溶岩が窺えた。
毎度毎度なぜか上空だの崖の上だのに飛ばされるとしてもこの火山が見渡せる高度はずるいと思う。
「これでこの初回の着地は死なないんだから梢もいい加減だよなぁ。」
神様の加護とかいうやつで怪我はしても死なないよ、とあの異世界神はお茶目にに告げた。
その言葉を反芻しながらもその後の対応がとりやすいようにダアト港かダアトの町に下りないとなぁ、と考えながら体をうまく降って
風に乗る。
大分高度が下がったのかローレライ教団の大きな建物が見えてきた。重厚な街づくりが眼下に広がるようになり人々の姿が小さいなりにも
確認できるようになってきた。
「この分だと、境界の裏手に落ちるなぁ。」
風が第四譜石の丘から教会に向って吹いているのを確認して教会に当たらないように体重を移動する。
教会の裏手に差し掛かると眼前に今度は山が迫っていた。 このまま進めば風は山で反り返り自分が乗っていられるようなものでなくなる。
「ヤバ・・」
が呟くのとマントが掴んでいた風がなくなるのとがほぼ同時では自分の下で訓練にいそしんでいる神託の盾兵たちのど真ん中に
落ちていった。
「第3小隊、前へ!」
リグレットの声に従って第四師団の小隊が入れ替わり戦闘訓練を始める。第四師団の周りではラルゴの率いる第一師団とこれは珍しく
師団長の姿が見える第二師団、ディストの隊も訓練を行っている。
教会の裏手にある神託の盾の演習場は今日もいつもと変わらずに兵士達の訓練が行われている。
それにしても今日は風が強い。そう思いながらもヴァンは久しぶりに兵士達の訓練に参加するべく演習場に足を踏み入れる。
ヴァンの姿に気づいた待機中の兵士が黙って敬礼を送るのに休めの合図を送って、ヴァンはゆっくりとリグレットのほうへ歩み寄る。
「精が出るな、リグレット。」
「閣下 全隊訓練やめっ 総長に敬礼!」
リグレットの声に第一師団 第二師団も訓練をやめて自分達を纏め上げている長に敬意を示す。その間からラルゴとディストがヴァンの元へとやってきた。
「今日はディストまでいたのか、珍しいな。」
「研究にひと段落着きましたからね、凝り固まった体を解していたのですよ。」
そう答えたディストに筋肉痛などを起こしてくれるなよ?とヴァンは言ってラルゴにも兵士をあまり扱き過ぎるなよ、とその巨漢を見上げた。
「それで閣下は どうかされたのですか?」
予てからの計画を実行に移すのですか?とリグレットが尋ねたのに静かに首を振って、ヴァンはただ体を動かしに来ただけだ。といい ラルゴに
相手をしてくれ、といった。
「では、兵を下がらせます。全隊、待機に移れ、総長の剣技を見て己の力にするのだ。」
リグレットの声に従って兵士達は演習場の中央を開けて周りに円座になる。その目はみなあこがれの総長に注がれてその剣の腕を見ることに
期待をみなぎらせていた。
「では閣下、どう・・・・」
リグレットが言葉を失くす。今まで兵士達がいた演習場の中央に空から何かが突っ込んだのだ、教会から誰かが身を投げたのだろうか・・
とにかく演習場の柔らかい土を当たりに撒き散らし、土煙を上げてそれは 空から落ちてきた。
「何です!?何が起きたのですか!?」
「第一師団 警戒態勢をとれ!」
ディストとラルゴがまず最初に部下に指示を出し騒然となったあたりに少しずつ緊張感が芽生えてくる。
「閣下、お怪我は?」
「大丈夫だ。それより、何が起こったのだ・・私には人が降ってきたように見えたのだが・・」
「確認します。」
「私も行こう。」
リグレットがブァンの前に立ち土煙のほうへと歩いていき、その中心地を見下ろす。あたりの土は吹き飛んで放射状にくぼみが出来ていた。
その中心には何か 人がめり込んでいて上に吹き飛んだ土が載っている。
ヴァンとリグレットが顔を見合わせているとラルゴとディストも穴の中心へよってくる。
「何なんですか?」
「判らん。」
4人の視線がソレに集中してすぐにソレの指先が動き次の瞬間には体の上の土を跳ね除けて顔を上げた。
「梢、絶対殺す!もう預言なんか知るかー!」
穴から這い出した白い髪の人間?が叫ぶ。そのまま穴の外で仰向けに転がってやっとヴァンたちの存在に気づいた。
土によって汚れた髪とボロを纏った姿なのに緩く落ち着いた表情を浮かべている。
「あ、どうも。お騒がせしています。」
「何者ですか貴方?」
事態についていけていないラルゴやリグレットを傍らにアクシデントには慣れているディストが自分の眼鏡を押し上げながら尋ねた。
「何者・・うーん、私 何者?」
「私がソレを聞きたいんです。ここがどこだかわかっているのですか?」
「ダアトの・・教会の裏?」
正確には神託の盾の演習場です。とディストが言えばそうなんだ。と返してくる女は寝転がったまま自己紹介を始めた。
「私は 。なんか・・・預言を歪めろって言われてー、ザレッホ大陸の上空に放り出された。」
「預言を歪める・・か。私の元でその使命を果たさないか?」
ディストの後ろからヴァンがそう尋ねるのにようやく現実まで思考が追いついたリグレットが閣下!?と反論する。
「上空から落ちて生きている人間だ、なにか特殊な力でもあるのだろう。目指すものも我々と同じ。どの未知ここに落ちたのだから
教団の保護を受けるのならモースごときに消される前に配下に、と思ったのだよ。」
「お前、前線で戦うことが出来るか?」
ラルゴが女を見下ろして訪ねる。それとも、譜術のほうが得意ですか?とディストが尋ねるのにが答える。
「まぁ、人間離れした人間を倒すくらいは出来るつもり。」
譜術は使いかた知りません。習う機会がなかったんで。といいつつ、頭の中で異世界から来ましたから ついでにあんたの野望を
阻止するつもりなんで舞服させてもらいます、と付け加える。
「決まりだな。、私はヴァン・グランツ。そっちの大きいのがラルゴ、こっちがディストで彼女はリグレットだ。
リグレット 世話と説明をしてやれ。」
「ハッ。」
リグレットさんねぇ、よろしくぅ。とまたが緩く笑う。印象を弱そうで警戒する価値のないやつ、と与えられるように、と。
「リグレットでいい。付いてきなさい。」
リグレットはそのまま自分の師団を解散させて教会へと戻っていくのをが待ってーと呼び止める。
「何だ、さっさと起きて付いてきなさい。」
「足がさぁ、折れちゃってんだ。」
だから立てない。仰向けのままそういうにリグレットはラルゴに吊るしてつれて来い、といい。また歩き出した。
獣は静かに 牙を研ぐ。
拙話
白ヒロイン編はちょっとギャグチックに行きたいと思いつつ。ホットヌードルヲ食べながら。