背筋が浮く ような 浮遊感の後 私は この世界に降り立つ





「白と黒」





軽く閉じていた目を開くと一面に広がる 濃く青い空に は 改めて自分が 違う世界へとやってきたことに嘆息した。
いつもと違う自分の体 梢の用意した彼曰く「ボイン」な体を軽く動かして 自分の体との差を違和感を洗い出すが、思ったより文字分の感覚としっくりときて
いつもながらの反則業だ・・と皮肉ってから辺りを見回す。

自分が人気の無い森の中に飛ばされているのは目を開いた瞬間に理解した。
不思議な程ゲームをやっているときには現れた雑魚モンスター達の気配をいたるところに感じる。地理的なことは手近な街へ行って把握すればいいか、と
腰のホルスターに収まっているリボルバーを撫でてから歩き始める。















森の中を進んで行くうち軽く体を解していく。いくら違和感が少ないとはいえ、慣らしておくのは必要だなぁ、と景色を楽しみながらも
飛びだしてくる魔物を流しうちで往なしていく。ゲームの始まる7年前とすれば、オリジナルのルークがヴァンに攫われて
レプリカのルークと入れ替わる年なのだから、どちらへ自分が接触するか、というのはかなり大事なことだな、と思いつつもとりあえずは街に出る事が必要最小限だ、
と歩を進める。


の方は大丈夫なのかな・・。視角の共有だの、共鳴機能だのって結局梢のやつはやりかたを教えてくれなかったしなぁ。」

心配する必要が無いくらい強い事はお住み突きなだか、毎回何処かの世界に飛ばされた途端に不慮の事故に会うというありがたく無い
星の元に生まれたらしいので、配慮すべきだとなぁ、は考えた。

「まぁ、骨折してても武将を倒せるくらい強いし、大丈・・・あれは・・・?」

ちらちらと森の木々の向こうに炎が動き、人の悲鳴のようなものが聞こえる。怒声やら叫び声やらが混じっているので襲われているのだろうか。

「そう言えば・・ガルドとか持ってないしなぁ。恩を売って今晩の寝床にでもしますかねぇ・・。」

そう呟いてから、まっすぐに茂みを掻き分けて歩いていく。小枝が素肌の出ている足を軽く引っかく感触に顔をしかめつつ 軽く跳躍して
森の外、街道と思われる場所に飛び出した。
























ルークは馬車の中で舌打ちをした。開かなくなったドアを何回も蹴りつける。外から聞こえる白光騎士団の断末魔に焦りが募る。

ベルケンドへの領地視察の帰り道で母上と共に乗った馬車が野盗に襲われた。相手ははじめからこの馬車を狙っていたようで魔物まで使って襲ってきた。
警護に突いていた白光騎士団が応戦するもののどうやら相当の強者らしく、さっきから聞こえるのは騎士団の傷つく声ばかり。

悲鳴があがる度に体を強張らせるメイドと母シェザンヌに俺がお守りします。といって腰の剣に手をかける。それを止めて共に馬車の中にいた
騎士団長がルークより先に馬車を降りて応戦に行き、その時に団長の指示で馬車の扉は鍵がかけられてしまったらしい。
鍵さえ掛かっていれば確かに自分達の身は安全かもしれないが、それは騎士団が勝利したときの話で圧倒的不利と思われるこの状態では
自分のみを危なくするばかり。

「このっ・・・!」

悲鳴がやみ此方に近づいてくる足音に焦りを覚えてルークは力任せに扉の隙間に剣を差し込んでぐいぐいとこじ開けた。
開いたドアの向こうにはにやり、といやらしい笑みを浮かべた野盗たち。

「お坊ちゃまよ、お前を助けてくれるようなやつはもう一人もいないぜ?」

野盗たちの後ろには優に10人はいた白光騎士団が全員地に伏しぴくりとも動いていない。あたりは魔物の地や何やらでむせ返るように濃い異臭が漂っている。
お前ら貴族を襲えばそれなりに金目の物が手に入るからな・・と野盗の一人は嘲笑う。

「さて、死んでもらおうか。」

野盗の一人が剣をルークの上に振り上げる。思わず構えそこなった剣を握り締めて体を強張らせる。
死にたくない!心の底からそう思った。



バァン!



「世の中の汚物が いい気なもんね。」
「手前・・!」

野盗の手を貫いた弾丸の音で目を開けば野盗のはるか後ろに立つ 黒い髪の女が嘲笑を浮かべている。

「邪魔するなら、姉ちゃんだって容赦しねぇぞ?」
「あら?怖いこというじゃない?そんなに強いのかしら?お宅等。」

露出の高い体を僅かに動かして女が銃を構えなおす。

「そっちの女から 血祭りにあげちまえ!」

馬車の前から10人近くの野盗たちがいっせいに女に向って走り出した。

「危ない!」
「・・・大丈夫よ。強いから。でも 動かないでね?」

馬車から降りたルークが剣を構えて走り出そうとするのを止めて野盗たちに向って女が銃声を轟かせた。

「兵法 そのイチ 速やかに敵の 機動力を断つべし。」

足への攻撃は特に有効的ね。そういいなが躊躇いなく引き金を引く、音一つと引き換えに野盗たちは次々と地に伏していく。それでも
彼女へ接近できた野盗たちが斬りかかるのをまるでそこに剣が振り下ろされるのを知っていたかのようにすっとよける。

「兵法 そのニ 接近し 攻撃する相手には 躊躇うべからず。」

弱いのに楯突かない事ね、と完全に見下した目で野盗の頭に照準が合わされた銃が吼える。
周囲の敵を簡単に一掃すると銃を持たない手で髪を掻きあげて足を打たれた野盗の頭領の元へと歩いて行く。

「いらっしゃい、ここでこの人たちの処遇を決める権利があるのは君だわ。」

ルークの方を見て彼女が言うと、ルークが頷いて野盗の元へと歩いていく。彼女はその過程で、まだ抵抗するかのように彼女に向って
剣を振るう頭領の腕を撃ち抜いた。続いて同じく地に伏している野盗たちの剣も遠くに蹴りとばす。

「兵法 そのサン 相手の 抵抗手段を 奪うべし。」

往生際が悪いねぇ。と銃の台尻で肩を叩く彼女にちらり、と視線を向けて野盗の前まで来たルークは口を開いた。

「助力に感謝する。俺はキムラスカ・ランバルディア王国のルーク・フォン・ファブレだ。」
「どうも、大したことはしていないけれどね。私は 。只の。」

因みに文無し 宿無しで仕事無しなロクデナシです。そういってからこいつをどうする?とは隣のルークを見る。
7年前でこの堂々とした立ち居振る舞いなら、間違いなく彼はオリジナルだな、と確認しながらその答えを待つ。野盗の頭領は早く殺せ、と
いきまいて睨みつけてくる。

「殺していい?」
「このあたりを騒がせている悪名高い野盗だ。捕まえて前科を調べたい。」
「じゃあ、騎士団の皆さんに捕まえて貰いますか?」

私が白光騎士団の人たちを治療してあげる。とが「黒樺」の能力 治癒を使って生きている白光騎士団の傷を治していく。

「ルーク、騒ぎは収まったのですか?」
「母上!」

の指示で回復した白光騎士団たちは次々と立ち上がって野盗たちを取り締まっていく。その喧騒の中をルークが馬車から降りた婦人の元に
走っていく。

「母上、彼女が、が助けてくださいました。」
「ファブレ公爵夫人とお見受けいたします。ルーク様のお姿でもしやと思いお助けいたしました。」

すっと膝を折って頭をたれるとルークがルークでいい、と言ってシェザンヌを見上げた。

「母上、は白光騎士団の怪我まで治してくださいました。」
「残念ながら、5名の騎士が私の治療の前に命を落としていました。」
「それでも、貴方は私達の命の恩人です。」
「ありがとうございます、では、私はこれで。」

日がくれるまでにバチカルを目指さないといけませんので、と立ち去ろうとするをルークが引きとめ。

「お待ちになって、さん。バチカルに何か御用でも?」
「ルークには言ったけれど、文無し 宿無しで仕事無しのロクデナシなんで、何処かやとってくれる所を探そうかと。」
「母上、屋敷で雇って貰えませんか?」
「ルーク、分不相応だよ。」

その気持ちだけで十分さ、とは言いながら内心今後の行動を考えて自由の大きい仕事の方が動きやすいな、と考えることを休まない。

「あら、我が家では不足ですか?」
「はい?いやそうではなくてですね・・・」
「なら 話は決まりですわ、さぁ、馬車へ。」
「えっ ちょっと?」

立ち去ろうとするの後ろからメイドと白光騎士団の団長がさぁ、どうぞ?と推し進めて馬車の方へと進めていく。
こののんびりとした公爵夫人のペースにどことなくの従妹のを思い出しながらは馬車へと乗せられてルークの隣に座らされる。

「まぁ、いいか。いく宛もないし。」
「うちに慣れたら、俺の相手をしろ。」

横でぶっきらぼうに言うルークに、まぁ 考えさせていただきます。と言ってから向かいからが今までにどこへ行ったことがあるか、と
尋ねる公爵夫人に答え始める。



馬車はゆっくりと バチカルへ























拙話
捏造、似非夫人・・そして似非ルーク(いや アッシュ)