アイツに久しぶりに呼ばれた気がした。




「白と黒」




三国無双の世界へと「アイツ」 梢に飛ばされたのはもうずいぶん前のこと。は瞬きをした瞬間に己がまたどこでも無い空間にいる事に
ため息をついた。
隣には共にゲームのエンディングを眺めていたの姿。同じくゲームをしていたの姿は無い。

ここに来るための条件である妖刀「白樺・黒樺」がふわふわと漂っている。

持ち主を修羅へとかえてしまう「白樺」
持ち主を治癒者にする「黒樺」

双振りの刀と あるツボが揃えばそれぞれの持ち主を異世界に飛ばす力があるという。

「黒樺」は本来の持ち物だが、無双の世界からを助けだす際にが使ってからも持ち主として認めているらしい。

「白樺」と「黒樺」はもともとこの世界と世界を繋いでいる空間の主、「梢」の僕であり、この梢こそが
他の世界へと送り込んでいた張本人である。

「ここに飛ばされたって事は、また梢に呼ばれたってこと?」
「そうだろうね、じゃなくってを呼んだくらいだから、またどっかに旅立たされるんだろう。」

はアレでこの世界でとても重要なポジションに突いているわけで梢としてもこの世界から異世界に送って自分の代わりに仕事を
してもらうわけにはいかないらしく、異世界に送る資質が有るほかの人間、つまりはは梢に見込まれて色々な世界へと飛ばされている。
ソレもかなりこちらとしてはくだらないとも取れなくない、梢の落し物を回収する、なんていう作業で、だ。

「久しぶりだよね、今度はどこに飛ばされるんだろ。」

今私、銃もって来てないんだけれど、というに私だって「白樺」でいつも戦うわけにはいかないんだけれど。とが頭をかいた。

「やぁやぁ、二人とも。久しぶり。」
「梢・・」
「また、私達に押し付け仕事?」
「そんなひどいい方しなくてもいいじゃないか。」

外見は20代にもなっていないであろう異世界の神が男とも女とも判らない顔で笑う。

「ダチがね、君達に助けて欲しいんだとさ。」
「梢の友達?他の神様とか?」
「どちらにしても私ら只の人間よ?何しろっていうのよ。」

ましてや丸腰だしねー、とやる気の無い反応をが返すのを、も黙って頷く。此方としては早く元の空間に戻って残してきたと共にもう一度
アビスのエンディングを見直したいのだ。

「冷たい反応だなぁ。僕は君達を否応無しにダチの所に送っても良かったんだよ?でも君達に説明してからでもいいかなぁ、て思ったんだよ。
 でも、そんな反応するなら丸腰どころか足腰の自由を奪ってから送り込んでやろうか?」

どちらにしても送り込む気 満々の梢がそういったのに折れてはもう一度髪を掻きあげると仕方ない、と言うようにを見てから口を開いた。
こういう理不尽な性格をした人間の相手は生まれてからずっと破天荒な従妹につきあって生きてきたの十八番とするところといえよう。
(最も、自身もかなりクセありな性格であると、は認識しているが。)

「あぁ、はいはい。大人しく パシられりゃいいんでしょ、それで?今度はどこに行けばいいのよ?」
「今度はね、テイルズ・オブ・ジ・アビスって知ってる?そこ。」

僕の友達ローレライって言うんだけれどね、と笑う梢には顔を見合わせる。

「これまた偉くタイムリーだね。」
「今までうちら そのゲームで遊んでいたんだけれど。」
「あらら、なら説明要らない?とりあえず君達の仕事は預言からの解放。」
「それってストーリー上で主人公達が果たしてくれるでしょ?」

私達が態々出向くまでも無いじゃん。とが呆れると、違う違う、と梢が首を降る。

「君達がするのは人命救助。アグゼリュスだっけ?そことかさぁ、とにかくいらない命が消えないようにってさ。」
「無理でしょ?」
「うん、無理。」

以前は敵同士であったの絶妙な返事に梢が前みたいに話がスムーズに進まないなぁ、と頭をひねる。

「僕が直接その世界に干渉できないから、君達に媒介をして欲しいだけだよ。それで、可能なら他の所でも人助けしてくださいってこと。」

キャン・ユー・アンダースタン?といじけたような梢の目がを見る。

「要は、向こうでしばらく ルークとかと行動を共にしろってこと?」
「そう。君達二人に 二人のルークの道標になって欲しいんだってさ。」

要は二周目だね、ゲームの。と梢はこともなげに言ってのけた。

「二人のルークってことは 私等また別行動なワケ?連絡とかどうするよ?」
「携帯使える?ワケないだろうしねぇ。」
「二周目ってとこには驚かないんだ・・。」
「「予想がつく。 それくらいは。」」

今までどれだけあんたに無茶させられたか、との皮肉にが頷く。

「まぁ、こっちも説明する手間が無いのがいいけれどね、早速向こうに行って貰いたいんだけれど、ちょっと問題ありでね。
 君達をこのまま向こうには送れないんだ。」

向こうとこっちの時間経過速度が違うからねぇ、と梢が困った。と唸る。

「そういえば アビスの人物の寿命って私達の倍だっけ?」
「そう。このまま送ると君達の年齢、半分になっちゃうんだよね。しかも音素への変換もしないといけないから、帰ってきても縮んだ
 ままになるかもなんだよね。」
「『ま、いっかー。』なんていわないことをとりあえず褒めておくべき?」

梢が面倒くさがればどこまでも とんでもないことになることを経験済みながそういったのに、あの時は悪かったってば。と梢が謝る。

「でね、考えたんだけれど、こっちで君達用の体を用意することにしたんだ。というか、伊達に生きていない「白樺」と「黒樺」のデータを
 元にして体を作ったから、ソレ使って?」

梢の指がパッチンと何処かの錬金術師大佐のように音と光を放ち、空間の中を漂っていた双振りの刀を人の姿へと変える。
現れたのは黒髪と白髪の女性体。その体がまるで引き付けられる様にに重なり、元の自分の姿が飲み込まれる。

「白樺はに。黒樺はに。身体能力を一応似せておいたから。後は元々刀同士が持っていた共鳴能力とかね、視覚の共有とか、
 色々特典がついてるから、使いながら慣れてね。」
「相変わらずに都合のいい力の活用で。」

が皮肉ってから元自分の腰にあった刀で作られた自分の体に触れる。梢が出した姿見を見ればの入る黒樺の体とそっくりな顔は比べれば少し自分に似せてあるのか
きつい目つきをしている。黒樺は、と見るとのように何処か艶があるような気がする。ただ、両方の体を通じて思ったのは・・

「なんでこんなにでかい胸に作ったのか気になるのだが・・。」
「えー?ボインは人類の夢だよ?気に入らない?」
「そういうことは戦いにいかないで済む異世界に行くときにしてよ・・動きにくいんだから。」

せっかく新陳代謝も高めにして露出気味な服でないと体がしんどくなるように仕向けたのに・・と梢が残念そうにいう。

「ッ・・・・本当に余計な事を。」

今すぐ殴ってやりたい、とが拳を握り締めるのをはやっても無駄でしょうよ、となだめる。

「まぁ、ボインはもういまさらどうにも出来ないから、ちゃっちゃとやることやって仕事してきて欲しいんで、決めること決めちゃおうか。
 ぶっちゃけさ、君達は向こうで何を武器にしたい?」

譜術とかは、向こうで覚えればいいから僕には言わないでね、という梢がまぁ言えば基本武器だねー、と言った。

「もちろん刀・・・と言いたいところだけれど、向こうは剣技を使うやつが多いしなぁ、ナックルブレードとかってあり?」
「うーん、要は拳の外側に刃物がついてればいいんでしょ?大丈夫。僕が知ってるのを持って行って・・・ほら。」

指振り一つで武器を用意する、つくづく梢が人外な気がしてならないものの、素直に受け取り腰のベルトの後ろの方にに挟んでおく。
その時に自分の靴にも小さいながらも踵の側に刃物がついている事に気づく。本格的に体術でも極めるかな、とは口元に笑みを浮かべる。

「で?はどうするの?」
「いつもどおり銃で。問題ないでしょう?」
「・・言うと思ったから用意してあるよ、はい。」

銃の名手としての誇りだからだろうか、いつもと同じでたった一丁の拳銃で戦うというは銃を受け取ってあちこちと動作を確認すると満足したかのように
腰にホルスターを取り付けた。

「さてと、じゃあ飛ばすよ?君達をゲームが始まる7年前くらいに送って 定期的に此方から連絡とかを送ると言う形になるね。
 どこに君達を飛ばすことになるかは・・・僕にも分からない。ローレライの世界に僕が干渉する形になるからね。まぁ、なるようになるさ。」

頼んだよー、と手をふる梢に頷いては姿勢を正した。
二人の姿を光が包み込む。

「たのんだよ、君達に頼ってしか僕は友達一人助けられないんだ。」













が消える寸前の 梢の泣きそうな声が この空間に最後まで残っていた。






















拙話
次あたりからは主人公達で場所を分けつつぼちぼちと捏造過去話やって行きます。