普通じゃない一族のことを 良く思ったことは…




*〜アスタリスク〜





頭を誰かに持ち上げられているような感触では目を顰めた。今度は肩に違和感を覚えた。

「う…」
「お目覚めですか?おじょうさん。」

典医が声をかけると彼女は起き上がり弱弱しく頭を降ってから、今まさに添え木と共に包帯で固定しつつある自分の右腕を見て言った。

「折れてるね・・・。」
「はい、折れています。」
「酷い?」
「いえ、安静にしていれば一月程でしょう。」

そうか、そう言っては喋りつつもしっかりと腕を固定している典医に尋ねた。

は‥私の抱えていた方は今どこに?」
「もう一人のお嬢様なら丞相閣下の御夫人が看ていらっしゃるそうです。」
「そう‥か…夢じゃなかったんだ。」
「は?」
「‥‥なんでもない。手当てが終わったら案内を頼みます。」

そう言っては典医の顔から視線を自身の腕へと移した。痛み止めもなしの手当てなのに、痛みに声を上げないに典医は
おずおずと尋ねた。

「痛みを感じていないほど、筋や骨を痛めましたかな?」
「いいえ、感じている。只・・・これぐらいで泣き言を言うのを善しとしていないだけですよ。私は護衛ですから。」
「お若いのに・・ご立派ですね。」

初老を迎えているような典医は、そう言って腕の包帯を巻き終え、布での腕を胸の前で固定した。

「では、ご案内しますよ。」
「頼みます。」

典医にしたがっては室を出た。





















廊下を行きながらは自分が本当に梢の言うように《三国無双》の世界に来てしまったのだと思った。
みたことのない装飾の柱
現代では考えられない建築技法
道行く人々や目の前の典医の装束

空から自分たちが落ちてきたのだからそれ相応のダメージを覚悟はしていたが、骨折と一時的な感覚障害だけですんだのだから
梢が約束どおりに身体能力を弄ってくれたのだろう。

「着きましたよ、おじょうさん。こちらで丞相閣下がお待ちです。」
「ありがとう、えっと・・」
「李伯と言います。」
「そっか、ありがとう李伯。私は。」
「そうですか、それでは私は仕事に戻りますので、またいずれ会いましょう、御嬢様」

そう言って、典医は来た道を戻ってく。

「別に私は偉くないけれどな。」

その姿を見送って、は治療のために肩が出るまで捲り上げていた右の袖を可能な限り下ろしてから室の戸を開けた。



















戸を開けたそこは広間ではなく、曹操個人の執務室のようだった。十二分に広い室内にが降ってきたときと同じ顔ぶれがそろっていた。

「目覚めたか、。」
「名のみで結構です、私たちの世界ではそれが普通でしたから。」
「そうか、こっちへ来い。お主の話が聞きたい。」

曹操に言われてが机のそばへ近づくとまず早々と自分との間にある机の上に腰の双振りの刀を乗せた。

「・・・ほう、格好は変わっておるが礼儀が解っているようだな。」
「これでも異界で護衛をやっていた身です。主に危害が及ぶような真似はしません。」
「してよ、おぬしは本当に異界にやって来たようだな。」

司馬懿、と曹操が自分の後ろにいた司馬懿に持たせていた本を差し出させた。

「お主と共に降ってきたものの一つじゃ。読み解く限りは曰く付きの神具の様だな。」
「はいその本にある、おかしな臺が私たちをこの世界へ導きました。でも彼女、様はそのことを知りません。」

後に私から説明します。と言っては辺りを見回した。

「それで、様は今どこに?」

あなたに預けたところまでは記憶があるのですが・・とが夏候淵を看ると夏候淵がぽりぽりと頬を掻いてすまなそうに笑った。

「確かに預かったんだけれど、お前が倒れてすぐに目を覚ましてよぉ・・」
「思いっきりわしらの顔を見て悲鳴を上げた後にまた気を失ったんで卞が隣で見ておる。」
「‥‥どうしようもない主で本当にすいません。暫くは目を覚まさないと思ったんですけれど・・・彼女は人見知りが激しくて。」

曹操が目線でそこだ、と差すとは起こして現在の状況を理解させます。と曹操たちに頭を下げた。

















室内にいた卞夫人にお世話になってすいません。と頭を下げてからをゆすった。

、起きて。」
「ん・・・ちゃ?」

ほら起きて、と卞夫人が可愛い妹さんね、と差し出したぬれた布で顔を拭ってやるとがくわっと顔を見開いて言った。

ちゃんっ大変!私たち誘拐されちゃった!!きっとを潰すつもりなのよ!あんなことやこんなことを私たちに強要して
 おじいちゃんやパパたちを困らせて・・・・」

、落ち着こう?誘拐されてないから。」

うるさくてすみません、と隣の卞夫人に謝っての寝ている床に腰掛けての手を握ると、こんこんと今までの事の経緯を
話して聞かせた。









「曹丞相閣下、失礼いたしました。我が主 様です。」

そう言って隣室からと卞夫人がその後ろに隠れるようにが現れた。

「っ‥‥ です。異界で大きな財団の跡取りしてます・・・」
「ほら、ちゃんとして、私たちを保護してくださった丞相閣下と、そのご夫人の卞夫人、それから巻き込んだ武将の皆様に謝罪を・・」

ズイ、と慣れた手つきでを前に押しやる。
周りを見ればよく見知った容姿の武将達、曹操をはじめとして夏候惇・夏候淵・司馬懿・徐晃。

「ひっ・…ア・・・えっと。曹操様と卞夫人と皆さん、ありがとうございました。ゴメンナサイ。」

ぺこり、と頭を下げたは頭を押さえてため息をついた。周りの武将たちも顔を真っ赤にして頭を下げたに目を白黒させている。

「すみません・・色々と無礼者で。」
「よい、、と言ったな、面白い気にいった。わし配下にならんか?」
「孟徳?」
「殿?」

曹操が楽しそうに笑い、卞夫人が素敵な考えですね、と自分の夫のそばへ寄った。

「この者たちは我が軍に対して力を与える事はおぬしらもあの書を読んで理解しておろう。それに第一わしはが気に入った!」
「また始まったか・・。」
「俺たちにはなんも言えねぇな、惇兄。」
「拙者は殿の御意思に従うのみでござる。」

夏候惇、夏候淵が曹操の説得をあきらめ、徐晃、そして手元に置くように進めた司馬懿が黙って頷いた。

「えっと ありがとうございます・・かな?」
「私は・・・辞退させていただきます。」
「何故じゃ?」

曹操の目を見据えてがそう言い切ったのを曹操は面白くなさそうに尋ねた。その様子に夏候惇たちがまただと言う風にため息をついた。

「私は様一人に忠誠を誓った身です。いくら曹丞相閣下でも、この誓いだけは敗れません。」

強い瞳は例え殺されても譲る気はない、と語り、曹操はふっと微笑み。席を立っての肩に触れた。

「良かろう、その強い義の心、の配下のままわしの傘下に入れよう。」
「ありがたき幸せ。」
「だが代わりに一つ。」

そう行って曹操が目つきを鋭くする。

「わしの事は孟徳と呼べ♪」
「えっ・・・?」
「ハーイ、孟徳様ぁ。」
ッ?」

が曹操に満面の笑みを浮かべてこれからよろしくお願いしますね、と笑う。そして、くるり、と向きを変えるとに不満げな顔を見せた。

ちゃんて、何でそんなに頭が固いの?さっきからすっごい余所行きって感じの言葉遣いだし!」
「いや、だって普通偉い人の前では畏まるもんでしょ・・」
「嫌なのっそう言う余所余所しいちゃんは。従兄弟なんだからさぁ・・・生まれてからずっと一緒なんだからぁ・・・」
「ウッ・・・」

徐々にジワリ、との瞳が潤み曹操や他の武将たちの視線が痛くなってきては、はぁ〜っと盛大なため息をついた。

「解ったから、もう畏まった言い方しないからさ、。」
「他の人の前でもだよ?私がいなくてもだよ?」
「約束する。」
「孟徳様の事もちゃんと字で、だよ?」
「そっそれは・・・」

が立場的にまずいと思うんだけれど。と言うと曹操とに顔をずいっと近づける。

「「 命 令 ! 」」
「・・・・努力します。」

その力関係に夏候淵は惇兄と殿見たいだな・・と思った。



















拙話
ぼちぼちです。
どこが似ているのかと言うと我侭に弱いところ。
暫くは宮中ねたで。