こんにちは、さようなら。





*〜アスタリスク〜







「せいっ ハァ!」

広い鍛練所に斧が空気を切り裂く音と共に気合の声が響く。
対峙する長髪の男が剣を横に凪ぎ、斧の使い手の頭巾の男を下がらせた。
二人の間に出来た間合いが踏み込んだ二人によってゼロになる。
斧と剣が交わり火花が散る。
一息飲む間に刃と人はまた離れ、めまぐるしく切り結ぶ。
そして一瞬の間合いのずれから長髪の男が頭巾の男の首筋に剣をつきつけた。

「フ・・・まだまだ詰めが甘いな、徐晃。」
「やっぱり夏候将軍には敵わないでござるよ。」

長髪の男 夏候将軍と呼ばれた方が徐晃の首筋から剣を下ろし、さっきから鍛練所の柵に持たれかかって拍手を送る男の方を見た。

「淵お前もどうだ?」

話を振られた男、淵は柵に持たれかかるのをやめてかぶりを振った。

「遠慮しとくぜ、惇兄。今は練武より弓って気分だからな。」
「ならばわしとやらぬか?元譲。」

その声に夏候惇も徐晃も夏候淵のいる柵の向こうの回廊に現れた主君の姿に気付いた。

「孟徳、軍師達との会議じゃなかったのか?」

剣を肩に担いで夏候惇が言った。

「とうに終わったわ。もう昼前だというのに、」

呆れたように彼等の主君、曹操孟徳は回廊から鍛練所の土の上に降り、そのまま鍛練所の中央まで出る。

「どれ、懲り固まった体をほぐすか、元譲、付き合え。」

佩いでいた倚天の剣を抜いて曹操は手招きした。

「殿、先程の会議で提案された策なのですが・・・」
「なんじゃ司馬懿、後でも良かろう。」

回廊に現れた司馬懿がまだ何か言いたそうにして、ふと 空を見上げた。

「何だあれは。」

司馬懿に釣られて夏候淵と徐晃も空を見上げて目を見張った。

「何だありゃ・・・」
「雲がまるで渦の様に・・・」
「空とて日によっては姿ぐらい変えよろう。」

何の問題も無いわ。と鼻で笑う曹操にの真上の空の変わり様に司馬懿は舌打ちをして叫んだ。

「夏候将軍、殿を!危険です!」
「応!」

司馬懿の声に従って夏候惇が曹操を担いで回廊の軒下に辿り着いた途端に雲の渦の中心から光が地面を貫きその場にいる誰もが
見たことの無い物がいくつも空から降り注ぎその物の波の最後に一振りの見慣れぬ黒い刀が地に突き刺さって終わった。

「何だったのだ?今のは」
「さぁな、空から物が降ってくるなど得体が知れんがな。」

夏候惇が曹操を肩に担いだまま曹操の独り言に答えた。

「惇兄、あそこ!人だ!!」

夏候淵の声に従って空を見上げると渦から出ている光の中央から人影が物凄い勢いで地表目指して突っ込んできていた。






























「どけえぇぇぇ!」

鍛練所の隅に残っていた兵士に向かってそう叫ぶと、人影は腰元から刀らしき物を引き抜いて地表を思い切り凪いだ。
刀から衝撃派が生じ刀の主と抱えているものの落下速度が落ち、刀の主は舞いおこる砂塵の中に刀を盾に落ちていった。

「曲者か?」
「いえ、状況からしてどちらかと言うと神仙の類かと」
「確にな、奇妙な物と共に現れた死神やも知れんな・・・」

曹操はそういいつつ顎を撫で砂塵の中の人影に近付いた。

「待て、孟徳。危険だ、俺と淵が先に行く。」

夏候惇が曹操の肩を掴んで引き留め、武器を携えた夏候淵と共に収まりつつある砂塵の中の人影に近付いた。
片膝を付き抱えている物、それは人であったがをかばうようにうつ向き抱き締めているその人物は後頭部で高く縛った髪を
サラサラと肩へ流しながら近寄って来た夏候兄弟を見上げた。

「おい、大丈夫か?」

声を掛けながら夏候淵が肩に触れようとするとその鼻先を刀が霞めた。

「触るな、お前達が彼女にとって危害があるなら斬る!」

しっかりと胸の中の少女を抱き、その人物は立ち上がった。
片目に掛った髪の合間から額が切れ、出血しているのがみてとれた。

「お前何者だ?」
「自ら名乗ろうとしない者に名乗るつもりはない。」
「何を・・・生意気な。」

切り捨ててくれる。と夏候惇が剣を構えると相手も夏候惇に向けて刀を構えた。

「止めい、元譲。」
「殿!」
「孟徳。」

曹操が夏候惇を一括し、ゆっくりとその手に渇いた血の付いた本を持って歩み寄った。

「わしは曹操。お主ら 異界の者だな?」
「如何にも。私は。彼女の護衛。ここが洛陽で貴方が曹丞相閣下なら彼女の保護を願いたい。」

淡々と言葉を紡ぐ間にもの四肢はガクガクと震え目付きは今にも気を失ってしまいそうだった。
それを見て曹操はの右腕が落下の衝撃で折れもう既に反抗する力も残っていないことを見て取ると口元に笑いを浮かべて頷いた。

「そなたの願い、聞き届けよう。妙才、その者の主を。」

曹操の言葉に夏候淵がから少女を受けとる。
その途端には崩れる様に倒れた。ありがとう、という言葉を残して。

「孟徳、どういうつもりだ?間者かもしれんぞ?」
「それはあるまい、元譲。もしそうだとしても、腕の折れた護衛と小娘程度、お主の目を欺けまい。」

それにこの者の武、なかなか面白い。
そう言って曹操は目を細めてを見下ろした。
















拙話

やっとでてきた無双キャラ・・
ぼちぼち行きます。