自分用。
*〜アスタリスク〜
「はい、もういいですよ。」
「本当ですか?」
「はい、ちゃんと引っ付いていますよ。」
「・・・・やった!!」
木漏れ日の気持ちいい室内でニコニコと笑う典医に久々に包帯から開放された右腕をがそっと撫で擦る。
「よかったですね、様。」
「ああ、これでやっと右手で鍛錬ができるよ、ありがとう景葉。」
景葉には毎日包帯を巻いたり、苦労をかけたね。と態々城まで付き添ってくれた景葉に微笑みかける。
「さて、私はこのまま鍛錬に出るけど景葉はどうする?」
「私は、一足先に屋敷に戻っています、色々雑用が残ってますから。」
「そう、じゃあ、気を付けて。」
「はい、様も程ほどにしておいてくださいね。」
「ん、判ってる。それじゃあ、先生お世話になりました。」
と景葉が御礼をいって医務室を後にする。
「私と会う回数は少ないことがあなた方にはいいことですよ。」
そんな典医の言葉に送られては景葉と別れて鍛錬所への道をうきうきと歩く。
鍛錬所までの道のりで城勤めの女官たちが嬉しそうな顔でに対して手を振ったり会釈をしてくる。
あちらの世界でも男よりむしろ女に人気があったは、どこの世の中でもこういうものなのだな、と苦笑する。
そうやって愛想を振りまきながらも足は確実に通いなれた鍛錬所へと歩いていく。
辿り着いた鍛錬所には先着がいた。
「おーい、徐晃殿、淵ちゃーん。鍛錬中?」
「おお、殿。」
「おう、。お前もか・・・って右腕、もういいのか?」
「うん!これでばっちり全力で鍛錬できるよ、また相手をしてくれよ?」
「まぁ・・・お前が手加減すんなら考えてやるわ。」
「拙者も本気は勘弁して欲しいでござる。」
「アハハハ、二人ともお世辞がうまいよ。」
ぶんぶんと腕を振り回して右腕の調子を夏候淵に見せては今まで右側に差していた刀を左側に移す。
そのまま顔を上げてやっと夏候円の隣にいる人物に築く。
「あれ?こっちの人は?」
「おう、は初対面だったか?曹仁だ。」
「殿の従兄弟で昨日まで洛陽の後始末をされていたんでござる。」
「殿より聞き使っている。自分は曹仁、字は子考。」
す、と右手を差し出して曹仁が名乗る。はそれに笑顔で答える。
「よろしく、私は、元譲の副官です。従妹のと一緒にお世話になっているんだけれど、には会いましたか?」
「殿になら、殿の執務室でお会いしました。」
「無茶苦茶な奴なんで、もう既に迷惑かけていたらすみません。」
申し訳なさそうに頭を下げるに曹仁は、確かに元気な女人でしたが別に何事もなかった、と答えると彼女はほっとしたような顔をする。
「そんなに殿はお転婆で?」
「そりゃなぁ・・」
「ええ。」
話をふられた徐晃と夏候淵が互いに頷く。
「「二階から飛び降りて人に会いにくるくらいだ。(でござる。)」」
「・・・」
「本当に危ないことしてたら叱ってやってください。」
頭を下げるに苦労しているのだな、と曹仁は苦笑した。
「ところで殿、」
「ん何?」
いい加減鍛錬でもしようか、といつもどおりが兵から槍を借りるのを見て徐晃がに声をかける。
「殿は自分用の槍を拵えようとは思わないのでござるか?」
「お前、ずっと兵卒用のを借りてるけど、一応槍が主戦だろ?」
一応武将なんだから、兵卒と同じ武器なんてのは、格好がつかないだろ?と夏候淵がの持つ槍を指差した。
「確かに、たまに・・・と言うか書中もうちょっと強度があったらいいな、とか重いほうがいいな、とか思うときはあるけれど、
私、こっちの武器屋とかには疎いからねぇ。」
「なら、自分が贔屓の武器屋を紹介しようか?」
「曹仁殿、本当ですか?助かります。」
がそう言ってやんわり笑った。その笑みは夏候淵のよし、じゃあ今行こうぜ。と言う言葉によってすぐ引きつってしまった。
回りの同意に引きずられてーーー
「つまらん。」
「つまんない。」
「殿、殿、手が止まっております。」
司馬懿がちらり、と羽扇の向こうから曹操の事務処理を行う手元とその雑用をしてい
るの手元をみる。
「なんだ孟徳、まだ終わってなかったのか。」
「元譲・・・終わるはずがなかろう。こんなつまらん仕事、手も遅くなるわ。」
「私もう、遊びに行きたいよ・・・」
書簡をまとめるのに飽きたが机にもたれ掛かるようにうなだれる。
「ねぇ、惇ちゃん、ちゃんは何やっているの?」
「か?城下に淵と徐晃と一緒に曹仁の行きつけの武器屋に行ったぞ。ようやく
自分用の槍を作る気になったらしいが・・。」
「ちゃん 狡いっ! 私も城下行きたいっ!」
が卓上の書簡にお構いなしに机上に手をついて真剣な目で司馬懿を見る。見ら
れた司馬懿は目をそらして夏候惇を見る。
「そんなに行きたいなら、連れて行ってやろうか?」
「本当?やったぁー惇ちゃん好きぃー。」
がそういって立ち上がり、何か羽織ってきます、と曹操の前をお構いなしに辞
す。
「殿は、というか「も」でしょうか 異界の女はこちらの子供のように感情を
表しますね。」
「司馬懿、それに加えてお転婆なのを忘れるなよ、武将並に両方力も強い。」
夏候惇が司馬懿に向かってとはどこか俺たちと違う、と曹操の処理した
書簡を片付けるのを手伝いながら言う。
「承知しています、見た事もない道具と武芸 そして奇異な知識。この魏に組してい
て本当に幸いです。」
万に一つでも他国の手に渡り、悪用されていたら・・・、と司馬懿は言葉を濁らせる。
「ももこちらに跳んだからくりは理解していないようだったがな。司馬
懿、あ奴らが持ってきた書の解析は終わったか?」
「はい。どうやらあちらにもこちらにも属していない精の類が関連しているようで
す。つまりは、彼女たちも突如精の類に気に入られて
こちらに飛ばされた被害者のうちに入るようです。」
他にも、何のことか解りかねる部分もありましたが、と司馬懿が話している最中にキ
ズナが曹操の室の扉を開いた。
「惇ちゃん、お待たせ!早く行こう!」
「話はそこまでだ、司馬懿。また後日報告は聞く。」
「は、出と野はどちらに行くおつもりか?」
夏候惇がに従って室を後にしようとする後ろに続いて曹操も席を立って歩き出
したのを司馬懿が引き止める。
「決まっておろう、わしもと共に城下へ行くのじゃ。」
残りは荀ケ達と相談して決めておけ。と手を振って曹操は悠々と室を後にしようとし
た、
「夏候将軍、殿がまた執務をおさぼりになりたいそうですが?」
「却下だ。孟徳仕事に戻れ。」
「嫌じゃ。」
「孟徳、」
室の入り口で夏候惇が立ち止まり、通さんぞ、と曹操の前に立ちふさがり威圧する。
夏候惇の手前では曹操と夏候惇とを交互に見てから
我関せず、といった風の司馬懿を見て、目をそらされた。
「嫌じゃ、わしはと城下へ行く。行くぞ、!」
夏候惇の一瞬の隙をついて曹操がの腕を掴んで走り出す。
「あっ、待て、孟徳!」
「行くぞ!城下で何かうまいものでも買うてやろう!」
「ハーイ、孟徳様。」
結構なスピードで走り去っていく曹操とを夏候惇がぼやきながら追いかけて、
曹操の執務室には呆れ顔の司馬懿が一人残された。
「仕方がない、さっさと片付けるとするか。」
司馬懿は曹操が今まで座っていた椅子に座り、懐から取り出した例のマッサージ機の
スイッチを入れてから書簡に向き合った。
「殿、槍の刃は凪げるような型のものでござるか?」
「それともお前は突く方が得意か?」
「房をつけると、形が美しくなるぞ。」
口々にユズに己の好みの槍の美点を進める3人にはただ微笑んで答える。
「どんな形でも大丈夫なんで、じっくりと見て決めます。曹仁殿、いい店を紹介して
くださってありがとうございます。」
「いや、自分は当然のことをしたまで。」
「淵ちゃんも徐晃殿も、鍛錬の時間につきあってもらってちゃって・・」
ああ、この形の刃もいいな、と目だけは休みなく動かしながらは少し離れたと
ころで店の者に茶を勧められている付き添いの
3人に例を言う。
「気にすんな、お前の武器を見繕ってやるのは面白そうだったからな。」
「武人として殿がどのような武器を選ぶのか興味があったんで同伴できてうれ
しいでござるよ。」
「2人とも、本当にいい人だ。」
振り返って夏候淵と徐晃に笑ってから、はまた視線をやりの刃に向ける。真剣
に、そして楽しそうにモノを選ぶ姿は年頃の
若い娘にふさわしく生き生きとしている。
その姿を見ながら夏候淵はしみじみと口を開いた。
「こうしてっと、ちゃんと相応の娘に見えるんだけどな、」
「殿はあまり着飾ることがござらんからな。」
「宴会のときぐらいだろう?普段はいっつも惇兄とか俺のお下がりだぜ?」
「新しいのを買い与えないのか?妙才。」
曹仁が柄だけでも女らしくしてやってはどうだ?と夏候淵を見る。見られた夏候淵は
徐行と互いに顔を見合って乾いた笑みを浮かべた。
「前にそう思って俺と徐晃で見立てて一着贈ったらよ、似合わないからって思いっき
り引かれてよ・・・。」
「最終的には殿にあげるとになったんでござる。」
「でも、の奴が着ても可愛かったよな。」
「殿はやたらと可愛い色や服を嫌がられるからな。」
気の毒な・・・。思っても口に出さずに曹仁はを見る。どこか懐かしいの
着る服は今日も夏候惇が昔着ていたもので
ちら、と見るだけでは女に見えない容貌をしていた。その中で際立つのはが髪
を縛るのに使っている美しい青みを持った髪飾り。
「あの髪飾りは?」
「ああ、惇兄が買ってきてに与えたんだ。」
「かなり雅な物でござったな、そういえば。」
「ふむ・・・殿はもしや・・実用的なものなら受け取る性分なのでは?」
曹仁が自分に必要な身ものなら受け取ってくれると思うぞ、と提案した。
「殿が元譲の副官ならいずれ戦に出る。戦に入用なものなら、あるいは・・」
「さすが子考!」
夏候淵が膝を打っていい考えだ、と曹仁をたたえる。
「殿も、行く行くは戦場に立つのでござるな。拙者、少々心配でござる。」
「あいつが強いっつったってまだ18だもんな、駄目だ、俺も心配になってきた。」
「心配性だの、おぬしら」
「阿保、俺だって心配だ。」
「殿!?それに惇兄?!」
「ちゃんもいまーす」
いつの間にやら背後に現れた3人に夏候淵と徐晃が驚く。曹仁は曹操に気づいていた
のかすっと頭を下げた。
「孟徳様、元譲、それに?どうした?こんなところまで。」
「ちゃんが城下にいるって聞いたから孟徳様と惇ちゃんに連れて来てもらった
の。」
「また我侭言ったろ。」
「我侭言ったのは孟徳だ、心配するな。」
夏候惇が少し呆れつつを庇うとそう言う事です、とが笑う。
その様子にどういった経緯でこの面子が城下にくることになったのかが予想できたが
は敢えて何も言わずにじゃあ、ここでの
用事は終わったから、どこか食事でも採れるところへ移動しない?と言った。
「お、槍、決まったのか?」
「うん、明日の昼過ぎに城まで届けてくれるらしい。」
「金は城に請求しろ。」
「畏まりました。」
にこり、笑うの後ろで夏候惇がさっさと決済を済ませる。
「ご飯食べたらさ、小物屋さん行こう?」
「拙者が殿に似合う髪飾りでも選んで差し上げましょう。」
「ふふふ、徐晃ちゃん、ありがとうv」
「ずるいぞ、徐晃。、わしにも選ばせろ。」
「はーい、じゃあ淵ちゃんも選んで?」
「俺か?あんまり得意じゃねぇけど・・まいいか。」
口々に話しながら店を後にする武将たちを追ってと夏候惇もため息をついてか
ら後を追った。
拙話
次あたり魏以外登場?