学校歯科検診の限界

 この患者さんは、中学2年生なのですが、これまで学校歯科検診でチェックされたことがありませんでした。
どうも歯が痛いので来院してきたのです。

 一見経過観察するだけでよいと思われる初期の虫歯に見えます。

 ところが、治療椅子(デンタルチェアー)で、ライトで見てみると、虫歯があるなぁー、詰め物をしようと簡単に考えていたのですが、レントゲンを撮ってみてみてビックリしました。

 歯髄(いわゆる、歯の神経)近くまで虫歯が進行していました。

 たまたま小学校が違うので、私が検診してはいなかったのですが、もしかしたら見落としてしまっていたかもしれないと思うと、学校歯科検診の限界が思い知らされました。

 学校歯科検診は、1次スクリーニング検診であると考えています。学校歯科保険法では、診断と表現されているかもしれませんが。
 目の検査、内科の検査、結核の間接撮影、ツベルクリン検査、すべて学校で行われる集団検診は、1次スクリーニング検査であって、歯科検診も例外ではないと考えています。

 1次スクリーニング検査を、確定診断だと思い込むのは、児童にとって誠に不幸な結果になると思います。

 歯科医師と、PTAとの間に少なからず見解の相違があるかもしれません。

 歯科検診の現場を無視した、検診の複雑化と、事前アンケートの内容の信憑性と意義と、勧告書の複雑化とが事態の悪化に拍車をかけているように思います。

 歯科医師と保護者、学校と教育委員会、歯科医師と教育委員会のコミュニケーションに問題があるように思います。

 個人的に、神戸市歯科医師会の事前アンケートを作られた先生と電話ですが質問させていただいたこともあります。

 区の学校歯科委員会の理事の先生に質問したこともあります。

 しかし、どうも一方通行になってしまい埒が明きません。
 学校、PTA,歯科医師会、教育委員会、できれば、文部科学省も、すべてを一堂に集めて意見を交換しないと改善しないのではないかと個人的には考えています。