広報四方山話 その14

A委員「EBM(evidence based medicine)実証に基づく医療が主流になってきたといわれています。」

B委員「年金問題でフラフラ状態以前の厚生労働省、つまり元気の良かった頃、診療報酬はEBMに基づかないと受け付けないとまで言い切っていた記憶があります。」

A委員「ちくま新書 医学は科学ではない 米山公啓著の中に、

すべてをEBMで判断するのは『最良の証拠』が必要ですが、医療の世界ではきわめて限局されてしまいます。また、個人の特性や価値判断に治療が左右されます。と、書かれています。」

B委員「そもそも科学は再現性がなければ成り立ちませんもの。」

A委員「この本では、生物学者のE・Oウィルソンの『科学の定義』の引用があって、

@実験を再現し、検証することが出来る。
A  それによって、以前より万物の予測が立つようになる。

以上の条件を満たさなければいけないとしています。

B委員「そうなると、宗教、似非科学などは問題外ですね。」

A委員「『腕のいい医者が存在することが科学ではないことの証明』と言い切っています。」

B委員「手術ともなると、技術、経験がものをいいますよね。誰が行っても同じ結果にはならないです。特に難症例は。」

A委員「歯科医学も同じようなことがいえますね。口腔外科の先生は難生埋伏智歯を上手に抜きますものそれとは別に、

『科学の進歩でよりよい歯科材料が出てきたら歯科技術は飛躍的によくなる』ということはいえます

100年前にマレットでゴールド充填していた時と比べれば現在の方がよいのでは。歯科医学が科学の恩恵を蒙っているということで、歯科医学は純粋な科学ではないといえます。科学を応用しているということですね。」

B委員「人体という自然を相手にしているので問題点が多い。」

A委員「病気を早期発見すれば、医療費は全体に減少し無駄な医療費は減少する。」

B委員「その通りだと思います。」

A委員「前出の『医学は科学ではない』に乗っていますが、パラドックスがあるのです。」

B委員「どんな?」

A委員「高齢者が増えれば、生産人口が減り、慢性病患者が増加し結局医療費が増える。」

B委員「数年単位ではその人自身の医療費は減るが、国民全体では医療費は増加するということですね」

A委員「仮にぎりぎりまで元気に労働できると仮定するなら早期発見早期治療を目的とする健康診断は意味があるのですが。」

B委員「暴飲暴食喫煙夜更かしを続けて90歳以上生きる人もあれば、健康的な規則正しい生活をしているのに早世してしまう人もいます。」

A委員「早期発見早期治療で元気に長生きという図式は必ずしも正しくはなく、遺伝的要因も相まって純粋に科学的な理論が成り立ちません。一部分では成り立つのですが。」

B委員「例えば?」

A委員「薬がそうです。万人に効果がある薬はありません。70%か80%の効果があれば良薬といえるのではないでしょうか。大人に効いても小児には禁忌とかも有るし。」

B委員「プラシーボ効果というのも有るし。」

A委員「暗示療法を本気で歯科診療に取り入れている先生もいるようですが。」

B委員「方法はいざ知らず、症状が軽快するのなら大目に見るのが大人の態度では。」

A委員「『医学は科学ではない』の中に、ロバート・L・バークによると、『代替医療は医学ではなく、文化と捉えたほうがよく、それは科学的な立証を厳しく要求されない文化である。』という引用があります。所詮医学が科学であるというのは作り上げた幻想でそれを信じていることで治療効果が期待されているという主張がなされていました。」

B委員「医療の限界を真摯に受け止めて、代替医療も時にはやむなしとするのはいいかもしれませんが、本気で代替医療を信じきっているのは主客転倒ですよね。」