広報四方山話 その7

A委員「エントロピー増大の法則というのがあります。」

B委員「え?!唐突になんですか?」

A委員「すべての事物は、『それを自然のままにほっておくと、そのエントロピーは常に増大し続け、外から故意に仕事を加えてやらない限り、そのエントロピーを減らことはできない』という法則です。」

B委員「その、エントロピーって?」

A委員「エントロピーは、『無秩序な状態の度合い』を数値で表すもので、無秩序な状態ほどエントロピーは高く(数値が大きく)、整然として秩序の保たれている状態ほどエントロピーは低い(数値が小さい)のです。」

B委員「遠い昔に学校で習ったような習わなかったような。」

A委員「似非科学によく利用されます。」

B委員「誰かを騙す心算ですか?」

A委員「滅相もない、一つの考え方として興味があったので。」

B委員「と言うと?」

A委員「例えば、永久歯が萌出して咬合が完成した時、エントロピーが低い状態と言えます。それが、虫歯になったり、抜歯されたりしてしまうと、どんどんエントロピーが増大していると言えます。」

B委員「歯がなくなったりすると、廷出、傾斜が起こり歯並びも悪くなると、エントロピーが増加していると?」

A委員「ところが、虫歯を充填したり、クラウンを装着したり、ブリッジ、義歯で咬合を回復すると言うことはエントロピーが減少していると言えませんか?」

B委員「法則に逆行していますね。」

A委員「実は、閉鎖系で無ければこの法則は成り立たないのです。」

B委員「閉鎖系?」

A委員「エネルギーの出入りが有ると成り立たないのです。口腔内だけで考えると見た目エントロピーが減少しています。と言うことは、歯科治療しているだけでは話が収まらず、地球規模の世界観が必要になってきます。」

B委員「歯科医師が一生懸命咬合を回復しようとしているのは立派なことではないのでしょうか?」

A委員「インレー、クラウンを製作したり、金属を加工するのにどうしてもエネルギーを使います。金属を作り出すのにも精製するのにも大きなエネルギーが必要です。地球資源を掘り起こして使用しています。環境を悪化させているわけです。実はエントロピーは知らず知らず増加しています。」

B委員「患者さんのQOLの維持には仕方ないのでは?」

A委員「人間生きていくのには、どうしてもエネルギーも消費するし、なんと言っても他の命を消費しないと生きていけません。」

B委員「植物や動物を食べていかないと餓死しますね。」

A委員「疼痛も治まって、とりあえず補綴処置も歯周処置も終わって、後はメインテナンス、これで今回は終了と言う時まあ、患者さんは気を遣ってか感謝してくれます。」

B委員「しかも、負担金を払って頂いて。」

A委員「誰が偉いのかと言えば、何とか耐え抜いた歯や歯周組織、或いは顎提。それと、置き換えられた金属やレジンや陶材。強いて言えば加工に寄与した技工士さんを始め、多数の関係者。」

B委員「歯科医師は?」

A委員「まあ、白衣も着ているし、それなりに偉いと言うことではないでしょうか。」

B委員「謙虚ですねぇ。」

A委員「我々みんな、地球に寄生しながら生かされていると言うことです。他の命に生かされている。出来るだけ環境を悪化させず、エントロピーの増加を防ぐような生き方を模索しましょう。」

B委員「やっぱり、怪しい新興宗教の教祖みたいになっていませんか?」

A委員「小人間居して不善を為す。人間暇をもてあますと色々なことを考えるものです。」

B委員「貧乏暇なしが精神衛生上良いということですね。」

A委員「人類は、活動しないのが環境にやさしいということです。自動車に乗っても、飛行に乗ってもガソリンを消費します。ペットボトルのお茶を買っても、ペットボトルはもともと石油。」

B委員「いまさら原始時代の生活には戻れませんよ。」

A委員「まあね。石油がなくなったら人類はいまほど活動できなくなります。おそらく地球温暖化も解決するし。江戸時代ぐらいまで戻れるのでは。」

B委員「歯科医業は?」

A委員「江戸時代、仏師が副業で入れ歯師を生業としていました。技工士さんのほうが入れ歯師に向いているかも。仕方ないから前世でも占って生きていきましょうか。」

B委員「結局、胡散臭い宗教家になってる。」