広報四方山話

A委員「厚生労働省が8月末に、2004年度の「国民医療費」が史上最高の32兆1000億円になったと発表しました。」

B委員「でも、この年の日本の医療水準(国内総生産GDPに対する医療費の割合)は主要先進7カ国中最下位になっていますよ。」

A委員「イギリスに抜かれちゃいました。ブレア政権はこの数年、医療費増加政策を推し進めていましたから。」

B委員「小泉政権は、同じ時期に何したのかというと、

1               健康保険本人の3割負担化

2               高齢患者の1割負担化と「一定以上の所得者」の2割負担化。」

A委員「小泉政権の5年間の医療改革で医療水準は主要先進国中最低で患者負担は最高になってしまった。」

B委員「最悪です。しかも困った置き土産もありますね。」

A委員「健康保険法改正、老人保健法改正、医療法改正、介護保険法改正。」

B委員「以前、新聞の医療問題の特集記事を読んでいたら、日本福祉大学の二木 立教授が、『生活習慣病対策による医療費抑制効果を学問的に証明した研究は世界的にも存在しない。』と、説明されていたけれど、世界でも稀な大胆不敵な政策を行おうとしているわけですね。」

A委員「一歩間違うと、大怪我しそう。その特集記事で、『医療難民』『介護難民』が大量発生すると二木教授は予想してましたよ。」

B委員「日本は先進国の中で、対GDP医療費が極めて低い。それでも世界一の健康長寿国を実現できたのはどうしてなのでしょうか?」

A委員「これも、孫引きで恐縮ですが、少ない医師がアメリカ人医師の5人分働いてきたからだと、諏訪中央病院名誉院長で、作家の鎌田 實先生が解説していました。」

B委員「世界保健機構(WHO)が、日本の医療は世界一良質な医療といってくれているのは、国民皆保険制度による「格差」のない医療の実現を評価しているからでしょう。」

A委員「保険診療と自由診療を一緒に行う混合診療や株式会社の医療参入論などが取質されていますが、国民皆保険制度を根本から変えるのは無謀でしょう。」

B委員「国民皆保険が崩れたら、保険会社の個人向け医療任意保険が持て囃されて、総合規制改革会議の議長の会社を始め、保険業者は大もうけできそうですね。」

A委員「世の中、企業の論理で動くとコストは削減できてより良いサービスが受けられると単純に思っている人が総理大臣ですもの。日本の医療は破綻、崩壊の瀬戸際になってしまうのも頷けます。」

B委員「ダム、新幹線、核燃料サイクル施設、公共事業ではそれぞれ多額のお金が動きますが、それらの見直しを棚上げにして医療改革が先行し、国民に負担を押し付け、老齢者の悲痛な叫びを無視するのはどうかと思う。」

A委員「老後に大病しても安心な国なら、1400兆円以上の個人金融資産を持つ国民は自分の人生を豊かにするためにお金を使い出し日本経済は良くなると思うけど。」

B委員「医療が充実すれば、医療関連の仕事が増えて失業対策にもなるし、医療の質がさらに高まるし、経済効果は計り知れないと考えられませんか?」

A委員「神戸市歯科医師会も助手学院の休校という苦渋の決断をしましたが、すでに悪循環に陥っていると判断できますね。」

B委員「歯科医療に限らず、医療の現場が荒廃するとどうなるか。アメリカのように市場原理に医療を任すことになるとどうなるのか。

アメリカでは自己破産の原因の第2位が医療保険の負債です。医療保険に入れない人が4000万人います。」

A委員「医療に関しては、アメリカを見習わないことが大切ではないでしょうか。」

A委員「ちょっと新鮮味にかけますが、総合規制改革会議と歯科医師会についてなんですが、いわゆる規制緩和推進としての小泉政権の目玉の一つですよね。
 議長には、宮内義彦オリックス株式会社代表取締役会長兼グループCEO
 立派な肩書きの議長代理、委員の面々が名を連ねていますが、「聖域なき改革」を旗頭に改革に邁進しているかと思いきや、個人的にはそうかなあ?と思います。」

B委員「と言いますと?」
A
委員「平成13年9月17日(月)午後2時05分から同3時00分、虎ノ門代23森ビル5階で行われた、総合規制改革会議医療WGヒアリングでの内容ですが、日本歯科医師会の代表数名が、
(1)医療に関する徹底的な情報開示とIT化の推進
(2)診療報酬体系の見直し
(3)保険者機能の強化
(4)医療分野における競争原理の導入と効率化その他の説明を行ないました。」
B
委員「まあ当時としての問題点としては妥当な内容ですね」

A委員「ところが、専門委員のK氏が高圧的に厳しい態度で、
歯科医師会の意見は、前近代的な考え方であり、21世紀の考えに変えるべきだ。
歯科に於ける病・診連携はどうなっているのか。
第三者の評価機構はあるのか
質の評価はどのようにするのか
いずれも歯科医師会は体制ができているのか意見交換の場とはいえない険悪なムードになったのでした。

B委員「その高圧的な根拠は、なんだったのですか?」
A
委員「『自分(K氏)の孫が2週間ごとに矯正歯科にかかっているが、虫歯が5本できた。素人でもわかる虫歯なので、それを尋ねたところ、矯正歯科医に、虫歯は見ていないといわれた。』ということでした。
 歯科医師会の代表が、『それが事実なら遺憾なことですが、その矯正歯科医は非会員の可能性もあり、生涯研修制度の実施も知らない可能性もあるのでは』と尋ねたとろ、K氏は『その先生はアメリカにも行って勉強している。』といい、『アメリカが優れているとは思えないが?』『そんなことは言ってはいない。』などと総合規制改革会議医療ヒヤリングからかけ離れた議論になってしまった。」                                              
B
委員「その後も噴飯ものの議論がなされたのだが、結局時間切れで、議論半ばで終了となったわけですね。」
A
委員「結局厚生労働省の聞き置くだけの、セレモニーとなったとのことであったらしい。
 聖域なき改革というのは、聞こえが良いがよっぽどの聖人君主か、公正無私で決して権力側に偏らず尚且つ将来を見通せる賢人でないと実行できないのではないだろうか。」

B委員「この内容はどこで仕入れていたのですか?」

A委員「数年前の、兵庫県歯科医師会広報モニター会の特別講演で、会議に出席された歯科医師会の代表の先生直接に聞きました。」

B委員「厚生労働省は、完全に歯科医師を見下していますね。」

A委員「その後、八方塞になって、この日本歯科医師会代表者達は例の政治献金問題の中心人物になってしまいました。」

B委員「相当追い詰められていったのでしょうか。勇み足といえばそれまでですが、焦る気持ちも分からないわけではありませんね。」

A委員「その他にも、新聞からの抜粋ですが、『96〜02年度までの国民医療費について、計算方法の誤りで668億〜2428億円多い額を発表していたことを明らかにした。03年度分の発表に合わせて訂正し、担当者ら9人に厳重注意などの処分を行った。(2005年8月23日19時51分  読売新聞)』という記事を見つけました」

B委員「国家公務員は頭いいのか悪いのか。計算方法の誤り?頭悪い証拠か?」

A委員「違います。狡賢いのです。国民医療費の抑制方針を煽るために確信犯的にデーターを換えていた疑いが強いと思います。」
B
委員「そんな過激な発言ばかりしていたら厚生労働省に目をつけられますよ。」

A委員「負け犬の遠吠えとして無視してくれませんか?」

B委員「歯科医師は結局泣き寝入りしかないの?」

A委員「厚生労働省等、行政に対抗する方法はいくつかあるでしょうが、どうしても欠かせない条件がひとつあります。」

B委員「というと?」

A委員「職域代表の国会議員さんを擁立することです。」

B委員「一般に民主国家では多数決の原則で医療政策・制度が決められていきます。数の上で極めて少数派である歯科関係者の生活や権利を主張するには政治献金等に頼らざるを得ず、少なくともパイプ役なり事前の情報を流してもらうには職域代表は必要不可欠ということですね。」

A委員「医療問題は直接国民に影響が出るので、場合によっては超党派で問題に対応しなければいけないことも有り、その場に歯科医師会の代表がいないとどんどん取り残されてしまいます。」

B委員「そうなると、与党、野党を問わず恥も外聞も投げ捨てて協力してくれる議員さんならすべてに親密な関係を作り上げることも必要になるのでは?」

A委員「そこまで行くと混沌としてよく分からなくなります。判断の付けにくい微妙で難しい舵取りを地方区歯科医師会や神戸市歯科医師会、兵庫県歯科医師会、日本歯科医師会が迫られているのも事実です。しかも早急に。」

B委員「4月に行われた診療報酬改定でも腑に落ちない内容が目に付きます。」

     A委員「平成18年度診療報酬改定の基本方針で、患者の生活の質(QOL)を高める医療を提供していく生活習慣等の重症化予防を促進するための方策について検討すべきと、明記しているにもかかわらず、改定では、患者の実効性のある細やかな情報提供を促進する観点から、かかりつけ歯科初診療料及びかかりつけ歯科再診料について廃止する方向で検討する。

となっていて、結論が逆ではないか。」

B委員「患者の実効性のある細やかな情報提供を促進する観点から、かかりつけ歯科初診療料及びかかりつけ歯科再診料についてさらに普及充実させると言う方が筋が通っています。」

A委員「補綴物維持管理料の普及、定着状況を踏まえ、その評価を下げる方向で検討する

と、なっていますが、『補綴物維持管理料の普及、定着』こそ『質の高い医療を効率的に提供する医療供給体制の構築』に貢献したのであって、評価を引き上げることが、『患者の生活の質(QOL)を高める医療を提供していく生活習慣等の重症化予防を促進するための方策』に繋がるのではないでしょうか。」

B委員「限られた医療費を無尽蔵に使うわけには行かず、如何に効率よく医療費の分配をしていくかが重要です。手当たり次第に削減するというのでは結局『患者の生活の質(QOL)を高める医療を提供していく生活習慣等の重症化予防を促進するための方策』として、バランスが取れた改定とはいえず、『平成18年度診療報酬改定の基本方針』に逆行した『平成18年度診療報酬改定の内容』となっているのではないでしょうか。」

A委員「その結果が、患者さんに説明したことをカルテに書き、患者さんの文書で渡し尚且つ控えを保存する。どれだけ紙資源を浪費させれば気が済むのでしょう。」

B委員「環境庁もいくらなんでもおかしいとクレームを付け無かったのでしょうか。」    A委員「無駄な書類作成で診療時間を潰し診療時間を削ると言う意図があると思います。」
 厚生労働省はEBMの重視、つまり科学的根拠のないものは駄目と明言しています。厚生労働省のEBMは、日本歯科医学会が調査した報告書から結論つけています。
 民主党の櫻井議員が国会で厚生労働省相手に質問している中から要約します。

二重三重に意図的な情報操作を厚生労働省がしていました。厚生労働省の得意技ですが。
 @日本歯科医学会のタイムスタディー調査は、かかりつけ初診に関する調査で、厚生労働省がEBMにしようとしている、文章による情報提供の必要性の是非ではない。
 つまり、似て非なるものの調査を無理やりこじつけてEBMにしようとした。つまり、純粋な意味での文書による説明ではなく模式図等を用いた説明を意味するかもしれない。
 A平成172月に行われた調査だが、文書による説明を受けた患者が解かりやすかった、非常に解かりやすかった、そうでもなかったと、アンケートの設問があるが、医療専門用語が解かりやすかったのか、治療内容がわかりやすかったのか、漠然として意味を成さない。
 B文書による説明を受けた患者さんが、解かりやすかった44,5% そうでもなかった26.4%と厚生労働省は数値を出して証明しようとしたが、ここで悪意に満ちた情報操作を行った。
 このアンケートには、無回答が17.3%あるのです。これを『よく分からなかった』の方に加えているのです。この無回答を除くと統計学的優位さがなくなるのです。
B
委員「正に、懲罰改定ありきで、理由はこじつけということですか。」
A
委員「厚生労働省は、国民の信頼を回復してくださいとあからさまに言いますが、歯科医師に対する信頼が地に落ちていますか?橋本竜太郎に1億円賄賂を贈った?政治献金をして、橋本竜太郎側が領収書を出したくなかっただけです。
 当時の日本歯科医師会会長が私服を肥やしたのが致命的かもしれませんが、全国の歯科医師が懲罰を受ける理由にはなりません。」
B
委員「立ち向かうか、降参するか。歯科医師は2分化してきています。年配の先生はギブアップしかけています。開業して3年目に約30%の新規歯科医院が経営的危機、閉鎖の憂き目にあっています。今こそ歯科医師会のリーダーシップに期待したいと思います。」