ひとりでは生きていけない       歯科医療だけでなく、社会を構成している上で、誰一人として自力で生きていくことは出来ません。山奥で、自給自足で生きている人もいるかもしれませんが、その人も病気になれば他の人に助けを求めることになるかもしれません
 歯科医療でも、歯科医師だけでは診療が成り立ちません。衛生士、助手、受付、技工士だけでなく電気、水、材料、ありとあらゆる業種に支えられています。
 話がぼやけると困りますので、分かりやすくする上で地域医療の中での歯科医師、歯科医療、歯科診療の責任者としての歯科医師について考えます。
 地域医療の担い手としての歯科医師も一人では成り立ちません。例えば近隣に唯1軒しか歯科診療所がない場合、とてもじゃないが診療し切れません。
 需要と供給と言うこともありますが、現在歯科医院は急増しています。患者さんは歯科医院を選べる時代になっています。経営が成り立たなければ元も子もありません。
 だからといって、歯科医療の問題点、歪に身をすり減らしている歯科医師会の先生方の苦労に眼をそむけ無視するかのごとく歯科医師会に未入会で開院する先生、或いは入会はしているものの会務に参加しない先生が増加するのもおかしな話です。
 隣同士で開院するのも、同じ建物で開院するのも禁止されていませんし、違法なことさえしなければ保健所や厚生労働省の許可さえ下りるわけですし、何の問題もありません。
 しかし、歯科医院を開業するとどうしても、地方区の歯科医師会との係わりが生じてきます。現在の歯科医療の体系が一朝一夕で出来たわけではなく、紆余曲折を経て先輩歯科医師が好むと好まざるとに関わらず苦労に苦労を重ねて出来上がってきたものであって、その無形の財産に頼って診療するわけなので、われ関せずという態度は卑怯ともいえます。
 
 落語家の桂 ざこば師匠がトーク番組で、ざこば師匠の師匠、人間国宝の桂 米朝師匠に注意された話をしていました。
 酒の席で、「師匠、落語家が私一人だったらおおもうけできるのにとおもいますわぁ。」といったところ米朝師匠はやんわりと「落語家一人になった時点で落語会はなりたちませんなぁ。色んな落語家がいるから成り立っていくのですわ。」
 
 どこの世界でも同じようなものです。特に歯科医師は医師にも下に見られて、香具師(やし〔「野士」の意という〕〔縁日などに〕道ばたで手品居合抜き・こま回しなどをして見せた後、安い歯磨などの薬や香具類を売りつける人。テキ屋。)に例えられることもあり、社会的地位向上にも四苦八苦しています。
 地域医療に貢献するためにはどうしても行政との折衝が重要になってきますし、個人で交渉など出来ません。バカにされるだけです。
 現在、歯科医会全体に対して行政やマスコミのバッシングがきつい時代。
 お役人は、体質においてお役所仕事でしか物事を判断できないみたい。
 診療した内容を「お知らせ」として文章にしてしかも控えを取って保存しなければいけないし、場合によっては患者さんのサインも必要になってきます。
 住民票を取っているわけではないのに。役所では文書と言うのは相当な威力を発揮します。まず責任の所在がはっきりしますし、役人に対しての責任が軽減されます。だって、証拠ともいえるものが文書ですもの。
 学校の先生や保護者が「勉強しなさい。」と言って、子供が勉強してみんながみんな知識を吸収したら秀才だらけになっています。コーチや監督が松井秀樹、イチロー通りの練習をさせたら、選手が全てを理解してみんながみんな大リーガーになれるでしょうか。
 「教える」と「解かる」とは違います。当たり前の話。
 医療現場でも、医師と患者さんのコミュニケーションでも同じようなことがあります。文書にして渡すと理解できるっていえますか?
 以前かかりつけ初診と言うのがありましたが、パネル、口腔写真を利用して理解を深めると言う制度でしたが、なくなりました。政治献金問題の見返りとかいうことで。
 その代わりに、診療行為の文書の提出。パネル、口腔写真を利用して説明も必要ですが、歯科診療ということに関して足枷になる制度の導入。その導入も以前にも書きましたが、
@日本歯科医学会のタイムスタディー調査は、かかりつけ初診に関する調査で、厚生労働省がEBMにしようとしている、文章による情報提供の必要性の是非ではない。
 つまり、似て非なるものの調査を無理やりこじつけてEBMにしようとした。つまり、純粋な意味での文書による説明ではなく模式図等を用いた説明を意味するかもしれない。

 A平成17年2月に行われた調査だが、文書による説明を受けた患者が解かりやすかった、非常に解かりやすかった、そうでもなかったと、アンケートの設問があるが、医療専門用語が解かりやすかったのか、治療内容がわかりやすかったのか、漠然として意味を成さない。

 B文書による説明を受けた患者さんが、解かりやすかった44,5% そうでもなかった26.4%と厚生労働省は数値を出して証明しようとしたが、ここで悪意に満ちた情報操作を行った。
 このアンケートには、無回答が17.3%あるが、これをよく分からなかった方に加えている。この無回答を除くと統計学的優位さがなくなるの。
 厚生労働省のやりたい放題。これに物申すには歯科医師会しかありません。
 10数年間に渡る不当政策「薬価差益」で医科と歯科の格差は広がり、開業医の代表ではなく大学の代表が歯科医師会の職域代表として、元歯科医師会会長中原爽議員が自分の役目を果たさなかったために歯科医には経済的にも心理的にもズタズタ。