平成18年歯科診療報酬改定が実施され、歯科医師は右往左往の毎日。
歯科診療点数は1%弱の減だが、診療報酬体系が大きく変わったが為、概ね10%から20%の減だといえます。
全てに、悪意が見え隠れします。
今まで患者さんと歯科医師とのあいだに築かれていた信頼関係が、崩されようとしています。治療によっては、治療行為を了承してもらう為に患者さんの署名が必要な場合がでてきます。
歯科治療の来られた患者さんに、歯科治療を行うのにわざわざ断りの署名をもらって場合によっては診療負担金が増える。
色々な情報提供の書類も渡さなくてはいけません。患者さんに治療状況として資料を渡すのは問題ないと思いますが、その写しをカルテに保存して、口腔内写真もプリントアウトしてカルテに添付。
厚生労働省は、レセプトの簡素化、電子化を目指していたのではないのか。尋常な状態ではないぐらいのカルテのボリュウムになります。
経費がかかるようになるのは仕方ないとしても、これほどの紙資源の無駄遣いは納得できません。デジタル化した情報をわざわざ紙にプリントアウトして保存する。それも、多量の紙資源等を使って。
患者さんに渡した資料も、デジカメに撮るかスキャナーで取り込み保存するだけでも無駄使いがなくなるし、口腔内写真なんかは液晶で見るのが一番理にかなっている。
限りある資源の無駄使いの極み。環境省は文句を言わないのか。グリーンピースはこんな時に暴れて欲しい。
患者さんに説明したことをそのまま紙に書いて渡す。渡すことと理解してもらうこととは違うはずだが、役人は同じと考えるわけです。
一般には、「法律は文章である」といえます。診療報酬請求の仕方も文章で通達されます。文章が日常生活の行動を正確に記述できるわけはありません。同じように、実際に行う歯科診療が文章によって正確に記述できるものではありません。
法律はどのように解釈するかで有効に生きもするし死にもします。違反の境界はクリアーではなく社会全体が共有している規範のようなもの、社会通念が決めると言えます。基本的に悪意を含んだ解釈にすると社会生活が成り立ちません。
今回の改正は悪意が満ち溢れています。歯科診療の足枷になる、患者さんの署名、多量の配布書類、その配布書類の保存、診療の内容の制限、数えれば限がありません。
歯を保存できるか、抜歯すべきかは、検査しないと分かりません。ところが基本検査する時、抜歯予定の歯は検査してはいけないことになっています。
抜歯するかどうかは見れば分かるからと言うのが理由らしいです。
判る訳無いのに。検査しないと。
その反面、歯茎の治療の一環として歯磨き指導などの指導管理をするのは、検査しないとしてはいけないことになっています。
それなら、抜歯の可能性のある歯も含めて検査して、指導管理の後治療方針が確立するはずなのに、何の根拠も無く上記のようになっています。
これほど現場を知らない役人が、机上で考えただけの法律を押し付けられては対応の方法がありません。患者さんとの信頼関係は崩れるし、制限治療は強いられるし、資源の無駄使いに加担されるし。
10歯以上の歯を調整した時の診療報酬の点数がありますが、10歯以上の歯を削るなんて考えられません。ほとんどありえない場合の処置に点数が振り分けられて算定しなかったら将来切り捨てられるかも。
今まで、1歯か2歯の調整だったらそれに対する治療報酬が発生してたのに。
10歯以内の歯の調整にも点数がありますが、歯の調整と言っても、歯の形が悪い場合も削って調節するし、噛み合わせがおかしくても調節するし、歯の位置が悪くても調節します。それら全てひっくるめて1度だけ調節することしか許されません。
遵法意識が高いのが日本人の性質ですが、世界でも珍しいぐらいの遵法主義だと言われています。基本的に善意の法律に対してなら問題はないのですが、これほど悪意に満ちたものに対して遵法意識は働きにくくなっています。
歯科医療の崩壊の次に来るのは、医療の崩壊です。医師会は自民党と歩み寄る方針で乗り切ろうとしているようですが、歯科医師会はどうするつもりなのでしょう。