2005神戸臨床小児歯科研究会 例会 平成17年11月20日(日)午後1時 予防と口腔管理
フッ素について 落合 靖一
1.フッ素はなぜ効くか A エナメル質の水酸化アパタイトをフッ化アパタイトに変える⇒脱灰しにくい
B 細菌の酵素系に働いてその活動を抑制する。
元々フッ素が虫歯予防に効くというのは経験的な事柄が元で、高濃度のフッ素を含む飲料水(1.0ppm以上)を飲んでいる地域で虫歯が少ない事実から注目され、日本でも京都の山科で1952年から1965年まで大規模な研究がなされ実証されている。
ところが、フッ素はいおよび小腸上部から速やかに吸収され全身に分布し、歯や骨に沈着する。大量服用すると中毒を起こす。急性中毒、慢性中毒が考えられるが、抗生物質など薬と同様、多すぎると毒になり適量なら有用に働く。
抗生物質等と同様、使用方法さえ間違わなければ有用な物質と言える。
虫歯予防の応用
@充分な歯面清掃 A充分な防湿感想 B薬液を塗布 C塗布後唾液をだす うがいはしない。
となっているが、若い歯ほど効果が高い。
考えようによっては、フッ素でエナメル質を破壊?しているともいえる。ところが虫歯にならない構造に破壊?しているので、改造とも表現できる。
ここで重要なのは、平滑面に対して虫歯予防能力があると言うことである。歯のかみ合わせの溝から起こる虫歯や、歯茎の境から起こる虫歯には効果がない。
虫歯の3大好発部位と起因菌
平滑面:ストレプトコッカスミュータンス
咬合面:ラクトバチルス アチドフィルス
歯頚部:オドントマイセス バチルス
ストレプとコッカスミュータンスに効果があると言うわけです。
ここまでは復習
近頃、水道水のフッ素添加の試みが取り立たされてきている。30年以上前にも水道水のフッ素添加の試みがあったが、実現しなかった。その反対意見は、
1.集団投薬は社会科診療ではないか
(水道水には既に予防処置として塩素が添加されているのに、フッ素はだめと言うのはおかしな話。食卓塩にもヨードを添加しているのも予防処置として認められているのに。フッ素は虫歯の治療薬ではないので社会科診療と言うこと自体言いがかりと言える。)
2.フッ素は原型毒である
(高濃度なら有害であるが、0.6ppmと言う濃度はきわめて微量。塩素も濃縮すれば毒だし。薬は全て大量なら毒に作用するし。)
3.水道水は何かを運ぶコンベアーではない
4.宗教的な立場から天然の自然物(水)に人工的なもの(薬剤など)を入れたくない。
(天然物は安全と言うのは誤解。ふぐ毒のテトロドトキシンを例に挙げるまでも泣く、植物アルカロイド、毒キノコなど)
5.末端家庭で水道料金が一律値上げされる。
(虫歯にかかって治療する方がはるかに費用がかかるが、子供のいない家庭、歯のない老人の家庭には恩恵がない)
どれも、言いがかりの理由です。宗教が絡むと何も出来ません。果たして今回はどうなるでしょうか?