垂水区歯科医師会学術講演 平成17年8月6日(土)午後3時から舞子ビラにて、日本歯科医師会常務理事のT先生を迎え、演題「医療保険を取り巻く問題について」講演をお願いした。
歯科という小さな社会で考えると歯科医界の現状を見誤る事になる。
平成16年の一般歳出のうち社会保障(医療費8兆円、年金5.8兆円、介護1.7兆円福祉4兆円)は40%を超える。財務省が削減を考えているのは医療費8兆円を削減しようとしている。国会議員や財務省が決定するものである。
医者いじめは国民感情として受け入れられるという考えである。
ターゲットは医療費。社会保障医療費は高騰しているが、国の負担は三分の1程度だが、資料としてデーターを出すと全ての合計で表し、社会医療費高騰が異常に大きく感じられるように操作し諸悪の根源のように輿論操作している。
国民負担率の推移のデーターでも財務省は見通しのデーターを掲載して平成14年で、国民負担率38.3%として、潜在的な国民負担率を46.9%と計算して、橋本内閣の政策で国民負担率を50%以内に抑えないと財政が破綻するという危機感を煽って医療費抑制を推し進めようとしていた。
しかし実際の国民負担率は35,5%であったので、医療費の高騰が社会保障負担や財政を圧迫していくという財務省の主張は間違っていた。
潜在的国民負担率を50%に抑える必要があり、2025年の潜在的国民負担率(社会保険料と税金、財政赤字の合計金額を国民所得で割った数字)は56%となり、簡単に言うと、年収1000万円の人は560万円が負担として消えるということであるが、数字はどうとでも変えられる。
予想通りの結果になるとしても、国債など借金は多方面で消費している。道路公団、公共事業など。それなのにそのしわ寄せを社会保障でまかなおうとすること自体おかしい。社会保障が高騰を続け財政を圧迫しているというのなら分かるが、上記のように厚生労働省、財務省の嘘のデーターを基本としているのは間違っている。
大企業は別にして、30%の企業は法人税を払っていません。土地購入とか、上手に資産管理をしているから。
ところが企業も潜在的国民負担率を50%に抑える必要があり、医療費抑制を推し進めようとしている。
企業の社員に対する社会保障費が高騰すると利益が出なくなり国際競争に勝てないからである。じっさいGMモータースが社員の雇用保険や社会保障費の高騰を販売価格に上乗せすると売り上げが落ちるという悪循環が起こった。
御用企業の代表が作っている、経済財政諮問会議(小泉前首相)財政制度等審議会(財務大臣)産業構造審議会などは、自分たちの利益が出るような政策を実現するように操作しています。
以前にも書きましたが、経済財政諮問会議の議長オリックス会長は、混合診療実現で自社の任意保険で大儲けできます。
赤字財政を社会保障費の抑制のための指標として使用すること自体が完全に間違っているのに。
潜在的国民負担率は経済や福祉の構造に即したものではなく政策の基準になり得ないにもかかわらず基準とするのは大企業の懐を肥やす結果になる。
大企業を優遇して国際競争に負けないようにして税収を増やしツケを国民全体に負担させて官僚、政治家を守ろうとしているとしか思えません。
需要側の立場に立って、社会保障が家系に還元されることを通じて消費需要を喚起しこれが経済成長に対してポジティブに影響するという説もあるのに。
垂水区歯科医師会学術講演 その2
医科は花粉症の時期、流感の時期に、医療費の自然増があり、抑制しようにも抑制できない。その点、歯科に自然増は皆無に等しい。
医療費31兆円の内訳は病院51%、無床診療所24%、薬局12.7%、歯科8.3%で、歯科について、医療抑制は関係ないのである。厚生労働省や、財務省は歯科は眼中にない
国民医療費の増加を見ても、平成元年から平成14年は19兆円から31兆円1,8倍だが、歯科は1.9兆円から2.5兆円で、ほとんど変わらず。
医療費削減のターゲットは病院となっている。
新医療費(脳ドック、人間ドック、自費診療等)6兆円を企業が狙っている。
企業は21世紀の最大の成長産業は医療であると考えている。オリックスなどは民間保険で大儲けを企てている。また、企業は病院に参入して儲けたいのである。経済財政諮問会議、財政制度審議会にあたかも国民の代表というような顔をしてその裏で財務省などと癒着しているのである。企業エゴといえる。
事業主の保険料は減少している。それはリストラで蛸の足切をしているのである。
混合診療導入の陰には公的支出の抑制がある。
政府の諮問機関:経済諮問会議、総合規制改革会議
厚生労働大臣の諮問会議:中央保険医療協議会、社会保障審議会
診療点数が中央保険医療協議会、社会保障審議会で決定されるが、医科主導なので歯科はないがしろにされている。
診療報酬対策委員会を日歯執行部の中に作ってもらうことになった。厚生労働省が委員個人に対して要請が出てきても組織で対抗するようにして対策を練れるようになった。
閣議決定された内容を実現させる機関が中央保険医療協議会、社会保障審議会であって、団塊の世代が65歳以上になる平成20年に向けて65歳以上一部負担金3割などの制度の充実、完成を目指している。
診療報酬改定の考え方
厚生労働省の役人は「先生方のエゴでは一銭もあげません」と断言している。なんとなく意味は分かるが、あまりにも見下した考え方を歯科に対してされている。
そこで重要なのが、
1.患者国民のため
2.EBM:科学的根拠のないものは駄目
3.費用対効果:点数をアップした項目が患者国民に対してどういうメリットがあるのか。
4.診療改定後の効果:全体の医療費がどうやって下がるのか。
医師会では40年前から学会の中に上記の4項目に付いて検討する機関があるが、歯科はこの度初めてやっと「歯科医療協議会」を作り、2回会合が開かれただけという状況。
その会議で、学会の教授は、「診療報酬に口出すことは、政治に口出すことではないのか」との認識の低さで、医科の現状を説明して理解を求めたとのこと。
ようやく歯科医師会は医科から40年遅れて診療報酬改定の準備が始まった。