H17年度 新春講演会 歯科医師会の最小単位として地方会があり、その一つ垂水区歯科医師会では、毎年1月と7月に学術講演会があります。さらに大きな団体、神戸市歯科医師会、兵庫県歯科医師会、日本歯科医師会も数々の講演会があり、小さな研究会でも無数の講演会、勉強会があります。
土曜日の午後も診療しているので、そんなに多く出席できず、最小限の講演会にしか行きませんが、大学に残って博士号を取ったりする先生方は、学会など、外国へも出張しています。
インプラントなど最先端なもの、今流行の予防歯科や、審美歯科など次々と新しい技術が出てくるとついていくだけでも大変。
以前、神戸ポートアイランドに先端医療センターがオープンしたとき講演を聴きそびれましたが、今年同じような内容で主任研究員の馬場先生(大学の10年ぐらい後輩)が垂水区歯科医師会の新年講演会で講演していただきました。
内容は、広報委員会で記事として載せるため、自分でまとめました。興味ある人は、下に載せていますので、一読を。ちょっと専門的な言葉があるのである程度知識が無いと分かりにくいですが。
急速な技術改革が先行して論文にした時点でもうまねをされたり特許を取られたりします。研究費が国から出ている以上、国益を守るためには論文より特許の時代になりつつあります。
青色発光ダイオードで、8億円。ノーベル賞では副賞1億円
歯が完全に再生する技術がひょんなことで確立しようものなら、特許をとれば一発逆転、補助金の何十倍もの利益が出ます。何年か後には実現するようなことを言っていましたが。
垂水区歯科医師会新春学術講演
『再生歯科医療におけるトランスレーションリサーチ』 講師 先端医療センター再生医療研究部 主任研究員 馬場俊輔 平成17年15日(土) 舞子ビラ 講演内容@
再生歯科医療の実際
再生医療には、内科的ニーズ(糖尿病、心筋梗塞等)と、外科的ニーズ(皮膚、歯、骨)があり、歯科医療は外科的ニーズに分類される。TissueEngineerrinngに裏付けされた技術が重要となってくる。
TissueEngineerrinng:細胞や細胞成長因子、生体材料を組み合わせることによって生体組織と等価の機能を持った組織臓器またはその代用品を開発する学術的な研究 局所麻酔下で約20分程度かけて腸骨稜から10ml程度採取する。これを基にして1ヶ月かけて培養し間葉系幹細胞を1×107個/mlまで増やす。(間葉系幹細胞は、骨髄液中の細胞の0.001%〜0.01%しかない為。)
間葉系幹細胞に骨芽細胞分化因子を移植1週間前に添加し移植直前まで培養する。移植直前に以上の幹細胞にさらに多血小板血漿を加え培養ゲルを作って移植する。多血小板血漿:患者自身から採血した血液を遠心分離し血小板を分離することによって得られる。臨床例として、コラーゲンチューブによる神経の連結も紹介された。応用としては、歯牙移植の補助からインプラントの補助さらには歯杯再生を行うことまで発展性が考えられる。
また、培養骨膜で口唇口蓋裂の新たな治療として口蓋形成術、顎裂部骨移植、鼻口唇修正術、顎矯正が考えられる。口腔粘膜細胞と羊膜コラーゲンシートとフィーダー細胞を培養液で培養し口腔粘膜上皮細胞シートで角膜の代用も行っている。 A 再生医療を取り巻く環境:平成12年度厚生科学研究費補助金は、ゲノム関連が19億円で、再生医療関連は11億円であった。資金面では優遇されているといえる。ところが、医療と法律と投資の知識を併せ持った人となるとなかなかいない状況で、人材不足とも言える。Bトランスレーショナルリサーチと知財
基礎から臨床への応用となると、さまざまな問題を解決していかなくてはいけない。
トランスレーショナルリサーチ実施体制として先端医療センターと並列して別部門の臨床研究センターも対応にあたり臨床試験と治験のさまざまな問題に対応している。知的財産(著作権、職務発明、特許)の保護として、近年治療方法の発明が特許として認められるかも知れず、論文よりもまず特許出願が重要となってくる。
医師は裁量で、特許がなくいても治療可能であるが製品供給会社が訴えられる事態も考えられる。アメリカではすでに208件の治療方法での特許が成立している。 C先端医療センターでの臨床医試験
2004.8から培養細胞による医師主導の歯周病を対象にした臨床試験を開始した。患者選択基準、適格基準、除外基準を決めインフォームドコンセンスを行い、各種検査をして臨床検査試験を行っている。経過観察、エンドポイントを設定し実績を積み上げている。歯周組織再生として歯槽骨欠損部位に培養細胞と多血小板血漿と足場を挿入している。足場も、生体吸収性の素材、強度、安全性、構造、さまざまな工夫がなされている。
遺伝的に骨吸収しやすいタイプも明らかになっている。今後遺伝子解析の併用も重要となってくる。