歯科診療に必要な遺伝の知識 U 平成16年12月5日(日) KSCP(神戸臨床小児歯科研究会)の例会がありました。
KSCPの顧問の東京の落合靖一先生が講師となって「齲蝕と遺伝」という題目で講演がありました。
黒板1 黒板2
齲蝕と遺伝について無数の文献からいくつかを選択して紹介がありました。
@Huntのノルウェイネズミを28世代交配させて生後70日で齲蝕が発生するネズミと、生後578日で齲蝕が発生するネズミを人工的で作り上げた動物実験や、
AGrahnenらの、陸軍で齲蝕のない新兵とその家族と齲蝕の多い新兵とその家族を調べて統計学的に優位の差を見出した家計調査や、
BOsbornのヒトの双生児による研究で、齲蝕の罹患状態は明らかに2卵生よりも1卵生のほうが一致率が高かったことや
CFinnとCaldwellは切歯に発生する齲蝕には統計的に有意といえるが、第一大臼歯では認められない。
DJacksonは(1)齲蝕に対してまったく抵抗性を持つ部位があり、(2)同じ口腔内では上顎側切歯の舌面小窩と4本の上顎切歯齲蝕と4本の上顎切歯隣接面の間には齲蝕罹患性に逆関係がある。
小児の齲蝕が減少し、齲蝕と遺伝の注目も歯よりも歯面に注目すべきである時代になったといえる。
歯の齲蝕好発部位は、咬合面の小窩裂溝、隣接面、歯頚部です。ところが、この各部位で繁殖しやすいウイルスは違っています。上の黒板1に書かれていますが、隣接部はStreptococcus mutans 小窩裂溝はLactobacillus
acidophiluc、歯頚部はOdontomyces Viscusです。
ということは、同じ虫歯でも起因菌が違うのだから、違う虫歯ということがいえます。実際フッ素で虫歯抑制できるのは隣接面のみであって、小窩裂溝、隣接面には効果が薄いことが知られています。
ちゃんと調べていませんが、歯頚部のOdontomyces Viscusなどはカビじゃないかしら。
何でもかんでもフッ素じゃなくて、他の好発部位(小窩裂溝、隣接面)は違った予防処置が必要です。
ただし、虫歯の進行はどの部位でも同じ行程をたどるので、治療という点では今までとなんら変わることはありません。
虫歯発生という点で違っているということです。歯の形態は当然遺伝します。虫歯になりやすい形態も遺伝するし、なりにくい形態も遺伝します。これから予防歯科がクローズアップされると思いますが、予防歯科の講演を何回か聴きましたが、このような内容は聞かないので、まだまだ学問としては出来上がっていない部門だといえます。
フッ素さえ塗っておけば虫歯になりにくいとお題目のようにいっていると時代遅れになってしまいますね。
黒板2は歯の発生の説明ですが、これは懐かしい内容でした。
このほかにも興味深い「こうべ市歯科センター長」の河合峰雄先生の講演がありましたが、日帰り麻酔下治療の実際を見て驚きの連続でした。