いちばん大事なこと 養老孟司 集英社新書
まともバカ 養老孟司 大和書房
持続可能な福祉社会 広井良典 ちくま新書
垂水区歯科医師会50周年記念誌製作、神戸市歯科医師会広報誌製作、に関連した委員会や理事会だけでも忙しいのに、毎年恒例「たるみいい歯まつり実行委員会」「こうべ福祉フェアー実行委員会」等のイレギュラーな委員会に加えて、12大歯科医師会連絡協議会で千葉まで行かないといけないらしい。それに付随する委員会。その合間に、秋期学校歯科検診も始まって昼休みもつぶれだした。
すべては、歯科医師会関連の用事ばかり。診療時間がどんどん削られていく。どうしてこうなってしまったのかじっくりと考えないといけないと思って、書店にある新書でよく売れていそうなものを読んでいると、なんとなくヒントめいたものが見つかりました。
養老先生によると、現在環境問題が最大の政治問題だそうです。経済の裏返しが環境問題。
なぜか。たとえ話が載っていたので、少しアレンジして紹介すると。
Aさんがワインを何本か持っています。Bさんが日本酒を何本か持っています。AさんがBさんに500円渡して日本酒を1杯飲ませてもらいます。次にBさんがもらって500円を再びAさんに渡してワインを1杯飲ませてもらいます。500円が行ったり来たりします。そこで経済活動が成立しているわけです。ワインと日本酒が資源つまり環境問題。
国敗れて山河あり。ところが日本がアメリカにコテンパンにやっつけられて食べるものも何もかも失くした時の状況は国敗れたが山河あり。豊かな自然は残っていたわけです。田中角栄を出すまでも無く、日本列島を改造して経済活動を起こし環境を切り売りして高度成長させていったわけです。
広井良典氏によれば、持続可能な福祉社会を実現するためには福祉政策と環境政策の統合が重要だそうです。地球温暖化、資源、エネルギー自然保護を扱う「環境政策」と、介護、保育、年金、少子、高齢化等々を扱う「福祉(社会保障)政策」この2つは一見関連がないようで実際は関連性が大きい。
A.福祉政策・・・「富の分配」のあり方に関する対応を扱う政策領域
B環境政策・・・「富の総量」のあり方に関する対応を扱う政策領域
社会保障財源としての環境税が成り立ちます。
ドイツは1999年に「エコロジカル税制改革」で環境税を導入してそれで年金財政をまかない年金の保険料を引き下げました。環境負荷を抑制しつつ福祉水準を維持し、企業にとっての社会保険負担を軽減し失業率上昇を抑え国際競争力を強化する。
デンマーク、イタリア、オランダ、イギリスでも成功しています。
そこで、どうしてこれほど環境が大事かということの説明ですが、人工で環境システムは壊せても、一旦環境システムが破綻すると人工では元に戻せないのです。虫の動きを真似た模型は作れますが、虫は作り出せません。
脳が考え出したものが人工物で、ほったらかして置けば(手入れしなければ)いずれ壊れます。ところが自然物は勝手に増えます。
環境問題は自然を相手にします。地道な努力に加え予測がしばしば不可能であることを我慢する忍耐が求められます。
努力、辛抱、根性で行かなくてはいけません。
医学は人体という自然を扱います。歯科医が歯を触れば触るほど自然が失われて人工物に近くなります。人工物は手入れしないと壊れます。自然な状態で手入れしていくのが最も賢い選択といえます。ところが病気となると形振りかまっている場合ではありません。緊急処置の連続となっていきます。それをカルテに書いて、説明書を書いて控えを取って患者さんに渡したら良質な治療が行われたとするのは、厚生労働省が人工物に対する考え方しか持っていない現われです。確かの人工物の割合は大きいですが、基本は人体(自然、環境)です。予測不可能の連続なわけです。説明したら理解して状況がよくなると思っているのでしょうが、どうやってもうまく行かないことがあります。治る時は治るし治らない時は治らない。
自然界といって複雑なシステムを作り上げることは人間には出来ません。最小限必要な処置をして好転すれば幸運、最悪抜歯して義歯。まだまだ手探り状態な事ばかりですが、厚生労働省の言いなりになっていてはどんどんアメリカ型の管理医療になってしまいます。
「どうして歯科医師会の用事で振り回されているのか」までなかなかたどり着きません。次回に続く。