ちくま新書 からだを読む 養老孟司著 は、200頁ぐらいの本なのですが、口腔関連の内容が100頁弱のあり、学生時代の習ったことが次々出てくるので、解剖の授業のため歯科学生相手に書いているかのようでした。
職業上歯の関連のことが中心なので、頬まで関心が及びませんでしたが「唇と頬は哺乳類にしかない。」と書いてあるのを読んでびっくりしました。
そう言えばそうだ。
「蛇や蛙には表情が無い、頭の骨にただ皮が覆いかぶさっているだけである。」
と書いていますが、顔を動かそうにも動かないのです。
専門的な話では、魚では鰓になるのがいくつかあるのですが、一番上にある鰓は顎になるのです。2番目の鰓、第2鰓弓が舌骨弓になり、舌骨弓の細胞が移動して表情筋になるのです。哺乳類以外の脊椎動物では移動が起こらずその場所で筋肉に変わるだけで、哺乳類はそれを移動させ表情筋に変えるのです。
結果として、頬ができます。
頬があって、唇があって初めて哺乳ができるのです。
爬虫類がおっぱいを吸おうとすると噛み切ってしまう悲惨な結果になります。
また、サルとヒトの大きな違いは犬歯が伸びるか伸びないかです。
養老孟司先生は、バカの壁というベストセラーがありますが、この本のように専門分野の啓蒙書は薀蓄があって面白い。
痛いか痛くないかは患者さんの表情の変化しか気づく手立てはありません。後は自己申告だけです。
哺乳類に進化するということは、頬唇ができるというわけで表情という情報伝達が発達してきます。
学生時代は面白くもなんともなくただ暗記していって試験に対応しているだけでしたが、なんといろいろな分野にリンクしていたのでしょう。
頬ひとつにしても単に顔の一部分と見ると愛想が無いけれど、どうやってどこから何のためにと考えていくとどんどん世界が広がっていきます。