♯62 歯科と医科
巷では、日本歯科医師会の贈賄事件で歯科医師会のバッシングが起こっているが、身内をかばうようだが、歯科医師は医師の所得の2分の1である事を考えると、それなりに耐えて頑張っていると思うのだが。
兵庫県歯科医師会の資料で「歯科と医科(無床診療所)の格差の現状と分析」というのがあるのですが、これを読むと、歯科医師という職業が如何に見下されてきたのかがよく判ります。
要約すると、
確かに入試、国家試験、などを考えると、医師の知的頭脳は際立っています。しかし、知的労働という点では一般労働者の大卒100対中卒61.5より格差が大きいとは不当を通り越して不公平という評価が妥当ではないだろうか。
産業種別で月間現金給与所得総額が1位は電気・ガス・熱供給・水道業の61万円、最下位が卸売り・小売業・飲食店の31万円で、(小売業飲食店などの従業員は年齢も若く臨時雇い(フリーター)も多く未熟練単純労働が主)100対50.7となっている。
電気ガスは公益事業なので「規制に守られた」産業といえます。
同じ公益事業でありながら、医療の世界で守られているのは医師だけであるといえます。
データーが少し古いが、1990年のアメリカで歯科医師に対し患者のポケットから支払われた経費の比率(患者負担率)は73.6%である。最近、民間保険の適用範囲は拡大してきたが、歯科のように比較的予想が可能で、低価格のサービスの患者負担率は70%を越えており、同年次の日本の国民医療費ベースの患者負担率12.1%と比較すると、格段の高率である。
アメリカ内国歳入庁の1992年所得データでは、異化開業医所得8万7000ドルに対し歯科開業医所得は7万3100ドルである。
その所得バランスは、100対84で、日本のような大きな所得アンバランスは存在していない。
医科、歯科医師の所得アンバランスを「制度」が作り出したとすれば問題である。現在の歯科医師過剰はそもそも気にが作り出したものだし、絶対的技術評価が低いしく診療報酬点数も国が決めたものである。
医師、歯科医師の所得アンバランスを是正する保障責任は国が負うべきであろう。
診療報酬改定には3つのステージに分かれるが、その中でいくつもの問題が重なって来るのだが、そのひとつに、日本医師会が主張した戦術がある。
それは、日本の医師技術料が低いため、薬価マージン(薬価基準で算定された薬剤収入と実際の薬剤仕入れ価格原価の間には大きな較差があり、その差額のこと。)はこれを補う「潜在的技術料」と強く主張し、この制度が作り出した既得権益を改定に当たって技術料に振り替えることを最大の戦術にしたことである。
JRが列車の急行料金を引き下げ、その分だけ乗車料金を引き上げれば社会的批判が強いはずだが、不思議なことにこれが医療の世界ではある程度通用した。
このプロセスは政府の情報非公開で不透明だが、かなりの政治力が働いたものと推測される。
今日の日本歯科医師会の不祥事なんか足元にも及ばないことがあったもではないだろうか。
従来は原則として拘束力の無い自由財源を元に医科、歯科の診療改定がそれぞれ行われてきたのに、主たる財源が薬科引き下げ財源に依存する事になると、薬剤比率が低い歯科は救出財源を持たないので発言力が弱まり、診療報酬改定が歯科に決定的に不利となる構造である。
診療報酬改定が政治決着されるようになると、政治力が弱い歯科は医科に比べ相対的に不利な立場になる。
この、薬価引き下げ財源を重点的に医科に傾斜して配分する「ルール無き改定」が、81年から97年の16年の長期にわたって行われてきた。
医科、歯科均等配分の診療報酬改定が実現するのは2000年以降の改定まで待たなくてはいけなかった。
現在の歯科医院の2極化も進んできている。
富める歯科医院はより儲かり、そうでない歯科医院はより厳しくなってきている。
歯科医師1人の零細歯科医院としては悲鳴を上げる元気も無い。
小泉首相の息のかかった偏った組織では明らかに不当な仕打ちが繰り返されているし。
日本歯科医師会は焦りもあったのだろうが勇み足をしたとしか思えない。
まさか、こうなることが分かっていた?厚生労働省他、確信犯じゃ無いでしょうね。