分譲地購入計画

 移転をあきらめて2年後の2001年、平成13年の10月。

 ほとんど諦めていた移転ですが、不動産情報のチラシはいつも見ていました。

 何気なく家内が朝刊のチラシを見ていたところ、都市公団の分譲の案内のチラシが入っていました。

 体育の日の前後、連休を利用して「日本のへそ西脇」の山の中の家内の実家に家族でお邪魔していました。

 その日の朝刊とチラシ一式そのまま車に乗せて、持って行っていたのです。

 分譲地の一角に、道路の突き当たり、児童館の隣、ダイエー(グルメシティー)が隣接している場所がありました。


 テナントからちょうど1キロメートルの場所にありました。

 1キロメートルという距離は実に重要な範囲なのです。

 医療保険請求を行ううえで、1キロメートル以内の診療所の移転というのは、近隣移転として認められています。

 ということは、診療を継続して行っていけるギリギリの範囲なのです。

 1キロ以上離れてしまうと、手続き上少なくとも1ヶ月は診療を休まないといけません。


 道路の突き当りというのは、前に障害物が無いということで、見通しとしては最高な場所になります。

 近くのショッピングセンターに来るかできたら、どうしてもその道路に侵入しないといけません。

 必ず正面に見えることになります。

 テナントのとき、開業当時、診療所の前の歩道の銀杏の木は低かったのに、10年もすれば、前を覆い隠してしまい丁度診療所を隠してしまう状態なので、枝をきってもらうにも、土木事務所の公園課の許可や、関西電力の電柱の管理課の助けが必要になってきます。


 児童館の隣ということは、住宅としては騒がしいので適さないのですが、診療所としては好条件になります。

 しかも前に小さいのですが、マンションの公園もあるのです。

 しかし、分譲の内容は住宅専用地なのです。

 早速休み明け、現地に行ってパンフレットをもらい検討に取り掛かりました。

 すると、この地域は建築協定が締結されている土地なので、商業地としては利用できないことになっているのです。

 しかし、それまでの悪戦苦闘を考えると諦め切れません。なんとか善後策を考えて見ようと早速パンフレットをもらいに行きました。

 パンフレットを読むと建築協定の要約の中に、例外事項があるのです。

 6.協定事項の概要の(3)建築物は、1区画ごとに1戸建ての個人住宅とする。ただし、一定規模以下の診療所、各種教室、日用販売店舗との兼用住宅で、学園緑ヶ丘(小束山5丁目)南地区建築協定書第12条に規定する建築協定運営委員会の許可を得た場合は、この限りではない。


 つまり、その地域の住人で運営される建築協定運営委員会で承認を得たなら兼用住宅としてなら、歯科医院が建設できるのです。

 歯科医院を建設するのに反対する人も無いだろうし、後は資金面の段取りと、歯科医師会との交渉、手続き等だけだと思い、もう一度夢を追いかけてみようと走り出すことにしました。

 というのも、年齢的にローンを組むにも制限があるし、診療所の新規開院となると体力、気力も今が限界だと感じていました。

 2週間後、分譲締め切りまで購入希望者は私一人でした。倍率1倍ということです。

 最終日の日曜日の午後、締め切られた後倍率が2倍以上の区域の抽選が行われました。

 たまたまそこに居合わせたので、抽選機を回す羽目になりました。

 回すだけなので、私自身どうしようもないのですが後ろで一喜一憂が起こるのには少し動揺しました。


 ところが、その抽選で意外なところに落とし穴があって1年後に大変な事態になってしまいました。