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ホーキング、未来を語る
スティーブン・ホーキング

 訳者:佐藤勝彦  発行:アーティストハウス


 『ホーキング、宇宙を語る』の続編。ホーキングに言わせると、前作よりももっとわかりやすく書いたそうである。残念ながら前作は読んでいないので、比較ができないのであるが、けっこう面白かった。最新の宇宙論はこれ1冊でOK!てな感じである。最先端の宇宙モデル、M理論、ブレーン世界などはさっぱりわからんが、タイムマシンが可能かどうか、などの考察はかなりエキサイティングである。

 脳とコンピューターの話も面白い。

 現在のコンピューターでは、知能を持ったという形跡はなく、ミミズの脳の複雑さにも劣る。しかし、将来人間の脳と同じくらいの複雑さになるであろう。 そして
<非常に複雑な化学分子によって人間が知能を獲得しているのなら、同様に複雑な電子回路によってコンピューターが知的に振るまうことができるようになるのは当然だと私は考えます>
とホーキング博士はおっしゃる。
多分に科学者的な見解かもしれないが、これは非常に面白いと思う。量的変化が質的変化をもたらす、ってことではないだろうか。

 そして未来の人間について。

 SFの「スタートレック」のような世界は考えられない、ともおっしゃる。何故なら、人類は進歩し、DNAの操作も可能になり、その肉体も自ら変えていくのではないか、と言うのである。現在の人間と同じような形をした「スタートレック」の世界はウソであると。

 宇宙モデルを考えたり、人類の未来を考えたりする上で、「神」など出てきてほしくはないのである。本書でも言葉と図解でなんとかイメージしようとしている。そのあがきがいいのだ。そういう点で科学も哲学も同じだ。そして文学だってそうだ。なんとか言葉にならないところ表現するのだ。言葉の重力から脱出できる速度で。
 本書では、ホーキング博士の科学で説明しようという気迫を感じる。それがある限り、「科学の終焉」は未だ来ない、と思う。

 残念ながら、今回で最後となりました。
 今までアクセスして読んでくれた方々、誠にありがとうございました。
 それでは。

おすすめ度:★★★★

(2001.12.24)



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