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ザ・ゴール(企業の究極の目的とは何か)
エリヤフ・ゴールドラット

 訳者:三本木亮  発行:ダイヤモンド社


 サブタイトルにある、企業の究極の目的とは何か。それは金を儲けることである、と著者は明快にいう。まあ、当然と言えば当然なんであるが、これが会社全体としてそうなっているかは疑問である。著者の提唱するのは、制約条件の理論(TOC:Theory of Constrains)と呼ぶもの。ボトルネックと呼ぶ工程の一番弱いところを改善しつつ、その能力を100%発揮させ、他のところはそれに合わせていく、というもの。ポイントは各工程毎で頑張ろうとしないこと。下手に能力のあるところが頑張ると、能力のないところで停滞するもの(著者はこれも在庫と呼ぶ)が増えてしまうからである。在庫を減らし、必要経費を下げ、スループット(販売を通じてお金を作りだす割合のこと)を増やすことを目指せ、と言う。

 「日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一流だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」と著者は言ったそうだ。それで15年もの間、日本語訳がでなかったらしい。しかし、この「部分最適化ではなく、全体の最適化を目指す」というフレーズ、ここ数年会社の朝礼放送でよく流れてはいた。流れてはいたが、まだ徹底して全体の最適化にはなっていないように感じる。

 この本の生い立ちも変わっている。著者はイスラエルの物理学者であり、あることで生産管理のソフトを作った。そのソフトを十分理解してもらう為に本書『ザ・ゴール』を執筆したのだそうだ。なんか調子にのって映画までつくっているようだ。う〜ん、パワフルじゃ。

 まあ、そんな本なんであるが、これがけっこう面白い。主人公アレックス・ロゴは工場を立て直そうと不屈の精神で頑張る。恩師ジョナに教えられた理論(著者の理論)で回りの人間を説得し、とても無理そうな仕事に取り組んでいく。もちろん大成功を収め、仕事が順調に進んだので家庭を顧みる時間ができた、というオマケつきだ。いかにもアメリカ人受けしそうだ。日本でも、というか近所の本屋にもドーンと山積みされていて、いかにも売れてまっせ、って感じである。楽しく読んで勉強にもなる。ああ、日本人受けもしそうだ。

 ひょっとして、この手の本は松山真之介さんが、既に書いているのでは?と思いつつここまで書いて見てみると、やっぱりあった。まあええか。より詳しく知りたい方は、松山さんのを読み返してみてください、ってことで。

おすすめ度:★★★★

(2001.8.19)



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