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う〜ん、かなり馬鹿だ。 主人公は腕利きの外科医、奈津川四郎。アメリカのサンディエゴ、ホッジ総合病院のERに勤める。手術大好き人間だ。手術の腕は相当凄いが、かなりのアホである。わけのわからんことばかり喋っておる。馬鹿さ加減で言えば、町田康の小説に出てくるような人物でもあるが、もっとポップでスピード感はある。小説全体がそんな調子?で進む。 さて、お話はコイツ(四郎)の母親が何者かに襲われることから始まる。アメリカに居た四郎は急遽日本に戻る。犯人は連続暴行魔らしい。四郎は探偵よろしく、事件の解明に努める。それがまた、ポップな中にもおっと思わせるような鋭い分析力を示す。 ラストは殺人鬼VS四郎だ。これが実に傑作である。なんたってERに勤める四郎、緊急手術は大の得意。とくれば想像はつくかな?。。。この対決は探偵小説史に載せたいくらいだ。 タイトルの『煙か土か食い物』は、祖母の口ぐせ「人間死んだら、煙か土か食い物になる」というところからきたものだ。このあっけらかんとした態度がなかなかよい。 言い忘れたが、四郎は4人兄弟である。意外であるが4番目であり(あたりまえか)、兄に一郎、二郎、三郎がいる(ひゃー)。父は丸雄。祖父は大丸。代々政治家で、相当タチは悪い(まあ政治家は大概タチは悪い)。この家族の葛藤もなかなか面白い。そこには、どうしようないほどの家族愛があったりするのだ。 今までにない探偵小説とも言える。主人公の行動が一見めちゃくちゃで、それについていけるかどうか(まあ、ついていかんでもいいが)。この文体だけでも十分楽しめる(あるいは嫌になる)。ちなみに私は、こういうのがけっこう好きだ。 作者の舞城王太郎、多分ペンネームなんやろうな。インパクトは強い。次回はどんな馬鹿なことを書いてくれるか非常に楽しみだ。一応。 おすすめ度:★★★★ |
(2001.5.29)