I S I Z E  への 43

エペペ
カリンティ・フェレンツ

発行:恒文社 ISBN4-9999999-9-9


 いやもう、ISBNがないくらい古い本なんですが、どうしても紹介しておきたい。やむおえず↑のISBNは(仮)です。買ったは20年前。動機は筒井康隆の『みだれ撃ち涜書ノート』で紹介されていて、面白そうであったから。

 なにやら変なタイトルである。人の名前のようでもある。関係ないけど、昔、マラソンランナーで「アベベ」という人もいました。人の名前であり、国の名前でもある。しかし本当に「エペペ」なんかどうかはわからない。なんとなく話し言葉が「エペペ」と聞こえる。そんな国に迷いこんだ男のお話です。

 主人公は言語学者のブダイ。ヘルシンキで開催される「国際言語学会」に出席するため、飛行機にのりこんだ。しかし、到着したところは言葉の全然通じない世界であったのだ。人がやたらと多い都会であるが、言語学者の彼でも、どこの国の言葉かわからない。今まで聞いたことのない言葉をしゃべる人々。このいわゆる「エペペ」国での彼の戦いが始まる。

 群集の流れに逆らえず、着いたホテルで訳わからんうちに部屋はとれる。外の世界、言葉の通じる世界と連絡をとろうとするが、誰にも相手にしてもらえない。そこで言語学者である彼は、この国の言葉を解読しようとする。街の標識、レストランのメニュー、お冊に書かれた文字などを分析し、言葉を覚えようとする。唯一コミュニケーションのとれたのはホテルのエレベーターガールのエペペ。彼女に言葉を教えてもらったりする。そして彼女とは恋仲に。

 当然のことながら、持ち金も底をつき、ホテルも追い出される。エレベーターガールのエペペも突然消えた。街を歩いて、日雇人夫に紛れて小銭をかせいだりするが、やがて乞食のようになってしまい、身も心もボロボロとなる。そして。。。

 コミュニケーション不可能な世界にたった1人。戦いつづける主人公のブダイ。徐々にその世界に同化していくが、元の世界の戻ることをあきらめない。その精神力は凄い。我々ももし、そのような運命になったら、どうするであろうか???不条理小説の傑作であると思う。

 著者カリンティ・フェレンツは1921年ハンガリーのブタペストで生まれた。日本語に訳されているのは本書のほか、『ブタペストに春がきた』がある。

おすすめ度:★★★★★

(2000.11.30)



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