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ジョー・R・ランズデールの『バット・チリ』は、白人のハップ・コリンズと黒人のレナード・パインのコンビが活躍する。邦訳されたものの中で、このコンビが登場するのは3作目となる。邦訳の順では『罪深き誘惑のマンボ』、『ムーチョ・モージョ』、そして本書となる。 最初に読んだのは『ムーチョ・モージョ』で、まずは文庫本の表紙の絵に目に止った。その時の印象は、ポップでパワフルでエロいなあって感じだった。そしてこの訳のわからんタイトル。「ムーチョ・モージョ」ってなんじゃあ?なにやら呪文のような、意味のありそな、なさそな。とりあえず無視しておいて、後日本屋に行くと、あった。買った。読んだ。 内容は予想に違わず濃いものであった。まずは活躍する2人組みの1人、ハップは40過ぎて定職につかずブラブラしている白人。もう1人のレナードは、ホモで自称「世界一頭の切れる黒んぼ」。こいつらがおもいっきり下品だ。そして暴力あり、殺人あり、死体ありで、その描写はにおい立つようにリアルだ。途中からは、悪夢の世界にもなっていく。なにやらタランティーノの映画『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を観ている気分にもなる(これもなかなかおもろいぞ。後半からガラリと変わりバケモノが登場する)。しかしこのドロドロ、下品の中にも痛快さがあるのだ。ハップとレナードの甘くない友情もいい。いざとなりゃ、命にかけても友を守る。 最新作の『バット・チリ』も臭い立つような下品さ、そして痛快さで読み応えは十分。いきなりハップは狂犬病のリスに噛まれ、入院する。まあ、その入院先の看護婦といい仲になるのだが。そしてレナードはなんと殺人の容疑がかけられる。レナードの恋人(男)も殺される。今回はハップが大活躍となる。男の急所に電流をかけられ、あやうく一命はとりとめたりする。 基本的に2人は善人である。相手にするのは、はっきりとわかった悪者だ。だからこそ痛快さがある。そこら辺りが、ジム・トンプソンの描く人物とはまるっきり違う。トンプソンの描く保安官なんてのは、本当に悪いヤツなのだが。 暴力シーンの激しさ、死体描写のリアルさ、そして下品な会話で非常に濃いものに仕上がっている。濃いのが好きな<あなた>には、このハップとレナードのシリーズ、お薦めします。 おすすめ度:★★★★ |
(2000.10.30)