I S I Z E  への 43

作家の値うち
福田和也

発行:飛鳥新社


熱血?文芸評論家、福田和也によるブックガイド。
日本の現代作家100人の作品を各人数点以上、574冊の本を寸評と点数であらわした。 点数は100点満点とし、その基準を以下のようにした。

 90点以上:世界文学の水準で読み得る作品
 80点以上:近代日本文学の歴史に銘記されるべき作品
 70点以上:現代の文学として優れた作品
 60点以上:再読に値する作品
 50点以上:読む価値がある作品
 40点以上:何とか小説になっている作品
 39点以下:人に読ませる水準に達していない作品
 29点以下:人前で読むと恥しい作品。もしも読んでいたら秘密にした方がいい。

とまあ、こんな具合だ。
 これを見ていくと、村上春樹の平均点はめちゃめちゃ高い。『ねじまき鳥クロニコル』は96点で574冊中の最高点である。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』も91点とかなり高い。私の好きな京極夏彦、花村萬月などもけっこう高い点がついている。桐野夏生も評価は高い。意外に高いのが石原慎太郎で、『わが人生の時の時』も96点で最高得点だ。今どき石原慎太郎なんて読む気もしないが、こう点が高いと多少気になる。

 反対に点数が低いのが船戸与一。8冊を挙げているが、『山猫の夏』をはじめ全点20点以下で、測定不能としている。ちなみに私は船戸与一の作品はけっこう好きだ。登場人物の無国籍ぶりがけっこう面白い、なんてことを思ってることは秘密にしといた方がいいのかもしれない。鈴木光一の『リング』(35点)、『らせん』(30点)もかなり低い。『バースデイ』にいたっては、最低の17点だ。

 自分が読んだもので、評価の違いをみるのも面白いが、楽しみなのは、今まで読んだことのない作家で、高い点数のついている作品だ。山口雅也、佐伯一麦、古井由吉らの作品。もう古井由吉なんて、誰ですか?って感じ。逆に点数が低いもので、今まで読んだことがなかったものは、永遠にサヨナラかもしれない。

 プロの評論家で、これだけ評価のまとまったものはなかなかないのではないか。自分の考えをはっきり出していて、非常におもしろい。書評のホームページなどでよくお目にかかる点数つけも、プロの評論家ともなると、真剣勝負って感じがして非常にいい。無意味に長い小説、通俗的な小説に対しては、批判的だ。そして、次世代に残すべき作品はどれか、という見方をしているようだ。プロでこそナレアイでない、こういう明確な態度で望んでほしいと思う。大変参考になる1冊である。

 いままで、食わず嫌いだった村上龍であったが、『テニスボーイの憂鬱』の点数が高かった(91点=世界文学の水準で読み得る作品)ので、買ってしまった。さて、どうだろうか。

おすすめ度:★★★★

(2000.4.30)



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