I S I Z E  への 43

死神の館
テリー・プラチェット

 訳者:久賀宣人  発行:三友社出版


 みなさん、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。では正月早々縁起のいい本を。それは『死神の館』。。。

 タイトルだけ見ると、まるで三流ホラー映画のようであるが、実はそんな話ではない。確かに死神<他に説明のしようがない>が出てくるのであるが、これがまた、しっかり死神の仕事?をしているのである。それは、

1)すべての人の余命の管理(砂時計がある)
2)すべての人の歴史の管理(現在進行形で本に記述されていく)
3)人が死ぬ時に肉体と霊魂を切り離してやること(大鎌や剣を使う)
4)毎朝机に向かって消滅点を計算する(宇宙のバランスを保つ為?)
などである。死神やるのも楽じゃないって感じ。

 砂時計の砂が少なくなったのを確認して、死ぬ人の元へ駆けつけなければならないし、毎朝の計算もある。そこで、この死神は弟子をとった。モルトと言う。正確にはモルティマー。略してモルトである。この坊主、いやモルト(モルトと呼ばなければすぐに怒る)が死神の替わりに大鎌を持って人の死に立ち合う役を引き受ける。死神はと言えば、人の世界に興味を持ったみたいで、居酒屋などで、人の楽しみとは何かを探りに行く。最後には何故かコックとして働いている。

 元々なんか変なヤツであったモルト君、やはり大変な事をしてしまった。死ぬ運命にあった王女を助けてしまったのである。それは歴史を覆えしてしまうこと。歴史は本来の現実を取り戻そうとする。これがまた凄い。モルトが変えてしまった歴史と本来の歴史の境界面ができてしまい、その境界面が世界を包みこもうと押し寄せてくるのである。

 そのモルトの不始末を死神は怒る。実際には死神の娘イザベルとはいい仲になったことが原因かもしれないが。モルト君も負けてはいない。そして、死神とモルトの対決。モルトの砂時計も終わりに近くなっている。ああ、モルト君の運命やいかに。そして、王女はやはり死んでしまうのか?

 これらはディスクワールドと呼ばれる世界(大亀の上に4頭の像が乗り、その上にある円盤上の世界)での出来事である。そして何よりも面白いのが、この物語全体のスッとぼけた感じ。死神(見た目はやはり怖い。まさに黄金バット)やモルトはまるでかけあい漫才のようだ。テーマは深いが、けっこう笑える。ラストはハッピーエンドで、なかなか後味が良い。

ということで非常に縁起のいいお話でした。

 同じ出版社からディスクワールドシリーズとして、『魔道士エスカリナ』、『三人の魔女』があるそうです。

おすすめ度:★★★★

(2000.1.6)



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