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舞台は新宿歌舞伎町。主人公イクオはヒモ道を追求する。ヒモ道というか、性の探究者である。いろんな女性が登場するが、メインとなる則江の外見は非常に醜い。本当の愛は外見ではないのだ。特にその性描写においては、エロ小説と言うにはあまりにも汚く、そしてあまりにも真面目である。 えっ!ここまで書くか。というところがなんともいい。その遠慮のなさが気持ちがいい。よくぞここまで書いてくれた。プロットらしきものはなく、しかも分厚い本(2段組で664ページ)であるがとても楽しく読めた。著者もどこまで書いていいのか、というような葛藤があったに違いない。著者自身への挑戦、その求道的精神は1つの文学者のあり方であると思う。しかし、あまりにもストレート過ぎるので、ドキツサがあり、敬遠する人も多いかもしれない。 著者よれば、前作『鬱』から本当に書きたいことを書き、そして「新しい倫理をつくる」と言うことらしいが、この本から明確な倫理観を読みとることはむずかしい。とりあえず、ぶっ壊しではあるとは思うが。そこから新たな倫理が生まれるやいなや。著者には、是非とも追求していって欲しいとも思う。 「ぢんぢん感」だけでは刹那的過ぎる。と思う。 奇麗なもの、汚いもの、清濁合わせ飲むというような大きな愛というようなものを表現したいのかもしれない。。。(ちょっとわからんが) 花村萬月の本を読むのは、本書が最初であった。こんな本ばかり書いているのかと思いきや、ちゃんと読者におもねった(著者自身がそう言っている)小説、『皆月』のような物も書いている。こっちはしっかりエンターテイメントしてるので、みなさんにお薦めできるし、それが証拠にちゃんと映画化もされている。そして、『ブルース』と言う名作もあった。この本を読んで、今まで聴くことのなかったブルースを聴いてみたいと思った。それらの方が安心して薦められるが、著者の挑戦的魂をうけて、この『ぢん・ぢん・ぢん』を おすすめ度:★★★★★ としたいのである。 【業務連絡】 そろそろ「今まで読んだお薦め本シリーズ」、星5つものばかりアップするのはいったん止めて、日々読んでいったものをタラタラ載せながら、合間をみて、以前に読んだ「おもしろ本」もアップしていきます。 |
(1999.11.13)