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さあ、いらはいいらはい。失せ物、待ち人、走り人、男女相性、善悪の考え、その他もろもろの恋指南、商売案内、人生相談・・・。 見台の上の堤灯には<おん占い十六文・果心堂>という文字が浮かぶ。 果心堂:大道易者。元甲賀忍者。人生には懐疑的であるが結構大胆なヤツ。 お狛:果心堂の妻。元伊賀忍者。清純さとなめまかしさを兼ね備えた美女。 深編笠を被ったこの2人。忍術では生活できないので占い師をやっている。非常に勉強家であるが、なによりもイタズラが大好きなんである。 そしてわが果心堂、実は手相を見るのではなく、根相を見ることが得意なのである。道の往来で見ることができないので、何故か?いつも百日紅(さるすべり)の樹陰で見ることとなる。そして果心堂夫婦であれやこれやと。。そして妙案を思いつく果心堂。女房のお狛はとりあえず「よしたほうがいいんじゃないの」というのであるが。。 そして数々のばからしく、奇妙キテレツな忍法を披露してくれる。 【伊賀忍法進行性筋萎縮】…男根を自分でにぎらせ、にぎった腕をこすると男根は元気になる。しかし、その腕はぐったりとなる。 【伊賀忍法笛谺】…クライアントと果実堂が男根に花輪をはめる。お狛と果心堂がなにをし、そのお狛のしめつけとゆるめに合わせて、クライアントの方の肉体が数倍になったり、数分の一になったりする。 【忍法爪紅】…女性が感じると、足の爪が赤くなるというもの。その数を競う。 【伊賀忍法棒紅】…男根が真っ赤になり、女性となにをしないと直らないというもの。 【忍法独禁具】…ドッキングと読む。これが一番訳わからん。これを試みた果心堂さん自身この後、次のようにおっしゃってます。 <拙者も忍法古書にはあれど、いささかぶきみで、かつあまりにもばかばかしい所業ゆえ、試みたのは今夜をもって初めてのことといたしまするが、これがかくも成功裏に終わること確かめたうえは、ひろく同憂の士に勧奨いたしましてもよいと存じまする> こんな悩みもある。 家来どもの鼻の長さと男根の長さ、その女房のかくしどころの大きさと口の大きさの相関関係に興味を持ってしまう秩父守様。そして、家来は根拓と陰拓を取ることを命じられる。家来たちもだが、奥方たちが嫌がるのなんのって。 これを解決するのが【甲賀忍法虚空鏡】。チャンスは奥方が行水する時である。同じようなタライを用意して、こちらからぽんぽんぽんとすれば、あちらでほれ、ほんぽんぽん。ポンポンポンのポンポンポン…。 まあ、よくもこんなくだらんことやるもんや。いや、やってる本人もバカバカしいと思いながらもやってしまうというのは、イタズラ心だけではない。これも一重に、忍術を究めようという高邁なる精神がそうさせるのであろう。 余談ではあるが、私はそういう果心堂が大好きで、ハンドル名に一字頂いた。 著者の山田風太郎自身「忍法帖の最高傑作」とするもの。巻末に中島らもと の対談も載ってます。 おすすめ度:★★★★★ |
(1999.10.14)