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■ ライアル・ギャビン  深夜プラス1  ハヤカワ文庫

 ビジネス・エージェント、ルイス・ケインの仕事は、実業家マガンハルトをリヒテンシュタインまで送り届けることであった。相棒は、アルコール中毒気味のガンマン、ハーヴェイ・ロヴェル。ロヴェルの任務はマガンハルトの命を守ること。ケインのシトロエンは、相棒とマガンハルトとその美人秘書を乗せて深夜を爆走する。無事目的地までたどり着けるか、というわかりやすいストーリーに登場人物の魅力が加わる。ストーリーは単純であるが、細かいところにもなるほどな、と思わせるところがあり、最後のどんでん返しも鮮やかで、気持ちのいい終わり方であった。


■ ランズデール・R・ジョー  バット・チリ  角川文庫

 ご存じ?ハップ&レナードものの3作目。出だしでハップは、なんと狂犬病のリスに噛まれ、入院する。いやあ、リスでも狂犬病に罹るんですなあ。そして親友のレナードが殺人事件の容疑者になっていることを知る。今回はハップの方が大活躍。○ンタマに電流を流されたりで、本当に死ぬ思いをする。だがまあ、心休まる面も。それは看護婦のブレッドとの出会い。下品なハップに対しても、それなりに応じてくれる大人の女だ。そのブレッドといい、ハップ&レナード、あいかわらず下品で、いいヤツらだ。


■ ランズデール・R・ジョー  凍てついた七月  角川文庫

 いいですね、この暗さ。甘くないのがいい。しなきゃいけないことは他人から言われてやることではない。すべては自分の心の問題。<ジョン・ウェインの映画の見すぎで、カウボーイ小説の読みすぎ>と言われようと、やらなきゃならんと思ったらやるのだ。後味はよくないのはわかってても。これから先、今やったことを引きずっていきながら生きていくのだ。物語は家に押し入った強盗を殺してしまうことから始まる。そしてその殺された人間の親父が復讐しにくる。しかし、真実は、警察も一枚かんだ裏があった。そしてその主人公はその親父とともに。。例のハップとレナードのコンビは出てこいないが、今回もそれぞれの人物の倫理観に基づいたいいものだ。


■ ランズデール・R・ジョー  罪深き誘惑のマンボ  角川文庫

 ランズデール、おもろいわ。ダーク・サスペンスときた。主人公は白人のハップと「世界一頭の切れる黒んぼ」のレナード。お話は前作『ムーチョ・モージョ』にも出てきた美人黒人弁護士フロリダ探し。失踪先は黒人にとって危険な街、あのKKK(クー・クラックス・クラン)が支配する街であった。ハップとレナードのコンビはその街にのりこむが、徹底的にやっつけられる。このヤラレ方が凄まじい。しかし、コイツらは自分が自分で在る為に、懲りずに再度出発する。中味は、めちゃめちゃキッつい、おぞましい話が最後まで続く。いままでにない味だ。これがダーク・サスペンスか。このコンビの話は『Savage Season』、『Mucho Mojo』(『ムーチョ・モージョ』)と来て、この『The Two-Bear Mambo』(『罪深き誘惑のマンボ』)で3作目。そのあと『Bad Chili』、『Rumble Tumble』と書き継がれているらしい。邦訳はまだ2作。はやく次のものが読みたい。


■ ランズデール・R・ジョー  ムーチョ・モージョ  角川文庫

 「ムーチョ・モージョね」フロリダは言った。「なんだって?」おれが訊いた。「ずいぶん悪い魔法ってこと」フロリダが答えた。「となりはムーチョ・モージョよ。あたしの祖母はよくいってたものよ。モージョっていうのはアフリカでは魔法っていう意味なの」>ちなみに「ムージョ」はスペイン語で「ずいぶん」ていう意味。おれはストレートの白人、相棒のレナードはゲイの黒人。おたがい軽口を叩きあうが、その裏は人種問題ありで、けっこう重い。緊張感のある信頼関係がそこにある。読み飛ばそうとすると捕まえられる。そして全体がもの悲しいトーンで包まれている。事件もかなりえぐい。非常に濃く、血と腐敗の匂いがする。




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