〓 | いきなリ<目標は低く持ちましょう!>、<人生は早めに諦めましょう>とくる。サブタイトルは『人生を100倍ラクにする方法』なんで、確かに楽になれそうだ。なんか消極的で、しっかりせぇよという声が聞こえてきそうであるが、思い悩んでいる人には、これで助かることもありそうだ。深く考えずに世間体を気にしてのことや、考えようによっちゃどーでもいいことに対して不必要な頑張りをなくすにはいい。まあそれだけではない。第3章の『賢く自由に「お金」とつきあう』など無駄を省くエコな考えのヒントもいろいろとある。「太陽と北風」で言えば太陽のようで、父性愛ではなく、母性愛を感じる本だ。 |
〓 | コロナ渦の2020年1月〜2022年6月まで(今から3年前まで)の医療現場の状況を非常にリアルに描いた小悦。中国武漢、ダイヤモンド・プリンセス号、WHOのテドロス事務局長、故安部元首相、菅元首相、小池都知事、コロナで亡くなった志村けん等実名で登場し、当時の緊張感が伝わる。主人公は、現場の活躍する医師や看護師、そしてその家族たちである。患者を守り、家族を守る。ウィルスから守るだけでなく、マスコミや反ワクチン団体、その他根拠のない噂からも守らなければならない。コロナ病棟の担当になると、PPE(個人防護服)に着替える必要があるし、世間の人々からは距離を置かれるし、そらへとへとになるやろうな。リタイヤする医師や看護師がいてもおかしくはない。一旦休んで再び立ち向かう様子や、病院内の協力体制が出来るのが感動的。オミクロン株まで丁寧に書かれているので、当時を振り返る資料としても使える小説。 |
〓 | チャンドラーの長編3作目にあたる。私が読むのは4作目(途中で最後の長編『プレイバック』を先に読んだので)になる。毎度のことながら、私立探偵マーロウと警察の関係もよくできていると思う。事件をとりあえず、そういうふうに片付けておくという警察と、あくまでも納得のいくことにこだわるマーロウだ。その為なら相手がどんな大物であろうとひるまないし、あえて真犯人を警察につき出すことはしない。まあそこら辺がマーロウの大きな魅力の1つでもあり、自分の職域(探偵であること)を守ることに対する頑固さである。警察だけでは上面で、マーロウだけでは世間が納得しない。今回の依頼人の秘書マール・デイビスはかわいく、いじらしい。彼女があまりにも純なのでさすがのマーロウもイライラしていたが、最後は根気よくアフターケアも行い、カッコよく去っていくのであった。ちなみに訳者の清水俊二さんは、本書を訳し了える寸前で亡くなり、その続きは字幕スーパーでもおなじみの戸田奈津子さんが訳されたそうである。 |
〓 | チャンドラーは35歳の時に、18歳年上の女性と結婚した。その妻シシーは<主婦としても仕事上の助言者としてもずっとチャンドラーの良き伴侶であった>そうな(巻末の解説より)。で、チャンドラーを読むのはこれで3作目。『大いなる眠り』、『プレイバック』を読んだが、今のところこれが一番いい。ナイトクラブ歌手、ヴェルマを愛した大男、「大鹿マロイ」。過去のことを知られたくない富豪の妻、グレイル夫人。そして、善悪関係なく組織の為に働く警察官や、つかまらない黒幕。ラストはもの悲しい。今回のマーロウはひとり言がやたら多いような気がする。なかなか愉快なヤツじゃ。 |
〓 | <しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなかったら、生きている資格がない。>。という有名なセリフがP.232に出てくる。初めて読んだのが、チャンドラーの処女作『大いなる眠り』で、次の読んだのが遺作『プレイバック』だった。たまたま。私立探偵フィリップ・マーロウは依頼人に頼まれたことを一応行うが、気になることがあればそれ以上に深入りする。依頼人にとってはイヤな奴である。今回も最初の依頼は、ある女の居場所を探れ、という事だけであったが、最後にはその女が依頼人になったかのようである。そして、『大いなる眠り』を読んだ時は、けっこうがまん強いヤツ(すぐに女と寝ない)だと思っていたが、そうでもなかった。解説を読めばこれもめずらしい事である、らしい。 |
〓 | 江戸川乱歩は『クリスティに脱帽』の「英米探偵小説評論界の現状」の中で、今までの探偵小説(クリスティ、セイヤーズ、クロフツ等)は、生き生きとした人間が書けてないというチャンドラーの意見に対して、少々批判的である。それは、逆にチャンドラーが人間ばかりを書き、論理興味を捨て去ったということであるが。。。で、『大いなる眠り』は面白い。一旦解決したかに見えるのであるが(それで終わらないことはわかる。何故なら約半分が残っていたからである)、このフィリップ・マーロウ(私立探偵)はしつこい。そして後半がぐっと面白い。思ってたよりもフィリップ・マーロウは、ストイックである。ジェームス・ボンドみたいにすぐに女を抱いたりしない。ちょっとカッコつけすぎのとこもあるが。 |