〓 | セイヤーズの最大の傑作であり、1930年代英国が産んだ最高の探偵小説と謳われる不朽の名作、らしい。江戸川乱歩も『クリスティに脱帽』で、やたらと誉めていた。確かに重厚な小説で、鐘についてのウンチクを充分読まされる。ガウデ、サベオス、ジョン、ジェリコ、ジュビリー、ディミティ、バティ・トーマス、テイラー・ポール。順に一番鐘(高音鐘)〜八番鐘(低音鐘)。鐘の鳴らし方もいろいろあるようで、「ケント高音跳ね八鐘」など聞いたことのない言葉がたくさん出てくる。この辺りは解説でも触れられているように京極夏彦の小説のようだ。乱歩もその教養に関心していた。英国の田舎の雰囲気を味わいながら読める。その田舎で、殺人事件が起こるのであるが、最後の誰に殺されたか?という謎は、非常におもしろいと思う。ナイン・テーラーズ(九告鐘)とは、その村で男が死んだ時に鳴らす弔いの鐘。 |
〓 | <「実はぼくはもうこの世の人じゃないんだ」。「…は?」>。なにを言うか思えば、今はB世界におり、A世界の山田風太郎は階段から落ちて死んだそうである。ああ、そうですか。毎度のことながら、山田風太郎の話すことを読むと、むちゃくちゃリラックスできる。もう、思いっきり力が抜けた。体の底からスーッと。気持ちがいい。やりたいことしかやってこなかった山田風太郎は、小説を書くときも全然ストレスはなかったそうで、他の作家がうらやましがったとか。小説の中味を見ればそれはよくわかる。本書は、関川夏央が1年半かけて、山田風太郎にインタビューしてまとめたもの。それにしても関川さんのツッコミも見事。当時73歳の山田風太郎は何度も同じことを言うので、苦労したやろなあ。山田風太郎、大正11年生まれ。うちの親父と同い年。昭和の初期に青春時代を過ごしただけに、その頃の記憶はハッキリしている。 |