●
論理哲学論考 ヴィトゲンシュタイン 法政大学出版局〓
哲学と思想とは全く別物である。それをハッキリ言っている書物はめずらしい。単なる思想なのに、哲学であるかのような書物が多い。ヴィトゲンシュタインはこう言う。<哲学の目的は、思想の論理的な浄化である>と。そして、<語りえぬものについては、沈黙しなければならない>とも言う。語りえぬもの、それは<世界があるという、その事実なのだ>。
●
メタフィジカル・パンチ 池田晶子 文芸春秋〓
他人の言葉ではなく、自分の頭で考えたことがあるか!粉飾された思想は、粉飾された思想にふりまわされる。自分で考えていく覚悟を決めること。1つ1つのことを、自分の考えで述べよ!自分で考えていくことに覚悟を決めた著者は、この本でますますエスカレートする。すべては【存在する】とはなにかから始まる。
●
オタク学入門 岡田斗司夫 太田出版〓
西洋文化=メインカルチャーからカウンターカルチャー、そしてサブカルチャー。日本型文化=職人文化からオタク文化。「粋の眼」「匠の眼」「通の眼」がオタクの3つの視点。これからの日本人を救うのはオタク文化か?著者はオタキング。
●
ぼくたちの洗脳社会 岡田斗司夫 朝日新聞社〓
自由経済社会から自由洗脳社会へのパラダイムシフトが起きつつある。権力者の独占であった洗脳行為は民衆へ開放される(パソコン通信、インターネット等)。「自分の気持ち」を最も大切にし、その場、その場でいろんなイメージ、価値を選択する。1つの確立した「自我」は邪魔になってくる。キーワードは他人のワガママを認められるワガママ。ワガママばんざい!
同じ著者の上の本よりも、汎用性があるので、こちらを推す。
●
幻想を語る 岸田秀 青土社〓
人類は非常に未熟な状態で生まれることにより、本能がこわされる。文化とはその代用品。人類の松葉杖である文化とは共同幻想であり、私的幻想と共同幻想の乖離により、いろんな精神障害がおこる。また人間の欲望は満たされることがなく、その過去を抱えることにより、過去から未来へという「時間」というものを人間は発明した。
●
堕落論 坂口安吾 角川文庫〓
<人間は生き、人間は堕ちる。(中略)自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、正しく堕ちる道を堕ちきることが必要である。堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。>ところで、正しく堕ちる道とは?
●
日本的霊性 鈴木大拙 岩波文庫〓
古代の日本人には、本当に言う宗教はなかった。鎌倉時代に入って、初めて宗教に目覚めみずからの霊性に気づいた。霊性の動きは、現世の事相に対しての深い反省から始まる。著者は、大地に根ざした霊性の体現者として、親鸞を挙げる。
●
荘子 内篇・外篇・雑篇 荘子 中公文庫〓
彼れと是れとが、その対立を消失する境地を、道枢という。枢(とぼそ)… 扉の回転軸は、環の中心にはめられることにより、はじめて無限の方向に応ずることができる。荘子によって既成のルールや低俗道徳観念からときはなたれた。差別という人為を越えた、自然の立場から物をみることをできるか?
<荘周は現実的で理想主義的な孔子の思想を超えた絶対の世界を説いた。儒教の現実肯定に対して、否定の哲学を唱えた。「無無無」の全肯定。概念的に規定できるようなものは本物ではなく、規定できないものが本物であるという考え方が、老子や荘子にはある>と白川静は『回思九十年』で言っている。(2000.8.20)
また同著者は『孔子伝』のなかで、<『荘子』の文章に関しては、思想的文章としてほとんど空前にして絶後である。その文は、稷下諸学士の精緻な理論を駆使し、奔放にして博大を極めた修辞を以て、超越者の自在な精神的世界を表現した>とも言っている。(2000.12.23)
●
人格改造マニュアル 鶴見済 太田出版〓
<幸せなんて「6000円」で買える。この間イラン人も売っていた>脳と体をすっきりさせる実用書。「クスリ」「洗脳」「サイコセラピー」の解説書。「どうやって生きていくか」を「どうでもいいこと」にする本。著者は1964年東京生まれ。
●
この人を見よ ニーチェ 岩波文庫〓
<およそ利己的な行動というものも没我的な行動というものもありはしないのだ。どちらの概念も、心理学的にはたわごとである。…愛とは「没我的なもの」であるべきだと説く、あのぞっとするナンセンスにまで至りついたのである…われわれはしっかりと自己の上に腰をすえ、毅然として自分の両脚で立たなければ、愛するということはできるものではないのだ。>ニーチェ発狂の前年に書かれた自伝。
●
アドラー心理学 トーキングセミナー 野田俊作 アニマ2001〓
自分の性格は意外と簡単に変えられる。自分自身で「自分らしく」を定義し、「自分らしさ」を演じることによって、自分の性格を定着させていると著者は説く。だが、自分を演じることをやめることは、すごく勇気のいることである。
●
新版 般若心経の再発見 林田茂雄 雪華社〓
<できないことさえしたがらなければ、人間は、いつどこででも、自由である>仏教とマルクス主義とを、具体的な人生体験そのものの上にたって、一本にむすびつけてみせようとした本。
●
終わりなき日常を生きろ 宮台真司 筑摩書房〓
【輝かしい未来】という幻想がくずれた今、べったりとした日常をどう生きていくか?この《キツイ》状態からの脱出は宗教?恋愛?その他の方法は?その【終わらなき日常】に適応し【まったり】生きているブルセラ世代を、フィールドワークを通じて調べあげることにより、脱出口の方向を示す。副題は『オウム完全克服マニュアル』。