陽だまり絵本通信 
NO,193 2016・1・15















           12月の末に発行された、ほやほやの絵本です。
            

 新しい年のご挨拶を申し上げます。今年から、月に二回の発信はやめようと思います。理由は、脳梗塞の後遺症で、1年経つのにまだ思うように回復しないからです。パソコンも文字を捜しながら打つので、大変時間がかかります。何より言葉がなかなか出なくって、恰好のいい言葉は使えません。意欲も減退して、仕事が長続きしないのが致命的です。思うようにと思うのが、欲なのでしょうか。たった一回の発信ですが、誠意をこめて頑張ります。
 新年早々、愚痴をこぼしてしまいましたが、お薦めの一冊は、この絵本です。
 







 『げんこつ げんたろう』くすのきしげのり・作 伊藤秀男・絵 廣済堂あかつき・発行

 
「こころのまど」というリーフレットに、作者のお二人が書いておられます。「子どもたちは、その生活の中で、自分の思いを上手く言葉で表現し、相手に伝えるといったことが充分にできない場面がたくさんあります」と。そんな子どもたちが、怒りを表す手段としてのげんこつ。そのげんこつに込められた様々な形を伊藤さんは描いているのです。
 表紙のげんこつは、ぎゅっと握った力強いものです。男の子の気持ちを表しています。この絵本は、絵で表現していますから、絵本の隅々まで見なければなりません。表紙のげんこつは、どんな気持ちを表しているんだろうと思うと思うと、赤色の中に赤のクレパスの力強さは、半端な気持ちじゃありません。帯を読むと、「誰にも言わないおいらのきもち。 ぎゅと握ったげんこつだい!」と書かれてあります。男の子、げんたろうの気持ちがよくわかります。
 男の子が描いているおかあさんの顔。一人男の子がやってきて、笑います。笑った子を、シマシマくんと名づけましょう。おかあさんの顔を笑われたげんたろうの気持ちはどんなでしょう。笑ったシマシマくんの気持ちは。文章がないだけに、子どもたちはいろんな読み方ができますね。シマシマくんに画用紙を取られた気持ち。シマシマくんは、べえと舌を出してからかっていますよ。後ろの友だちの顔にも注目。げんたろうは、げんこつを握っています。
 シマシマくんは、みんなに画用紙を見せて笑っています。後ろで、げんたろうはげんこつを振り上げています。なんて言って笑っているのでしょうね。げんたろうの怒りが伝わってきますよ。さあ、なぐりあいです。二人の表情に注目。そこへ、先生が来ました。仲裁はなんて言っているのか。「つらいときにもげんたろう」とあるから、よっぽどつらかったんだよ。げんたろうのげんこつは、先生の仲裁で後ろに隠れたけど。
 おかあさんがやってきた。げんたろうは続きを描いた。まだ、左手のげんこつは消えない。シマシマくんのお父さんかな。先生は、なんて言っているんだろうか。お母さんに慰めてもらって、げんこつはなくなりそう。くやしい時、悲しい時もげんこつはげんたろうの中にあります。シマシマくんが、お父さんに言われて、謝りにきたのです。どうする?げんこつを開かなきゃ、握手ができない。お母さんも、あやまっているし。えーい、握手だ。お母さんもにこにこ。抱っこしてくれた。今日も嬉しい帰り道です。
 おかあさん、お誕生日、おめでとう。おかあさんの顔の絵は、おかあさんへの贈り物だったのですね。おかあさんの胸の中で、げんたろうの手は、開いています。

 しっかりと自分を見詰める心が育ちますようにとの作者の願いです。『けんかのきもち』と同じ絵描きさんです。

 

 げんこつを握ることのできる子は、幸せですね。この頃、虐待報道があり、胸が痛いです。若い両親による虐待は、理解の範囲を超えています。ご飯を食べさせないことを、平気で?メールできるなんて、このおかあさんは心の中にげんこつを持ってないんだ。自分で自分にげんこつをふりあげることを忘れているんだと思います。げんこつは小さい子だけのものではなく、大人も持っているでしょう、この社会に対して。   

              
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