コリアンダーの花です
陽だまり絵本通信 
NO,189 2015・11・1
















                  長谷川義史さんの翻訳もの二冊紹介  

 インドの絵本です。長谷川義史さんの訳です。絵を見て、絵のダイナミックさに驚きました。長谷川さんの絵と似ているところがあるような、ないような。
 にていると言えば、対象物を大きく描くことが多いと思うのですが。カラフルだけど、落ち着いた色彩の絵本で、私はすきです。作者さんも絵描きさんも、訳者さんも、皆デザイン畑出身で、ここにも共通点があります。作者のサウンダーさんは、銀行にお勤めの傍ら、子どものために絵本を書いておられるとか。動物の鳴き声や市場に出す品物などが色付けされていて、よく分かって生き生きと読めます。

  『うるさい農場は、もういやだ』 と 旅にでたファルガさん





 
 『たびにでたファルガさん』――ーチトラ・サウンダー文 カニカ・ナイル絵 
                              長谷川義史・訳 光村教育図書


 ファルガさんの農場は、飼っている動物たちの声で賑やかです。「コッコッ、モウモウ、ワンワン、ガーガー」耳をふたいでも追っかけてくる鳴き声。「もう嫌だ」と静けさを探しに行きました。途中、おじいさんに頼まれ乗せてあげたファルガさん。おじいさんのターバンの色が素敵。「ダム、ダム、ダム」とおじいさんが太鼓を叩く。「トロット、トロット」と、牛がいきます。本当にゆっくりしたインドのお話。音はひとつひとつ色を変えていますから、子どもたちにも親しみやすいでしょう。おじいさんもファルガさんも、静けさどころか歌い出します。その後、蛇使いを乗せてあげると、「ピーピーピー」と音が増え、踊り子たちまで乗せると、ファルガさんは静けさ探しもどこへやら。
 皆が次々おりてしまうと、ファルガさんの牛車は急に静かになりました。やがて夜になり、ファルガさんの求めていた静けさに耳をすませました。すると、コオロギの声、カエルの声、風のささやき、木のはの音、トカゲの足音、鳥の鳴き声が聞こえて、「あーーーーー」これじゃ家の農場と一緒。風が干し草を鳴らす。にわとりは卵を産む。豚は小屋で上機嫌。あれは幸せの音だったんだと気付いたファルガさんは、トロット、トロットと牛と帰っていきました。「ラララ」と絵歌いながら。

  『ああ、なんてこった!』 と ファルガさん






  『いちばにいくファルガさん』ーーーチトラ・サウンダー文 カニカ・ナイル絵 
                               長谷川義史・訳 光村教育図書

 
 ファルガさんは嬉しそう。作物を荷車につんで、市にいくのです。トマト、タマネギ、トウガラシ、コリアンダーの色は、長谷川さんが決めたのでしょうね。白い卵に、赤い卵、アヒルの卵も少し。全部積んだら、さあ行くぞ、市場へ。
 トロット、トロットと二匹の牛車が。ところがデコボコ道で、白し卵がわれちゃった。「ああ、なんてことーーー」アヒルの卵と赤い卵は無事。よし、行こうと、そこへアヒルの親子が、横切り。「わーっ!」と叫んだファルガさん。卵は割れ、コリアンダーとトウガラシは玉ねぎの下敷きに。「ああ、しまった!」
 こんな風に、残った卵は膝の上に抱えて車に乗ったファルガさんでした。ところが、大きなトラックが、追い越して。牛がびっくり、道をそれて、ファルガさんはもんどりうった。残ったアヒルの卵が、タマネギの上に。「ああ、なんてこった!」
アヒルの卵もわれちゃった。
 こんな風に、全部だめになっちゃったんだ。ヤギがコリアンダーを食べるし、豚が荷車に泥をかける。キサンの店があるのを思いだし、貸してもらったフライパンで、ファルガさんはどうしたと思う?薄切り玉ねぎと細の目のトマト、みじんぎりのトウガラシを入れて、バカっとひびの入った卵を割って、グルグルグルとかき混ぜた。あっという間に特製オムレツがてきたんです。よかったね、ファルガさん。


 もう一冊、紹介したい絵本があるのです。それは、『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』という本です。久留米市の藤本さんが紹介してくださったので、読んでみました。アマゾンランキング大賞第一位ということで、次回お知らせするのをワクワクしています。乞う、ご期待!

              
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