陽だまり絵本通信 
NO,186 2015・9・1















                       暑かったですね  一休み 一休み

 残暑お見舞い申し上げます。暑くて頭の方はほゃーっと。毎日集団的自衛権の行方ばかり気にしています。しかし、心機一転新しく楽しい絵本で楽しむことにしました。絵本の楽しさは、子どもが面白がって喜んでくれるかどうか。そう思って、絵本を選びました。子どもたちは、喜んでくれるがな。
 
 
『チンチンボンボさん』―――室井 滋・文 長谷川義史・絵 絵本館

 富山県の言葉で、「かたぐるま」のことを、チンチンポンボって言うそうです。おもしろいですね。室井さんって、富山の人だったのですね。『しげちゃん』で、面白い人だなあと思いましたが、ますます好きになりました。日に何度も肩車をせがむ男の子。甘えん坊なのですね。肩から降りようともしないので、根っ子が生えて来ちゃったそうです。お父さんは大弱り。親子はどこへ行くのもいっしょです。絵の中に、立山連峰が描かれてあって、富山のムードがいっぱい。
 さて、この親子、皆から「チンチンボンボ」さんって呼ばれるようになったのです。お蕎麦を食べるときは困ります。長ーいお箸を使って。電車も、タクシーも、鍾乳洞でも、お風呂でも。お父さんは根っこが邪魔で、とっくりのセーターが着れずブルブル震えています。
 ダラボコってわかりませんが、きっと子どもをよぶ言葉なんでしょう。このお父さん1忍耐強いのです。「いやがー」と男の子が言うと、太い根っこがニョキニョキと生えてくる。甘えん坊の男の子が,そういう度に根っこは太くなり、ひろがっていくのでしょう。女の子に、「私も肩車して、代わって」と言われて、男の子は「いやーが」のを連発。「ここ、ぼくの場所やもの」と、父さんにしがみつく。ますます根っこは太くなり、それが地面まで伸びていったのです。女の子は、その根っこを梯子にして、上へ登っていきました。ホタルイカの群れが見えると言う声をきいて、クラスのみんながチンチンボンボのそのまたチンチンボンボになろうとします。飛行機に手がとどく。立山連峰の向こうに、富士山がみえると、みんな大声で。男の子は、自分が一番低くて、何も見えないのに気づいて、お父さんから外れて友だちの梯子を登り始めるのです。男の子の目はきらきら。父ちゃんは、あれ?と見て、怖いと思ったその瞬間、お尻から長く延びていた根っこがスポンと抜けたのです。クラスのみんなも手をつないで、スカートやシャツを落下傘代わりにして、グランドに舞い降りたのです。
 「チンチンボンボにバイバイちゃ」と言いながらね。

 子どもたちは、喜んでくれたでしょうか。後ろ表紙に、子どものお尻に薬をぬっているお父さん。もう根っこは生えないよね。この薬、富山の薬屋さんが、持っていたものと同じ薬箱に入っています。それも懐かしいですね。

                           
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